USCPAは会計、税務に関する窓口としてかなり大きな資格


第156回 USCPA CMレポート  ~Big4移転価格コンサルタント特集!

実施日: 2019年7月27日(土)

USCPAゲスト紹介

マナブさん (男性) USCPA


大学卒業後、メーカーに入社し経理課に配属。
数年間の勤務後小売業の経理課に転職。2社目の経理課勤務中に 、公認会計士や税理士としてキャリアアップしていく先輩たちに刺激を受けAbitus で学習(通信)を開始し、1年半の勉強を経て全科目合格。
USCPA 登録後、2018年3月にBig4系税理士法人の移転価格部門へ転職。
上場/非上場、業種、規模を問わず種々のプロジェクトに関与中。

  • USCPAゲスト
  • 参加者
  • 司会

Q&A

大学卒業から今までの経歴をお話しいただけますか。

私は2008年に大学を卒業し、その後、新卒で静岡県にあるメーカーに就職をしました。配属が経理になり、そこで6年くらい経理をやっていました。

その後、一回転職をし、次は小売業で同じ経理を3年ほど務めました。その会社が経理等の事務枠の中途採用が多く、日本の公認会計士試験合格者が実務経験を積むためにその会社で働いていたり、仕事をしながら税理士試験の勉強をしている人もいて、自分も何か目指そうと思い、USCPAという資格があるということで勉強を始めたのが、2016年の頭です。その後、1年半強で4科目合格したのが、2017年9月です。

合格後に転職活動を始めて、今のBig4系の移転価格部門に入ったのが去年の3月なので、今の職場は、まだ1年半くらいです。そこで種々のプロジェクトに関与しているという状況です。

まず、移転価格とは何かということですが、例えば日本に親会社がある場合だと、海外に子会社があったりして、子会社に製品を売ったり、製品を作ってもらって輸入したりという取引がイメージされると思いますが、その際にきちんとした価格で取引していますか?という点に焦点が当たるというイメージです。

例えば日本の親会社から海外の子会社に不当に安い価格で販売すると、本来であれば日本での売上がもっと上がるはずなのに、わざと上げていないといった状態になります。

その場合日本の税務当局から見ると売上が減ると税収が減ってしまうためよろしくないと見られてしまいます。また、仮に上記の場合で海外子会社の赤字が続いている場合には、海外の税務当局から見ると、「もっと利益を出していてもいいのではないか」と考えることになります。

その原因として、「親会社から購入している製品が高い金額になっているせいで子会社が赤字になっているのではないか」などと海外当局が言ってくることが考えられます。そういった取引の価格を考えるというのが移転価格の大まかな枠組みです。

そこに対するリスクを低減するための考え方の基礎となる国際的な合意事項があり、日本の税法はその合意事項に基本的に準拠しているので、企業の移転価格に関する対応として、提出・準備しないといけない文書を作ったり、他にもどのような値決めが会社にとってあるべきなのかといったことを一緒に考えたりします。

他には、日本と海外の税務当局間の相互協議や事前相談といった制度もあるので、その際の企業のサポートをするといったことが大まかな業務です。

皆さんがご存知の大きなメーカーさんや商社さん以外にも、上場していない、売上規模があまり大きくないけれども、例えば初めての海外進出で分からないから教えてほしいというレベルの会社さんまで、規模や、上場・非上場等を問わず関与しているという状況です。

どうして移転価格をやりたいと思ったのですか?

元々上場企業で経理をやっていた関係で、監査人とのやりとりもしょっちゅうやっていましたので、良くも悪くも、監査人の苦労が見えていました。昨今のニュースなどを見ていても、社会的な締め付けも強くなっているところがあると感じています。

監査業界もやりがいはあるとは思いますが、今後を考えると、息苦しい世界になってしまうという感覚があり、監査というのは考えていませんでした。

また、一般的なアドバイザリー業務も考えたのですが、そこもプレーヤーが多いという印象がありました。そういった中で、移転価格に関するアドバイザリーもあるということで、専門的な分野である点に興味があって扉をたたきました。

移転価格に関する基礎として、BEPSプロジェクトというOECD内のプロジェクトや、それに基づくOECDガイドラインで国際的な移転価格の税務に関する考え方が示されています。

