第115回 USCPA CMレポート
開発途上国に対する国際協力業務特集!
実施日: 2015年3月21日(土)
【Guest】 すみさん USCPA
ゲスト紹介
大学卒業後、公務員(県職員)、民間企業(製造業)での経理勤務を経て、去年、監査法人に入所。
USCPAは、前職在籍中に合格。
現在は、監査業務に携わる一方で、主にJICAの海外開発援助プロジェクト等アドバイザリー業務に関わる。
監査法人で働く、すみさんに質問
- すみさん
- 参加者
- 司会
国際協力関連の仕事というのは、具体的にはどのようなことをされているんですか。
国際協力業務の話はメインテーマとして後程取り上げますが、監査関連のほか、たとえば最近増えていることといえば国からの調査業務ですね。中でもインパクトが大きいのは、民間の資金を利用して空港の利用者を増やしていこうというものです。
空港を民営化するまではいきませんが、PPPやPFIを使い、コンセッション方式(運営権対価をもらって民間が運営していくというやり方)を導入するなどして取り組んでいます。
羽田空港のような大きな空港はそういった取り組みなしでも利益を増加させて安定的な運用ができますが、そうではない地方の空港というのもたくさんあるんですね。その第一号案件に関わることになり、こういった形を、他の空港につなげていこうという流れがありまして、そこのアドバイザリーサービスに会社として携わろうとしています。
実際に行う業務内容としては、財務諸表、税務関係が変わってきますよといったところに対応したり、法律的なところは弁護士事務所と提携しながら進めていったりといった形で行ないます。
他に大きいものですと、経済産業省や環境省からの業務受注があります。経済産業省ですと、たとえばインフラ輸出ですね。インフラ輸出といっても、ただ単に箱モノを作る技術を伝えるというだけではなくて、運営の仕方といったソフトの部分も含めて海外へ輸出していきます。それは先進国を対象にする場合もあれば、発展途上国を対象にする場合もあります。
その各国・各地域にどのような可能性・ポテンシャルがあるか、またはどういう国にどういうニーズがあるかといった調査を請け負うのも業務の一つです。
そういった各国の情報収集や調査のアドバイザリー業務の一環として、JICAから受注して、プロフェッショナルサービスを提供していこうという流れがあって、監査だけに絞ってしまうとどんどん日本の市場が縮んでいき、どうしても右肩下がりになってしまうということが考えられる為、そこをアドバイザリーで補って伸ばしていくことによって事業部全体で上へあがっていこうという考えですね。
国際協力という分野においては、取り組んだ時期がこの1、2年で、Big4の中でどちらかというと新しく参入した方になります。それでも何件か受注してしまして、これから拡大していけるように取り組んでいるところです。
官庁からの公募案件に入札するという感じですか?
基本的にはそうですが、官庁だけでなく地方自治体もありますね。
空港に関してはどんどん実績が上がってきているのですが、空港を運営しているのが自治体の場合もあり、そこからお話を頂くことが多くなっており、評判がよくなってきているところですね。
アドバイザリー業務や調査業務は、どのくらいのボリュームで、どのくらいの期間を掛けて進んでいくのですか?
たとえば、私が少し関わった業務で言いますと経済産業省の調査業務があります。国としてインフラ輸出を推し進めていますが、それに関する問題点を調査したり、ニーズ調査をしたりするというものです。
まずヒアリングをするわけですが、勿論日本のユーザーにも聞くものの、Big4は海外にあるネットワークが強みなんです。
海外のネットワークは150か国以上ありますので、そのなかで参考となるような国の事例を聞きに行きます。先進国には非常に進んでいるところがありますので、その調査でいえばイギリスやオーストラリアなどへ行き、関連する機関、携わっている方々、あるいはそのユーザーの方々と話をしていきます。
そのような話し合いをする中で報告書の方向性を定め、中間報告書をまとめます。そして最終的に、現状と改革の提案をその報告書に盛り込んでいく、という流れになっています。
具体的に入社してから関わったプロジェクトについてもう少し詳しく教えていただけますか。
先の経済産業省からの案件に関しては、私が昨年1月に入社したのですが、3月末が納期だったんですね。
9月くらいに受注して、国内に関するヒアリングは関わっていませんが、1月に入社後、関わり始め、問題の抽出をまとめたのと予備分析ですね。海外へ出張して調査に行きますので、その予備調査等一緒に同行させて頂いて、まとめるという作業をやりました。
空港に関しては、私が関わった部分で言えば、オーストラリアの空港とイギリスの空港のアニュアルレポートなどの関連する情報を現地オフィスやネットのリソースからとって、財務分析をしたり、実際にPPP/PFIを入れたことによってどれだけ売り上げや利用客が伸びたとか、そういう財務分析をしていったものをレポートにまとめました。
そういったプロジェクトというのは何人くらいのチームでやっているのですか?
すみさんのいらっしゃる部署自体は何人くらいいるんですか?
