監査業界にいる以上は、USCPAか日本のCPAかは関係ないというのは本当にそうです。


第151回 USCPA CMレポート  ~ママ会計士特集!

実施日: 2019年2月16日(土)

【Guest】 ばーさん

USCPAゲスト紹介

ばーさん (女性) USCPA


大学卒業した2005年に日本のCPA(2次試験)に合格し、Big4の国内監査部門に入所。
J-SOXおよび四半期レビュー導入初年度の監査を経て、結婚を機に中小監査法人に転職、引き続き日本基準の法定監査を主に従事。
監査した業種は製造業、ネット証券、公会計、システムコンサル、不動産業、海運業、総合商社等。時々、英文財務諸表の作成やチェック業務あり。
社内全体研修講師や執筆の経験はあるが、新人研修講師とインチャージ研修講師の頻度が高め。
2回の育休を利用してUSCPAを取得。
現在、シニアマネージャー。子供2人。目下、連結納税を勉強中。

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Q&A

最初のBig4でのお仕事について詳しく伺えますか。

Big4の国内監査部門では、公会計から商社、また製造業が結構多かったです。ただ3年ぐらいしかいませんでしたので、現場主任の指示の下で作業をしつつ、最後のほうは新人さんのOJTをやるということがメインの仕事でした。

私が辞めたときは、J-SOX内部統制監査と四半期レビューが入った最初の年で、どこの法人もすごく忙しい年でした。製造業のお客さんを担当していたこともあり、出張がすごく続いていて、まだそのときは結婚していませんでしたが、同棲していた今の主人に「これほど家にいないのであれば一緒に生活している意味がない」というようなことを言われて、転職活動を始めました。

その転職活動では同じ監査業界を探したわけですよね?

私は会計士としてすごく成長が遅いほうだったんです。監査が何なのかということがどうしてもよく分からなくて。関与していたお客さまがすごく大きかったこともあると思いますが、とにかく監査の全体像を理解できるまで時間がかかりました。

当時の私の人事評価は低く、監査は向いていないと思い、転職活動も監査法人は選択肢から外そうか、それとも分からないまま監査業界を離れるのもどうなのかとすごく悩みました。

悩んでいたら当時関与していたクライアントの内部統制監査対応をしてくださっていた方から、別に辞めるとは言っていなかったのですが心温かいメールを頂いたんです。

それをきっかけに、やはりもう少しこの業界にとどまろうと決心して、監査法人一本で転職活動をしたら、今の法人に出会いました。

Big4から中小の監査法人へ移ってみて如何でしたか?

中堅に行くと、やはりお客さんは中堅サイズの会社さんが多いです。人が足りなかったこともあり、年次的には若かったのですが色々と任せてもらえました。

そうしたら、監査の全体像が少しずつ見えてきて、少しずつ仕事ができるようになりました。
2013年に上の子を産んで、2人とも男の子なのですが、2015年にもう1人男の子を産みました。

そんな中、どうしてUSCPAを目指そうと思ったのですか?

主人から、上の子を妊娠中でもう来月出産というときに、「(お腹の子が)小学生になったら家庭に入ってほしい」と言われたからです。彼のその発言は育った環境が大きかったと思います。お母さんは家にいるものという考え方の人でした。言われて驚きはしましたが、怒るとかそういうことはなくて、私も専業主婦の家庭で育ちましたので、そうかと思いました。

でも、もし家庭に入っても、多分近くでバイトはきっとやるだろうと思って、時給1,000円でもいいから、せっかくなら同じ時給1,000円でも好きなことをやれるようにしておきたいと思ったんです。

元々国内監査部門に入ってしまいましたが、本当は国際部門に行きたくて、英語で仕事をできるようになりたいと思っていました。英語は定期的に触れていないと忘れてしまいますよね。

USCPAは、ライセンスを取得したら、CPEを継続的に行なう必要があり英語に触れる機会があると思って、それが動機でUSCPAを取ろうと思いました。それと日本のCPAのキャリアはありましたが、当時は監査業界が家庭と両立できるような業界でもありませんでしたので、日本のCPAは辞めてゆるく且つ好きなことをやれるようにと思ってUSCPAを取りました。

英文会計であれば、家でプリンターとパソコンさえあれば仕事ができるかなと。英文の財務諸表をチェックする仕事は結構やっていたので、そういうことを家でやれたらいいなと思ったのも始めたきっかけです。

実際に合格するまではどのように勉強を進めましたか?