日本や他の先進国では基本的にOECDの考え方に準拠しているので、ルールや枠組み、考え方を覚えて、ベースとなる知識があれば、あとは記載する言葉が違うだけというか、日本語でやるか英語等の外国語でやるかという形になります。

今後、仮に海外で仕事をしたいと考えたとき、移転価格に関する知識を身に付ければどこでも生きていけるだろうという思いもありました。そのようなことが今の仕事を選んだ理由として大きいところです。

ちなみに、移転価格税制は法人税の一部分ですが、聞いた限り税理士の中でも比較的ニッチな分野という認識のようで、特化している人はあまり多くないので、そういうところに私たちの部門のニーズがあるということです。

普段のお仕事はどのようなことをやっているのでしょうか?

監査法人や税理士法人もそうですが、一番偉いパートナーという人がいて、その下にマネージャーがいて、その下にいわゆるシニアやスタッフという4層構造に大体なっていて、一番上のパートナーが仕事を取ってきてマネージャーをアサインし、そのマネージャーが下にシニアやスタッフをアサインするという形で、案件単位で仕事をします。

クライアントとのやりとりも多いですが、クライアントにデータを依頼し、それを待っているというステータスなどもあるので、案件が進むタイミングはどうしてもまちまちになります。例えば、私は今案件の数だけでいえば10から15くらい入っているのですが、クライアントからのデータ待ちだったり、税務当局から質問の回答が来ずに待っているという形で、相手がボールを持っている状態の案件もあるので、どうしても忙しい、忙しくないというところはまちまちになります。

時間に余裕があるときもあれば、夜遅くまで仕事をしないといけないときもあったりといろいろですが、少し前から働き方改革ということで残業時間の制限がかけられました。具体的な時間で言うと、スタッフの残業は基本的に19時までで、月7回 22時までならマネージャーに話をした上で残業OKという形で、トータルの残業時間が法規制に引っ掛からないところまで制限がかけられているという状態です。

今はマネージャーも22時までが原則で、それを超えて仕事をする場合は、パートナーへ事前に申請をし、許可をもらう形になっています。

そのため、基本的にはどれだけ忙しくても、よほどのことがない限りは19時には割り切って帰ります。以前は日付が変わってからタクシーで帰るのが日常茶飯事だったとのことですが、ワークライフバランスの面では前より良くなっていると思います。ただ、業務時間が限られている分、仕事の効率性が求められていると感じます。

仕事の制度という点で話をすると、在宅勤務は、常に認められるということではないですが、1人、ご家庭の都合で遠隔勤務をしている方が他の事務所にいらっしゃいます。また、はやり目にかかった時に人事に出勤禁止と言われたことがありますが、その時は許可を得てパソコンを持ち帰って家で仕事をしていました。

そこはマネージャーやパートナーとの交渉次第になると思います。今、ちょうど1人、同じ案件に入っている人なのですが、やはり子どもからはやり目をうつされて、先週から家で勤務をしています。

産休・育休制度的なところは、もう少しでお子さんが産まれるということで、今年の頭から半年ほど産休・育休を取って、来月に復帰予定という方がいらっしゃいます。あとは男性で1人、育休を去年から取っている人もいます。

外出や出張は多いですか?

基本的に最初はインタビューには行きますが、その後はメールや電話会議等で適宜やり取りをするといった形もあるため、日中ずっと出なければいけないことはありません。案件の内容によっては、必要に応じて直接クライアントへ伺って話を聞くという感じです。

出張というレベルの外出はさほど多くありません。なお、案件にもよりますが、クライアントが遠方のため、訪問が出張となる場合はあります。また、例えば相手国の税務当局へ話をしに行く際に、海外子会社の方だけではなく日本側の本社の方も同席する場合があるので、こちらからもアドバイザーとして同席することもあります。

そういうときは、基本的にはパートナーやマネージャーなど職位が上の方々が行くことが多いです。例えば今入っているある案件では、パートナーとマネージャーで9月に海外へ行き、現地の税務当局と話をする際に立ち会うという話があります。

仕事をする上で、どのようなときにUSCPA資格が役立つと感じますか。

移転価格を考える際には監査された財務諸表が分析のベースになるので、例えば海外の会社の数字を見るときには、アメリカであれば基本的にUS-GAAPですし、他の国でもIFRSなどを使われていることも多いです。