子供をないがしろにして試験勉強はできませんし、主人もそれは望んでいないということで、子供が寝ている間に勉強をするから始めてもいいかと相談したらいいよと言われました。それで、2013年の4月に出産して、6月からアビタスさんで勉強を開始しました。

1人目の子のときはやはり初めての子育てだということもあって、日中はもういろいろなところを歩き回って、子供が昼寝に入ったら勉強して、という感じで単位の取得をしていきました。隙間時間を使ってこまごまと勉強するのは得意ではなかったので、子どもが寝ている昼間よりは夜寝かしつけをしてから、午前3時や4時までまとまった時間をつくってやるという勉強スタイルでした。

これをやると、2日間ぐらいは時差ぼけのような感じになるので効率は悪かったと思います。でも私の場合はこれが合っていました。3時か4時まで勉強して、2時間くらい寝たら子どもと主人を保育園や会社に送って、時差ボケが治ったら、また夜中勉強するというような、そのような感じでやっていました。
2人目の子は、2015年の9月に生まれたのですが、生まれる数カ月前に過労で妊娠中に入院してしまいました。切迫早産でした。

ただ自分の中で、これは寝れば治るという気持ちがあり、丸3日間寝たらお腹の張りが少しずつおさまり、10日ほどで退院できました。退院してまた試験勉強して。もともと2人しか子どもを生まない予定でしたので、最後の育休でしたからこの間に合格しないといけないと。それで、9月に生んで、試験を11月に受けました。

もの凄いですね。

聞いた感じだと、すごいスーパーウーマンのように聞こえてしまうかもしれませんが、5年後には自分はもう会計士をやっていないのだという気持ちが原動力でした。上の子が小学生に上がったら家庭に入ることいなっていましたので、監査の、会計士としての経験を積めるのはあと5年しかないのだと。

そういうタイムリミットがありました。その5年の間に日本の会計士として完全燃焼できるように頑張らなければという強迫観念みたいなものがすごくあって。完全燃焼してスッキリして家庭に入りたいと思っていました。

なので、USCPAの勉強に限らず、日本のCPAとして日常業務に必要な基準の勉強などがありますが、そういうものもひっくるめてすごく強迫観念のようにやっていました。

ただ家庭に入る予定だったのが、そうではなくなったんですよね?

様々な要因がありますが、ここ10年ぐらいで、監査業界の環境がすごく変わったことが大きな理由だと思います。すごく肌で感じます。共働きや、子どもを生みながらも会計士を続けるママさんがすごく増えました。

あとは、日本の会計士業界は、中途から入ってくる人はすごくレアで、基本は大学生のときに勉強して入ってくるという、狭い業界だったのですが、会計士を目指す人が減ってしまった時期があった時に、USCPAの人や40代ぐらいで会計士を合格して入ってきてくださる方がすごく増えました。

女性も働き手として頑張ってもらいたいという雰囲気が、本当にこの10年というか、うちの上の子が生まれた5年前と今とでもすごく環境が変わりました。

ご主人の考えはどうでしたか?

うちの人もすごく変わりました。誰に吹き込まれたのかはよく分かりませんが(笑)、今は応援してくれています。ただ、出張三昧の仕事は勘弁してくれって感じですね。今は一応時短で出張はなしという取り扱いで働かせてもらっていますが、やはり年に2回か3回ぐらいは、1泊出張が入ってしまいます。

でも、そのときも、一応晩ご飯の作り置きなど色々準備はしておきますが、気持ちよく送り出してくれます。女性にとっては昔に較べたらとても良い環境になってきていると思うので、前向きにUSCPA取得に向けて頑張っていただけたらと思います。

今の職場でのUSCPAの評価はどんな感じですか?

私が試験合格したのは2016年で、ライセンス登録したのが2017年なのですが、正直、今働いている中堅法人でUSCPAの資格は評価されませんでした。USCPAの試験を合格したことをトップに報告したところ、「転職をする気か」というような感じの反応しかもらえず。USCPAが必要な仕事が全くなかったので、そういう反応がくるのは当然ではありました。

合格からライセンス登録まで1年空いているのもそれが理由です。中小の、少なくとも今いる法人ではUSCPAは評価してもらえないし使えないので。
でも、1年前にうちの法人にもUSCPAの資格のみ保有される方が第1号で入ってきてくださったんです。今、非常勤を入れて130人ぐらいの会社なのですが、今はそのうち5人ぐらいがUSCPAのみで常勤で入ってきています。

最初の方の印象がトップにとってすごく良かったんです。しっかり仕事をしてくれるし、すごく対応もいいということで、そこから結構積極的にUSCPAの方を採用するようになりました。

大手だと以前からUSCPAの方を採用されていて、USCPAの方に向いている業務もたくさんあると思いますが、中小はUSCPAの人が活躍できる業務内容がそれほどありません。中小はどちらかというとドメスティックな、日本基準の国内監査がやはり多いので、その辺りでUSCPAの方が活躍できる分野が少ないところはありました。でも、経理知識のあるUSCPAの方が入ってきてくださったり、「USCPAを取って、中国語もできる」などという方がすごく活躍してくれています。

個人的な意見ですが、総じて日本のCPAは英語が苦手な印象を受けます。ですから、そういう意味でも、得意ではなくても英文を読むことに抵抗を感じないということは、すごく強みになると思います。その辺りに気付いてきてUSCPAを採用しようという流れが中小にもでてきたのかもと思います。

Big4と今のところを較べて頂いてメリット・デメリットをそれぞれ教えて頂けますか。

Big4だと部門が複数ありますよね。最近は変わっているかもしれませんが、国際部門と金融部門、国内監査部門、あとは上場支援部門というように昔は分かれていました。今はそういう部門ごとのカラーがなくなるよう取り払ってやめてしまって、一通りいろいろな経験をできるような組織再編がされているかもしれません。

結論からいくと、OJTの度合いとか監査の全体像が見えやすいかどうかということは、どのクライアントチームに行くかということが結構大きいです。例えば、上場支援ばかりで、入ったときから残業にどっぷりなところもあれば、公益法人などあまり変化の少ないクライアントの監査チームに入るのかでもすごく違います。ですので、一概にどこの法人に行ったかということは、あまり変わりがないかなと思っています。

研修に関して手厚いのは、断然大手のほうだと思います。ただこれもデメリット・メリットがあって、研修などがあり過ぎると、自ら勉強するスキルを磨くというインセンティブが減ってしまう場合があります。教えてくれる人がいないから自分で六法を開いて調べるとか自分で本屋さんに行って調べるとか。それと、今日は研修だから行きなさいと言われて、今の仕事で即必要ではないテーマの研修を座って受けるのとでは、やはり吸収率が違うように思います。

大手だとマニュアルは十分整備されていますし、社内イントラネットなどで情報提供はたくさんあるのですが、それをきちんとコンスタントに意識して取りに行けるかどうか。危機感というか。知識の獲得とかスキルアップに関しては研修が手厚いかどうかより自分次第と言えるかもしれません。

他に、大手と中小の違いで個人的に感じたこととしては、クライアントの方との会話で専門用語を使って大丈夫かどうかというのがあります。会計や監査の専門用語が分かるお客さんもいますが、中小だと専門用語を無意識に使って話してはいけないケースがあります。いわゆる企業会計士さんが必ずクライアントにいるとは限らないですよね。

なので、平たく、会計知識が十分になくても、こちらが監査としてどういうことを検証したいのか、どういうことを知りたいのかを説明できる力が必要だったりします。質問の仕方や説明の仕方のレベルがすごく変わりました。本当にどこの監査チームに行くかによりけりなのですが、少なくとも私が中小で、すごく最初のほうに苦労したというか意識したことは、監査用語を使わずに話すということがあります。