例えば売上の場合、US-GAAPやIFRSでは総額記載、純額記載などの論点がありますが、そういった基礎を踏まえて数字はどうなっているのかなどを見る際に勉強したところが生かせるという感覚です。

あとはビジネスがどうなっているかを分析することも必要になってくるので、BECという科目で勉強するビジネス概論的なところもUSCPAの勉強がフィードバックされているという印象はあります。

勤めていらっしゃる税理士法人の中の移転価格部門で、USCPAを取っている方はどれくらいいらっしゃるのですか。

USCPAは、確かパートナーの人が1人持っています。マネージャーにも数名、あとは私も含め、スタッフレベルでも数名います。潜在的に勉強をしていた、もしくは現在勉強しているという方も含めれば、そこそこの人数がいると思います。

移転価格の部署は特殊なところがあり、必ずしも税理士資格を持っている人ばかりという訳ではないです。税理士法人というと、みんな税理士資格を持っていないと駄目なのではないかという印象があると思いますが、うちの部署は職位が上の方でも持っている方も持っていない方もいらっしゃいます。

移転価格の部門には、全部で何人くらいいらっしゃいますか。

東京、大阪、名古屋と分かれているのですが、トータルだと大体80名くらいです。

その中で10人~20人ですか?

そうです。マネージャーで数名いて、スタッフでも数名、合計で10から20名程度はいるという感覚です。

移転価格でいうと、アビタスのキャリアセンターでも何年も前からコンスタントに求人があって、Big4さんと一緒に採用セミナーをしているので、非常にUSCPAの方は多いですよね。需要はすごくあるというイメージです。

どちらかといえば、税務サイドというよりはビジネスサイドの考え方が強いので、いわゆる税理士と聞いてイメージするような申告等の業務よりは、一般事業会社側の考え方や実務面からの視線が分かっている方のニーズが強いイメージがあります。

業務の中で、英語はどのくらい使うのですか。

案件によって色々なパターンがあります。例えば日本の親会社で、あくまでも日本側の文書を作成したいという案件だと、基本的に親会社の税務部門の方とのやりとりだけになることが多いです。

それ以外では、例えばアメリカに本社があるグローバル企業の案件をアメリカの事務所が受注し、日本に子会社がある関係で、日本側の対応は日本側でお願いという形で、事務所間で仕事の依頼があったりもするので、そういうときは、アメリカ側の事務所の人とやりとりをするパターンが多いです。

あとは少し話に出ましたが、例えば日本とアメリカの2国間の協議があるときなどは、日米両方で同じBig4の系列事務所を使う方が情報共有等の効率がいいので、日本とアメリカで連携して進める前提で提案し、受注することが多いです。

その際には、アメリカの事務所と情報やステータスの共有、財務データのやりとり等を日々行っている感じです。ちなみに私が入っている案件では、海外事務所との電話会議は今のところは行っていません。マネージャーが現地のマネージャーとやりとりをするときに、電話でさっと聞いてということは日々あるかと思います。

先ほど国際的なルールに従ってどの国もやっているから、そこが分かっているのが大事ということですが、経理から税理士法人に移ってから勉強をし始めたのですか。

そうです。1社目をちょうど私が辞める直前くらいに移転価格に関するプロジェクトが始まったため、1社目では触れませんでした。

2社目は、海外に子会社があるけれども規模も小さかったので、移転価格を気にする環境にありませんでした。なので、全部今の仕事をはじめてからイチから勉強しました。

社内でトレーニングなどがあるのですか。

最近は残業制限のあおりを受けて、あまりトレーニングに時間が割かれなくなったという実情もありますが、スタッフレベルを対象にした定期トレーニングの形で、マネージャーやパートナーが課題を作り、それについて議論等を行うという形で定期的に行っていたという話は聞きます。マテリアルは共有してもらったので、それを基に勉強しています。

経理から移転価格に移られて、やりがいの違いはありますか。

今の仕事では、クライアントの数だけ悩みがあり期待されている内容も違うので、いろいろな企業のことを知る、ビジネスモデルを理解するといったことも含めてやりがいはあると思いますし、やはりクライアントの期待に応えられたときには達成感を感じます。

経理での経験が生かされる場面はありますか。

それはあります。一例ですが、クライアントから各会社の監査されている数字をいただくという話になりましたが、監査報告書としてpdfでいただくときもあれば、エクセルのデータでいただくこともあります。

例えばいきなり連結パッケージの形で送られても、見たことない人は「これは何?」ということになるかもしれませんが、自分は実務をやっていたので、入っている情報が大体分かるといった感じで、過去の経験が生きている面があると思います。

経理での経験以外にも、例えば元々金融業で企業の融資等に従事されていた方の場合、企業のビジネスモデルを理解して、その会社は何で儲けているのか把握するのが必要になると思いますが、そういった目線が移転価格を考える上でも重要になってくるので、金融の方などは相性がいいところもあると思います。うちの職場にも金融出身の方がそこそこいらっしゃいます。

プロジェクトの具体的な流れはどのような感じですか。

簡単に言うと、まずはクライアントの理解が必要になります。クライアントを知るために、資料をいただいたり、インタビューで直接話を伺ったり、といったことがスタートになります。そこで一通りの基礎データや情報をもらって、それが移転価格を考える際にどうなるかという整理・分析をし、分析した結果を成果物としてクライアントに渡すという流れです。

プロジェクトによっては、長期にわたるものもあり、規模的にも作業的にもいろいろですが、クライアントのことを把握するところがスタートになるのはどのプロジェクトも変わりません。

先ほど企業の期待に応えられたときにやりがいを感じるとおっしゃっていましたが、具体的な期待というと、どういったことになるのでしょうか?

基本的に、日本の企業は納税に関しては真面目です。だからこそ、税務当局から変なことを言われたくないというのが大きなニーズとしてあります。例えば、海外に新しく子会社を設立したけれども、日本側からも海外側からも指摘を受けないような水準はどれくらいか教えてほしい、といった期待があります。

その場合には、利益はこれくらいにしておけば問題はないという分析をしたり、今後の取引価格に関する運用も含めて提案したりします。

また、海外当局から移転価格に基づく課税をされてしまったという重いスタートから始まる案件もあります。その場合、いわゆる二重課税と呼ばれる状態になるのですが、クライアントとしては、二重課税された部分は取り返したいというのが期待になります。

二重課税を解消するには、日本と海外の両当局が合意する必要があるので、日本側と海外側それぞれ協力して働きかけ、交渉がうまくいくように、当局から依頼された資料を提供したり、必要に応じて当局に意見書を提出したりといったことを行っていきます。

例えば、関与した案件では、去年無事両当局が合意して二重課税が解消され、クライアントが数十億円規模の還付をうけた事例がありました。

プロジェクトを進めていくときに参考にされるのは、過去のデータベースのようなものですか。

一般的な水準を参考にするといいますか、他の会社だとこのくらいというデータベースを使ってこちらも分析をするので、基本的に会社、例えば上場企業等の過去のデータを参照したりします。また、業界によっては、同業他社がクライアントとしてある場合もあるので、事例を参照しつつということもあります。

逆に、前例のなかった案件などはありますか。

過去に担当した案件ですが、あるクライアントが新しく海外に子会社を設立した際に、想定した商流が同業他社の例と少し違うということがありました。もちろん会社によってやりたいことは違うため、会社の考える方針を是として進めていくのか、それではリスクが高いので別の方法を提案するのか、といった点も分かれ道としてはあります。

そういう意味では、他社事例を参考にできる場合もあるし、できない場合もどうしても出てくるという感じです。

入社後の研修はありますか?

私はタイミングの関係ですぐに実務に入ったパターンでした。研修を受ける対象の人がそこそこの人数になったらまとめて研修を行うという部署の方針があり、入社してから数ヶ月程度経ったあとに研修がありました。

ただ最近は、うちの部署の東京事務所に大卒の新人が初めて入社したのもあり、教育体制をしっかりしないといけないという話をマネージャーがしているので、今後改善されていくのだろうと思います。教育担当のマネージャーがいろいろ考えているという話は聞きました。

元々うちの部署の東京事務所は、ずっと中途採用しか採っていませんでした。ビジネスを見るという特性上、他の業界や社会人経験があるほうがどうしても有利なため、中途採用で回してきたという経緯もあります。