ちょっとメリット、デメリットの話からはそれてしまったかもしれませんが、これが私の中では大手から中小に転職しての一番の違いですね。他には、Big4だと会計基準を作った人たちがいて、その人たちに聞けるというメリットは大きいと思います。この基準は何を書いているのかとか、そういう基準作成者にアクセスできるネットワークがあるというのは大きいです。基準を間違えて解釈しないですみますから。

でも、一方で、中堅の監査法人出身の方でも公認会計士協会で活躍されている方もいますので必ずしもそこは完全に中小が負けているわけではありません。
大手で働けば、組織の規模などで得られるメリットや人的ネットワークを構築しやすいというのがありますし、中小は中小で中堅規模のお客さんのほうが数的には圧倒的に多いので、そういう会社さんの監査を担っていくという社会的存在意義があると思っています。

大手にいらっしゃったときは、具体的に勤務時間はどんな感じでしたか?

私が大手にいた10年前と今とではだいぶ違うと思うのですが、基本的に22時半までに事務所を出られればよかったという感じでした。あとは出張で、出張先のホテルに持ち帰って仕事を続けるとかはしょっちゅうありました。ですが、Big4はどこも3~4年前に労基署が入って、労働環境が劇的に改善されたと聞いています。21時になったらパソコンがダウンして使えない、みたいな。

今は業界的に、無駄な仕事は減らそうというスタンスですので、昔に比べたらよくなっていますね。とはいえ、やはり保育園は基本的には18時とか19時とかそのぐらいですよね。ですから、21時ではまだ駄目なのです。

今は日本の監査業界の過渡期ですので、今日の話はもしかしたらもう来年になったら古くなってしまうかもしれません。Big4に残っている私の子持ち同期の話ですと、定時あがりで残業なしとか16時半に上がる時短を採用しています。私も時短を採用しているのですが、何が違うかというと、彼女たちは時間になったらきっちり帰るということができています。

それに対して、私は必ずしも16時半に現場を引き上げるとは限らない。急にお客さんから相談を受けて時間が伸びることもありますし、時には帰りが終電近くなることもあります。

どちらが良いと思うかは人それぞれだと思います。16時半までしかできないから敢えて一定以上の仕事は任せないという対応について、マミートラップを感じてしまう人もいると思いますし、反対に子育てをしている間は割り切って仕事を続けて時短勤務を徹底したいと考える人もいると思います。

どう受け止めるかは個人差が大きいです。私の場合は、自分の中で中途半端にマネジャーの仕事をやっていたら、フラストレーションがたまるタイプ。なので、16時半きっかりで帰すという対応をされるよりは1~2社完全に担当させてもらうという対応でよかったです。

こればっかりは本当に家庭・夫婦によりけりですよね。パパが急な残業のときにお迎えを任せられるかどうかとか自分や旦那さんのご両親にお願いできるかとか。いずれにしても少なくとも大手は、時短できっちり帰りたい人に対してはちゃんと時短勤務を守ってくれるはずです。

繁忙期は月から金まで遅くまで働くということはよくある話ですか。

そうですね。土曜日とかも出ますし。ゴールデンウイークは基本ありません。今年の10連休など関係ないです(笑)

年末年始もあまりお休みはないですか?

お客さまの決算月いかんですね。10月決算になると12月は厳しいのですが、12月決算のお客さまでしたら1月下旬から2月は忙しいですし。3月決算を持っていなければ、ゴールデンウイークはしっかり休めるかもしれません。

ただ、お客さまのところに行かない事務所勤務の日は11時ごろに出社してくる人もいますし、朝礼があるような一般事業会社と比べるとタイムマネジメントをしやすいということはあるかもしれません。来週月曜日までに終えないといけない仕事があったとして、金曜日は事情があって休むけれども土日にその分をカバーするということもできます。良くも悪くもパソコンを貸与されてしまうので、パソコンさえあればどこでもできるということはあります。

今は大手だと管理が厳しいので土日にやるとかできないかもしれませんけど。タイムマネジメントはやりやすいと思います。それは、マネジャーなど上に上がれば上がるほどやりやすいと思います。

家にお仕事を持ち帰って、休日にされることもありますか。

ありますが家では専ら勉強のほうが多いです。子供が膝に座ってテレビを観ている間にスマホで基準を読むとか。最近は滅多にやりませんが、どうしても明日までに調べておきたいという時は子供を寝かしつけてから明け方まで集中して勉強します。これまた2日間くらい時差ボケで使えない人になりますが。
あとは少し早めに出社して、集合時間までの間に喫茶店で仕事をすることが多いです。

今は案件としては幾つ持っていますか?

2社です。1社は連結のない単体のメーカーさんですが、もう1社は海運業で、子会社が二十何社ぐらいあるところです。

今、働いてる会社で、130人中5人ぐらいUSCPAの方がいて、その方たちは入ってきた段階ですごく優秀だったとおっしゃっていましたよね。

何が優秀かというと、コミュニケーション能力だと思います。
個人的な意見ですが日本のCPAは、自分もそうなのですが、コミュニケーション能力が高くない印象があります。USCPAの方のほうが高い気がします。

逆に、先ほどUSCPAで入っても、結構国内監査の場合は日本の監査基準を勉強しないといけないとおっしゃいましたよね。日本のCPAを取るとなったら恐ろしく大変だと思いますが。

日本のCPAを取れということは言われないです。
日本のCPAは2年ぐらい実務を踏んで、その後にがっと勉強する時があるのですが、最初の年から全て日本のCPAと同じレベルを求めるかというと、それはないです。

求められませんし、やるべきところが違うと思うんですよ。勉強しろ、合格しろということを言われたという人を聞いたことがありません。USCPAを持っていれば、日本基準との違いは、合格する頃には少しWebとかで調べれば理解できるぐらいまでにきっとなっているはずです。

別に好きで勉強している人もたまにいますが、そこまでは求められないかなという気はします。
ただ、簿記は少なくとも2級は取ってねというようなことは言われるかもしれませんね。

これは日本の会計士もそうですが、定期的にコンスタントに勉強する必要はあります。10歳下の会計士の子のほうが基準を分かっているということが出てくるんです。後に受かった人はその時最新の会計基準を勉強して試験に受かってくるので。監査業界にいる以上は、USCPAか日本のCPAかは関係ないというのは本当にそうです。新しい基準ができてしまったら、監査キャリアが長かろうが短かろうが知りませんので。

それと自己紹介のところに書きましたが、今連結納税を勉強しています。連結納税も、お客さんがやっていなかったら会計士の人は知らない人が大半です。ですから、関与しているお客さんが連結納税を採用するとなってしまったらそこから勉強するしかないんですよね。

元々入ったときは国際部に入りたかったとおっしゃっていましたが、その思いは今もありますか?

私は小学校から私立校なのですが、周りは小学生のときから海外旅行にすごく行っていて、話を聞いていて、自分が知らない世界があるのだなとすごく思っていました。それで、20歳になって初めて海外旅行へ行ったのですが、1カ国だけだったので、もっと行ってみたいという気持ちがあって。

それをずっと引きずっていました。Big4に入って、新人研修をしている間に希望の部門を出すのですが、そのときに知り合ったのが国内監査部門のグループ長の方で、別の部門と書きづらい雰囲気があって(笑)。そのまま国内監査部に入った感じでした。

旦那さんが外国人で、お子さんは両方話せますよね。今後、海外への留学もあったりとか、国に戻るとなったときに、正直USCPAを持っていると選択肢が増えるのかなと思うのですが、実際どうなのかなと。海外に行きたい願望が私は強いので、そのために日本の会計士ではなくてUSCPAを取ろうとしているのですが。

海外に行きたいのであればUSCPAにして正解だと思います。日本のCPAと比べて知名度が全然違います。そこはアビタスさんがお詳しいと思いますけど。

JCPAだと日本企業でしか使えませんから、海外に行くのであれば、USCPAの方が圧倒的に選択肢は広がると思います。他国との相互承認も進んできますからね。

海外に行きたいということであれば、1年でも2年でも大手で経験があるということは大きいと思います。「元KPMGです」「元PwCです」というとやはり違いますから。

ヨーロッパなどでのニーズはご存じだったりしますか。

正直分からないです。でも会計英語ができるということは強いと思います。向こうはIFRS基準が多いですけどね。これは、海運業の話になってしまうのですが、海運の業界の法律を作るのはやはりヨーロッパだそうです。