他の部門では、大学院を出たとか税理士試験に受かったという方々を定期的に採用していますが、うちの部門でもその動きが最近出てきたところです。

求められるスキルとかも含めて、どのような方が移転価格に向いていると感じますか。

まず、何よりもビジネスに対する興味をきちんと持てるかどうかが大きいと思います。また、コンサルタントという仕事の特性上、クライアントの話を伺ったり、クライアントの期待に応えられるかというところでのコントロールが求められますので、人が好きかどうか、期待に沿うという心持ちが強いかとう点もあるのかなと思います。

転職の際は、どこがポイントで採用されたと思いますか?

転職の際は、USCPAという資格に全科目合格してから面接を受けたのですが、働きながら資格を取得したことについて評価されている部分があったと思います。

あとは、USCPAを持っていれば、少なくともこの人は英語と会計は分かるでしょうというところもあると思います。前にアビタスさんでお話を聞いたときには、キャリアチェンジという形でUSCPAを目指す方も多いと聞いているので、開かれる門戸の一つとしてはあり得るものだと思っています。

昨年退職して事業会社へ転職したマネージャーがいらっしゃいましたが、その方も元々経理畑ではなく、専門性を身に付けたいということでUSCPAを取得後に入社したという話を伺いました。そういう意味では、USCPAは会計、税務に関する窓口としてかなり大きな資格だと思います。

逆に、キャリアパスなのですが、移転価格の分野はかなりニッチなところではないですか。そこから他にキャリアチェンジしたいとなると、どのようなところがあるのですか。

例えば1年くらいの短い期間で辞める方もいらっしゃいますが、そういう方は移転価格でない別分野に行く方が多いと思います。

逆に、この分野で知識をつけていけば、いわゆるグローバル企業の税務部門などへの窓口も開けると思います。先に述べたように実際に事業会社に転職している方もいます。また、今年の5月に先輩が1人退職されたのですが、その先輩は別のBig4の海外事務所で移転価格アドバイザリーの仕事に就くとおっしゃっていました。

先ほど言ったように、ある程度世界で共通した考え方があるので、例えば海外で移転価格の仕事をする、という選択肢もあると思います。

業界内で転職される方は多いのですか。

あまり具体的な数字は申し上げられませんが、結構入れ替わりはあり、移転価格の分野で長くやった方で他のBig4に移る方もいらっしゃいます。

先ほど女性が半年で育休から復帰されるという話がありましたが、ポジションなどの関係で早く復帰されるということなのですか。

そういうわけではないと思います。直接お話を伺っていないのですが、あとひと月で産まれる、というくらいの時期まで働いていました。その方は2人目のお子さんだったと思いますので、ある程度勝手が分かっていたのかと思います。大体の方は、産休、育休は1年くらい取っている印象です。

割と戻りやすい環境はあるのですか。

特段ブランクがどう、ということはみんな気にしていないという印象があります。

移転価格のチーム内で、女性はどのくらいいらっしゃいますか。

おそらく4割程度かと思いますが、マネージャーという職位で考えると、去年辞められたマネージャーが女性でしたが、それ以外はみんな今男性になっています。ただ、うちの部署に女性のパートナーは2名いらっしゃるので、性別に対する差はなく、あくまでも能力で評価されていると思います。

お仕事の中でITスキルが必要な場面はありますか。

ワードとエクセルとパワーポイントは日々触れるので、そこについてはスキルが求められます。それ以外は、例えばどのようなイメージをされていますか。

例えばVBAや他のプログラミングなどです。

そのようなことは特段ないと思います。なぜかというと、クライアントからもらうデータのフォーマットが基本的に様々で、仮にこちらで統一した報告用のフォーマットを用意しても、そこにまとめるまでの元ソースの書式が全部違うので、そのようなところは、皆さんあまり意識はしていないと思います。PDFで資料が来た場合、数字を直打ちで転記したりといったことも普通に行っています。

中途でパートナーの人はいますか。

今、パートナーに上がられている方も、過去に中途で入ってきたという方が多いです。大阪と名古屋の事務所では、大学や大学院を出てすぐに入社されて現在パートナーをされている方もいらっしゃいますが、人員構成的にいけば、全体で見ると中途のほうが圧倒的なので、そういう意味では、生え抜きの方でないとパートナーに上がれないといったことはありません。