基準を作る側にいるというのはやはり強いですよね。基準を作る側の言語、英語ができる、会計英語が分かるというのは強みになると思います。あとは最近、中国語ができる人は本当に需要が大きいと思います。

この前、アビタスでやったBig4採用セミナーに参加したのですが、参加者の中に英語がネイティブの方がいて、「そういう方をぜひ欲しい」とパートナーさんがおっしゃったので、私も負けじと「私は中国語ができます」と言ったら、中国語は別にそれほど必要ないと言われちゃって。やはり英語ができる前提なのだなと思いました。英語ができて+αと思ったので、USCPAで英語を頑張ろうかなと思ったのですが。

そういう意味では中小のほうが需要が高いかもしれませんね。中国語ができる人が法人にいるかどうかで、海外から来る仕事の量が変わるんですよ。中国語の親会社が、日本の子会社についての監査をやってほしいとか。

そうすると、中国の現地の人との監査人との窓口をお願いするとかはあったりしますので。今うちは大募集中です。中国語ができる人が欲しいということはあります。

少し勇気が出ました。その時はあっさりと言われちゃったもので。

そのパートナーの方がたまたまそういうクライアントを持っていなかっただけじゃないかなと思いますよ。大丈夫だと思います。

頑張ります。

日本のCPAを目指した理由は何かありましたか?

「お金に左右されずに人を好きになりたかった」というのが一番の理由です。家が金銭的に苦しい状況のときがあって、自分が結婚するときは自分が稼ぐから、相手の資金力や経済力を見て好きになるというのが嫌だったのです。自分で稼ぐから相手の財力は構わないと。買いたいものは自分で買うから、本当にその人を好きになれるようになりたいという気持ちがありました。

そのお金の面がひとつと、あと私は、大学受験があまり望ましい結果ではありませんでした。そのリベンジをしたいという気持ちがあって、日本の会計士を目指しました。

でも、当時はそもそも会計士とは何なのかということも全然分かってなかったのですが、数字に強くなるというのはいいなと思って、目指したのが最初でした。最初は本当に仕訳もさっぱり分かりませんでしたし。

ですが、受かった当初は、まだ奥さんに働いてもらいたいというような風潮が全然なかった頃で、友達に誘われた合コンへ行っても職業が会計士だと言えない雰囲気でした。言うと引かれるんですよ。でも、うちの人は、たまたま義理のお父さんがUSCPAなのです。

僕のお父さんもCPAだから忙しいのは知っているよと言ってくれて。ただそのときは、日本のCPAの忙しさを全く知らなかったので、付き合ってみたらこれほど忙しいのか!?みたいなショックは受けていましたね。

大学の頃に取られたのですか。

2005年3月に卒業して、12月に受かりました。
合格まで最短で1年ですが私は3回目で受かりました。ですから、早くも遅くもないほうですね。

旦那さんはエンジニアでしたよね?

そうですね。

それこそ忙しそうですけれども。

うちの人は社内SEなので、平日はきっかり定時で帰ってきます。一方で土日は、皆がお休みの時にシステム改修等をするため、仕事が時には出張が入ることが多いです。私は平日に急な残業が入ってしまったりしますが、土日は基本的に休めます。

夫婦でお互いの仕事をサポートし合える状況にあるというのは運が良いのかもしれません。

家事や子育てもいい感じに出来ていますか。

いまはいい感じですね。子供が生まれるまではそうではなかったのですが。うちの人はアメリカ人で、皆さんきっとアメリカの人は家事育児に積極的に関わってくれるイメージをもつと思います。でも、彼が生まれ育ったのはすごく田舎で、女の人は家庭で子育てをして男の人は仕事にいくという地域。彼もそういう考え方の人でした。

小学校のときにお母さんが家にいたのはよく覚えていてそれが良かったなという記憶があるけれども、保育園ぐらいの年次のときは記憶がない。保育園の間は働いて良いけれども、小学校に上がったら家庭に入ってほしいと言われたのはそこからきていたのです。私の育った家庭もそういう感じでした。ですから、日本のCPAに受かっても喜ばれなかったです。

ご両親に?

そうです。「〇〇(ばーさん)にとって、会計士試験に受かったことがよかったのか分からない」ということをずっと言われていました。結婚したときも、旦那さんの稼ぎで生活をするようにしなさいとしょっちゅう言われていまして。自分自身、会計士であることについてモヤモヤしていました。

大手から中小に転職してからもやはり自分に監査は向いていないから家庭に入ったほうがいいのかなという気持ちがずっとありました。でも、矛盾しているのですが、監査は面白いという気持ちはやはり消えなくて。

仕事で悔しいことがあり夜泣きながら寝るということが何度かあったんですが、それをうちの人は横で見ていたせいなのか、あとはだんだん共働きの家庭が増えてきたという社会の変化もあってか、うちの人の奥さん(お母さん)が働くことに対する考えが変わっていきました。

子どもが生まれるまでは基本全部私が家事をやっていて、ごみ捨てだけやってもらっていましたが、今は朝の子供の支度はほとんどうちの人がやってくれますし、保育園のお迎えも半分近くうちの人がやってくれています。

働いていたのですよね。しかもBig4で。

そうですね。子供が生まれる前は洗濯物も、彼のほうが先に帰っていても畳むとかはないですし、晩ご飯は必ず私が朝作っていました。ですから、先に食べていてもらうか帰るまで待っていてもらうかどちらかという感じで。悪気はなかったんだと思います。

言われてなかったからやらないだけというような。最初はこの人頭がおかしいのかなと思ったこともありましたが(笑)、よくよく話を聞いてみると私が家事全般を自分でやりたい(手をだしてほしくない)タイプなのかなと思っていたみたいで。敢えて手を出さなかったみたいです。話してみないと分からないもんですね。

結婚は何歳のときにされたのですか?

27歳で籍を入れましたが、それも繁忙期の関係で、本当は26歳の年にはもう婚約していたのですが、向こうのご両親は会計士さんで、税理士なのですが、その繁忙期と私の繁忙期の関係で、1年ぐらい先になったのです。それで27歳で籍を入れました。

よくある話だと思いますが、30歳までに子どもを生みたいという希望があって、24~25歳ぐらいにはもう結婚というか誰か付き合う人はいてほしいなと思いました。結果、27歳で結婚したのですが、うちの人はすぐ子供がほしいというよりしばらくは結婚生活を楽しみたいというスタンスでした。こればかりは自分だけで決められることではないですし、自分自身仕事が楽しかったので、このまま取りあえずまだ35歳まではいいかなと漠然と思っていました。

30歳になったとき、うちの人の親友に子どもができたら急に、うちの人が「子供欲しい」といってきました。面白いですよね。うちの人はどちらかというと子どもが苦手な人だったので、こちらから子作りのことを話してもけんかになるだけなので結婚してしばらくは仕事に専念していました。彼から子供が欲しいと言ってくれたのはラッキーだったかもしれません。

監査はどういうところが楽しいのですか?

いろいろな業界を見られるということがやはり楽しいですね。いろいろな人に会えるという点です。

それは皆さんおっしゃいますね。

この業界に長くいたら、一般事業会社へ転職すると同じデスクに座っていることが苦痛になるらしいのですが、でも、そのぐらい本当にいろいろな業界を見られます。

私は、ものづくりはすごいなと思いますね。製造業の会社さんは面白いです。本当にホワイトカラーの本社にいらっしゃる方から、工場の手が真っ黒になりながら働く方たちにも会えます。実際に見に行ってみないと分からないということが本当に大きいのです。

ここ最近感じる監査の面白さは、会社の方々に「聴く」という作業です。とある会社の事象について理解を深めたいというとき、会社の方々に質問していきますよね。皆さん、質問すると嘘はつかずに答えてくれるのですが、それぞれの場所から見える景色は違うので、言うことや表現が微妙に変わります。全く違うこともあります。