パートナーといえば、クライアントに信頼されて売上を上げる人が偉いというようなところもあるかと思うので、その人のキャリアに関する要求はないと思います。

移転価格にかかわらず、ファーム系はみんなそのような感じですか。

パートナーは仕事を取ってくるのが仕事というところがあると思うので、正直、売上を上げていればそれ以外は問われないのではないでしょうか。

パートナーになられたほうがきつい、仕事がつらくなるとお伺いしますが、実際はどうですか。

いわゆるパートナーに上がったばかりの方だと、売上ノルマ的なものがあって、数字を上げないといけないということがあると思いますので、そこは負担が大きいのかなという気はします。

分野が分野なので、クライアントがたくさんいるかというと、そういうわけでもないですし、既存案件などについては、他のパートナーの方が持っていたりしますので、パートナーになったばかりの時はかなり大変なのかなとは思います。

プロジェクトベースでお仕事をされるとき、チームメンバーは変わるのですか。案件によって違うチームで構成されるのですか。

チームメンバーはプロジェクトによって変わります。そのため、個人でどの案件を抱えているかがバラバラなので、例えばマネージャーが当初頼もうと思っていた方が他の案件で余裕がなく、他の人を探さないといけない場合もありえます。

その点は働き方改革の関係もあってマネージャーがかなり気にしています。あまり特定のスタッフに集中させ過ぎると仕事が進まなくなりますので、うまく割り振るようにという動きをマネージャー間で進めているという話は聞いています。

パートナーが仕事を取ってきて、この仕事を誰に振ろうかというので、マネージャーはパートナーが決めるのですか。

そのパターンが多いと思います。

人によって、何件くらいの案件を同じ時期にやるのですか。

そこは本当に人によってまちまちですし、案件にもよります。
既存案件のボリュームが大きい、例えば、文書を用意しなくてはいけない拠点数が非常に多いクライアントもあります。

そういう場合は、クライアントが文書の準備期限までに間に合わせたいかどうか、という点も大きいですし、割く時間がそれによって大きく変わってきます。そこに新しい案件の質問依頼リストや質問状を作ったりといった仕事が隙間を縫って入ってくることもありますし、さらに別の案件で喫緊の対応が迫られる、といったこともあり得ます。

一つの案件に取り組んでいるときに、移転価格以外のチーム、同じファーム内で違う部門の方と一緒に協力して案件に取り組むこともありますか。

そのような動きもあります。例えばクライアントが税務リスクを全体的に洗い出したい場合に、その中に移転価格に関する分析もある場合、他の部門からパートナーに話が来てプロジェクトが動き出すという例もあると聞きます。

転職する人で、何歳くらいの人が入ってくることが多いのですか。

ボリュームゾーンという意味合いでいうと、ここ2~3年で入社した方々が30歳前後に固まっているイメージです。それ以外では、数年前に30歳前後で入社し、今マネージャーになっている方が一定数いらっしゃいます。社会人を数年経験してから入社する方が多いと思います。

逆に言えば、3年未満や5年未満の方はいらっしゃいますか。

前職で2~3年勤めて、20代半ばで入社している方もいらっしゃいます。

移転価格部門の業界の今後の動向といいますか、需要はどのように考えていらっしゃいますか。

最近では無形資産の評価に関する改正の動きが盛り上がっていると思います。また、ここ最近だと、デジタル課税に関する話で、移転価格の方も若干影響が出てくるのではないかと考えています。

他にも、新興国の動向等も注視する必要があると思います。例えばBEPSを必ずしも遵守していない国もあったり、異なるルールが存在する国もあります。そのような国々について、今後は準拠していくようになるのかといった点も常に追っていく必要があります。

マネージャーやパートナーの方が仕事を取ってくるとき、自分たちから新規の営業に行くことはあるのですか。

セミナーを開催し、そういうときにセミナー資料の最後に連絡先を記載しているので、そこから連絡があってというパターンが多いと思います。セミナー関係で飛び回っているパートナーもいらっしゃいますね。

先ほど外出や出張はあまりされないとお伺いしたのですが、1日中固定のデスクでずっと座っていらっしゃることが多いのですか。

新規案件でインタビューがあったり、クライアントのところでミーティングがあれば外出しますが、それ以外は基本的に自分のデスクで分析をしたり、文書を作ったりといった作業をしているという感じです。

あまり会話などは頻繁にしない、環境的にされないのですか。皆さん黙々とやっている感じですか。

最近は、どうしても残業時間の制限の関係もあるので余裕があまりない気がします。残業の制限が始まるまでは、もう少しいろいろな会話があったと思います。

転職する際に、どのBig4へ行きたいかは特に決めていませんでしたか?それとも、ここしかないという感じで、そこしか受けていないという感じですか?