真実は1つだけという考え方の人と真実は人の数だけあるという考え方の人がいると思いますが、私は断然後者。真実は立体なので、その真実を知っている人たちに同じ質問をしても帰ってくる答えはそれぞれ違う。

質問した相手のその時の職位やその時の気持ち、性別、性格によって回答が変わるということをすごく感じていまして面白いなと思います。複数人に質問して答えをもらうことでパズルを完成させていくように理解したい「事象」の全体像が見えてくる。その作業が面白いなと感じています。

この作業を続けていくと、監査意見を出す対象である財務諸表は紙ぺらが、たくさんの数字-仕訳一本一本の集まりでそれぞれに苦労ネタとかドラマがあることが分かって。いろんなドラマが集約されたものが財務諸表なんだなと感じます。

質問を続けることでお客さまから、「〇〇(ばーさん)は、監査人にとってもクライアントにとっても無理無駄のない監査手続をやろうと頑張っているのだな」ということを理解してくださるようになります。そうすると、話してくれる内容も変わってきますし、質問の答えが分からなければ「△△部長に聞いたら分かるよ」などと紹介してくれるのです。そうやって会社の方との接点が増えてお客さまとの関係が良好になっていくことを実感できると、仕事のやりがいを感じます。

聞けば聞くほどコミュニケーション能力が必要ですね。そういうことは聞き方一つで、同じことを聞いていても全然違うのではないですか。

絶対違いますよね。

すごく求められる能力の一つなのかなと感じました。
私はもっと机でパソコンに向かっているようなイメージでした。それほど現場に出るということをお話聞いて知りました。他にも色々と伺えてよかったです。

今日参加の皆さん監査をやってみたいという方が多いのかなと思いますけど、本当に最初からずっとお話しいただいたとおりで、6年前、7年前だと、監査法人と言うと超ブラックという社会的なイメージがあったと思いますし、実際に働いている方もそうおっしゃる方が多かったです。

それが本当にこの3年、4年でどんどんよくなってきていると思います。ただ、やはり法人によって違うということもありますし、同じ法人でもどこの部署に行ったか、さらに付いたパートナーによっても違いますよね。ただ、法人側が希望を聞いてくれる環境は整ってきていると思います。

実は、自分が仕事を続けていることをすごく不思議に思っているんです。あの「ゲスト紹介」を見ると華やかな経歴に見えるかもしれませんが、あれは自分が望んでそういう経歴になったのではなく振り返ってみたらそうだったという感じです。自分よりもずっと優秀な女性会計士の方々にたくさん会います。彼女たちの中には不本意にも、途中で監査業界から離れて家庭に入られる方がいました。彼女たちを思うとどうして自分が会計士として残れているのか、すごく不思議です。

能力が低い分、量でカバーするタイプなので、2人目の妊娠中に過労で入院してしまいました。上手く説明できないのですが自分の性格的に監査業界は向いていないんです。監査は楽しいのですが、私は性格上頑張り過ぎてしまうところがあるので。割り切ってやらないといけない局面が多々あるのですが、そういうときの要領が悪くて。

でも、結果として、たくさんの輪が重なる中をずっと通り抜けて会計士を続けてきた自分がいます。切迫早産になりましたが次男は無事生まれてきてくれて元気に成長してくれていますし、うちの人も途中で私の仕事を応援してくれるスタンスに変わりましたし、今の法人も「USCPAなんて」と関心ゼロだったのに、急に興味を持ってくれるようになりました。本当にどうなるか分かりません。

自分が続けられていることへの不思議さは変わりませんが、取りあえずやめなかったので今に至ります。何度も辞めることを考えたけれど続けてきた。仕事の向き不向きはとりあえず横に置いておいて続けることが大事なのかなと思います。外部環境もさることながら自分の中の劣等感も含めてだんだんと変化していくので。「やめないで続ける」というのは大変なんですが、とても大事なことなのかなと最近思います。

先程も言ったとおり、監査業界は今過渡期だと思います。過渡期の大変さはありますが、確実に良くなってきているので、是非、皆さんもUSCPAに合格して監査業界に入って監査の面白さを体験してもらえたらと思います。

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