転職のときにはアビタスのキャリアセンターを使ったのですが、移転価格に絞った形で、Big4全部にキャリアセンター経由で履歴書を出して、そこで結果的にご縁があったのが今の職場でした。

入る前はこう思っていたけれども、実際に入って、入る前と入った後では差異がありましたか。

思っていた以上に泥くさい仕事だと感じるところはあります。まずクライアントのビジネスの理解から始まって、分析を行うという部分は非常に地道な仕事だと思います。

逆に、コンサルファームに入ることによって、一般の事業会社では身に付けられないスキルなど、このようなスキルが身に付いたということはありますか。

クライアントの期待をどうコントロールするかについて、つまり、クライアントが何を望んでいるのか、クライアントにどう動いてほしいか、どのような行動を期待するかというところも含め、クライアントの期待以上の仕事ができるようにきちんと考えてねとはマネージャーによく言われています。

そういったスキルは前職では絶対に身に付かなかったと思いますね。あとは純粋に、皆さんITスキルが高く、仕事も早いというのがあるので、頑張らないとまずいと思っています。

入社したばかりでも、実際に自分がクライアントとダイレクトにコンタクトを取り合いながら仕事を進めていく感じですか。

統一したやり方があるというよりはマネージャーのスタイルによるという感じです。メールのやりとりなどもクライアントとやってしまうマネージャーもいますし、気になるところがあったら直接クライアントに聞いてもいいよというマネージャーもいます。

今後、どのようなキャリアパスを描いていきたいなどは考えていらっしゃいますか。

できるものなら、今の仕事を続けたいと思っています。ただ、今までの自分のキャリアを考えると、事業会社の税務部門等に行くのもありなのかなという気もしますし、USCPAという資格を考えた場合、外資への道も開けると思います。

グローバル企業の日本法人などに入ることもルートとしてはあるでしょうし、同じ移転価格で、日本を辞めて海外事務所へ行くという選択もあると思います。

選択肢としては、USCPAを持っていると、欧米諸国に関する窓口は開けていると思うので、グローバル企業の日本法人や海外での勤務など、パスは幾つも考えられると思います。

移転価格でも海外部署はあると思うのですが、海外に支店があってというのは、あまりないのですか。

どこのBig4もそうですが、メンバーファームという形で、直接的な資本関係はないけれども、それぞれの名前の下に各国の法人がぶら下がっているというイメージになるので、うちの法人のアメリカやロサンゼルス事務所があるわけではなく、Big4の名前を冠した別の法人があるという形です。

ただ、そこは同じBig4のネットワークの中にあるので、案件によってはそちらとのやりとりも普通に行います。

また、事務所間での出向制度もあります。今、東京事務所ではないですけれども、アメリカの事務所に出向していた方が今年帰ってきて、代わりに別の方が1年くらい行くという話を聞きました。あとはイギリスへ3カ月の短期出向をされる方がいるという話も聞いています。

部署異動でなくても、出向という形になるのですね。

出向して現地で仕事をするという形です。ただ、移転価格の仕事をするのか、現地の税金関係をやるのかといったものは異なると思います。ちなみに、うちの部門は定期的に韓国事務所からの出向を受け入れています。

現在出向で来ている方が9月に戻ってしまうのですが、入れ替わりで1名新しく来るという話も聞いています。過去にはアフリカに行った方がいるという話も聞きました。タイミング次第ですが、希望をすれば、チャンスはあるという感じだと思います。

移転価格チーム内で、この人はこの担当など、このインダストリーはこの人に案件が来てなどはあるのですか。

元々金融機関勤務だった方も多いので、金融系の案件はうっすらとラインがあるのかなという感覚はありますが、それ以外の業界は来た案件によるという感じです。

そのたびに各業界について勉強して調べているのですか。

そうです。ちなみにですが、私が関わっている業界でどこが多いかといわれると、半導体業界です。半導体業界といっても、原材料から完成品、また半導体を作る機械等様々な企業がありますが、結果的に多く関わっているという感覚はあります。

自分から、この案件に興味がありますとは言えないのですか?

希望を言えば聞いてくれます。また、スタッフには1人マネージャーがメンター的な立場で付きますが、その人に何か案件がないですかと聞いて、案件をもらったりもします。

他には、余裕があると、仕事を振りたいマネージャーから声をかけられるということもあります。

東京と大阪と名古屋にロケーションがあって、今、マナブさんは東京で働いていらっしゃいますが、そこから大阪に行ってください、名古屋に行ってくださいということはあり得るのですか。

基本的に転勤はなく、スタッフの希望があったら検討するという形です。例えば、つい最近だと、私と同じタイミングで名古屋事務所に入社した方が、大阪事務所に移りたいとのことで希望を出して移ったという話を聞きました。

あくまでも本人の希望があればという話なので、「来月から名古屋へ行って」といった話はありません。

人は足りていますか。

足りていないと採用担当マネージャーからは聞いています。

部門レベルの話ですか。会社として人が足りていないということですか。

会社全体はなんとも言えませんが、部門は足りていないです。名古屋と大阪は事情が分からないのですが、東京は慢性的に人が足りていないと思います。ただ、採用面接も積極的にやっているという話も聞いています。

先ほど、他の国とのやりとりもあるとおっしゃっていましたが、他によく出てくる国はありますか。

私の関与している案件だと、やりとりとしては、中国、台湾、アメリカ辺りの国が多く、たまにイギリス辺りもあるかなという感じですね。

アジア圏の方とやりとりするときには、向こうの方は日本語ができる方も多いので、日本語でそのままやりとりをしたりします。それ以外は、大体英語でのやりとりです。

USCPA試験の4科目で、この科目はこういうところに活きる、活きていないなどありますか?

あえていうと、FARは財務諸表を見るときのものなので、細かいところまでは使いませんし、AUDは全く関係ありません。BECは、経済学的な観点などで若干使うかなと思います。

また、移転価格については管理会計的な考え方が出てくるので、エッセンス的なものはあるのかなという気はします。基本的に私達が見る移転価格は日本の税制からの観点なので、REGについても全て活きる訳ではないです。

USCPAはアメリカでの税務関係の業務がOKなので、仮にアメリカの税務に携わりたいということであれば、アメリカ現地でお仕事を探すのが手っ取り早いと思います。

他には、監査側からの委託を受ける形ですが、税金に関するリスクの評価に関する案件がたまにあるという感じです。IFRSもしくはUSGAAPで財務諸表を作る場合、税金に関する負債を引き当てないといけないかどうかというリスク検討がステップとして入ってくるので、そこについて監査側から税務のほうで評価してほしいという話が来る形です。

蓋然性という言葉をよく使うのですが、負債計上をしなくてはいけないのですか、大丈夫なのですかという話をするイメージです。

前に来たゲストも税金はなくならないから、絶対に食いっぱくれないって仰ってました。

それはあると思います。これだけ経済がグローバルに絡み合っている中で、今後、普及することはあれど、なくなることはないという分野だと考えています。

事業会社がそのような経験や知識を得ていくと、自分たちでやっていく部分が出てきてファームにお願いする機会は減っていくかもしれないけれども、そうしたら、そちら側に行けばいいということですね。

そうです。レベル感は違えどニーズはあるはずなので、仕事としてはなくなることはないという感覚はあります。

業務の中で使う知識はどのように得ているというか、完全に業務をやりながらですか。

業務の中で得る部分もありますし、自分で勉強していく部分もあります。また、他社事例等も含め、過去の案件を適宜参照したりもします。移転価格というのは、良くも悪くも結構ニッチで、スタート地点で優劣も何もないという分野だと思うので、そこからは自分次第かなという感覚です。

是非、皆さんも合格して、移転価格に興味がある方は一緒に仕事ができればと思います。
頑張ってください。

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