私のいる事業部は300人くらいですね。
そのうち監査に関わっている人が8割から9割くらいですので、専属でアドバイサリーをやっているのは、全体としても多数とはいえません。ただこれからその割合を増やしていこうという流れにはなっています。
アドバイザリーの業務というのは、どういうバックグラウンドの人が求められているんですか?
一つは監査法人ですので、財務数値に強いと言うか、監査を通じて得られたノウハウ、知識・経験を求められることになります。
監査は基準に準拠して、決められた事を決められた手続きに従って実施するということなんですが、一方、決められた事にとらわれない発想で進めていかなければならないというところで、柔軟性が求められたり、あと上司は良くチャレンジ精神っていうんですが、貪欲に新しいことをやっていこうと言います。
それと報告書という形で、いつも成果品を出さなくてはいけませんので、自分の考えをうまく分析して、まとめるということを厭わない方を求めていますね。
あとは英語力という意味で、英語で作業するという事に抵抗がない人がやはり重要と思っています。それ以外はフットワークが軽い方と言うか、何事にも柔軟に取り組める方ということが一番重要かなと思います。
前職に関しては、金融経験があった方が良いとか、海外勤務経験があった方が良いとかありますが、そういう経験は望ましいというレベルであって、それがマストでは全くないですね。意欲がある方に、どんどん応募していただきたく思っております。
海外に調査をしに行くことは多いんですか?
私はそれほど行っていませんが、チームで考えると誰かしら行っているという状況です。
事業部全体で含めたら、監査のクライアント先の子会社が海外にたくさん出ていますので、そういうところにも行くんですが、私のチームで言えば先日、モルディブへ行ったという話を聞いたんですけども、環境の気候変動に関する調査の仕事だったみたいですね。
JICAのプロジェクトに関しての話を聞かせて貰えますか?
私がいるチームは日本で立ち上がって2年ほどになるのですが、海外にはもともとあって、日本側でも収益の柱としてアドバイザリーサービスを位置づけておりますので、日本国内でもこのチームを作ろうということになったようです。海外ではかなり実績を残しているので、我々はそういったノウハウを参考にさせてもらっています。
では、我々のチームがどういったところをターゲットにしていくのかというところなんですが、もともとJICA業務、ODA業務というのは、どちらかというとハード志向だったというか、インフラ整備とかがメインであって、実際の予算とかODAの資金の使われ方とか、資金を使うための内部統制の仕組みとか、そういったところは後回しというか、あまり手を付けられていなかった分野なのかなというところで、そういったところをPFM(Public Financial Management:公共財政管理)という一つの概念をつかってターゲットにしていこうかなと考えています。
公共財政管理には何が含まれるのかと言うと、まずは予算ですね。予算の編成があって、途上国で言えばJICAからのお金、あるいは世界銀行からのお金、そういったドナー資金が開発途上国の予算の何割かを占めるところもあるわけですね。そういった予算の骨格づくりにPFMという分野は上流部分として関わります。
そして、今度は予算を執行する部分になりますが、癒着しないでちゃんと調達しているかとか、ちゃんとコストパフォーマンスが高い支出を取り組んでいるか、といったところを今度は見ていきましょうと。
資金管理・資産管理、固定資産、せっかくODAの資金で購入したのに使われてなかったとか、そういった部分を見ていきましょうというのが中流部分ですね。
最後のところでは内部統制がしっかりしているかという内部監査。または外部監査といったところが、PFMの一番最後のところなんですね。
そのトータルでPFMをやっていきましょうという流れがあって、現段階ではトータルでもちろんサービスを提供できればよいと思っているのですが、それは色々な制約があって一気にやるのは難しいというところで、予算の改革だけを行なうプロジェクトがあったり、あるいは資金調達面や管理面を見ていきますよというプロジェクトがあったり、一方で最後に内部監査とか外部監査の部分の能力向上をしていきますというのがあったり、そういったパーツパーツでJICAのほうから公示があるというのが現状ですね。
実際に今、JICA業務でやっているのは、ODAの仕組みでお金を前払いで渡したり、いろいろな方法で資金を提供しているのですが、その資金の提供先の監査というのがあって、ひとつひとつ細かい支払の状況を見るのをJICA側がやるのは難しいので現地の監査人に委託したりしているのですが、それがより効果的にできる仕組みを考えてほしいというところで、監査業務を改善させるための調査を行なっています。
もうひとつは事後評価で、例えばマラリアの対策をしたとか、農業の支援をしたとか、そうしたプロジェクトが終わってから、3年とか5年後くらいにそのプロジェクトが過去、振り返って持続的に機能しているのかというのを確かめる評価業務というのがあるんですね。私たちが受注したのが金融系の業務で、向こうの金融機関の能力向上を図るためにシンクタンク系のコンサルタントが入った後、実際、今も機能しているかどうかを評価する為に今は事前調査をしているところです。この夏、現地に行って、金融機関を数件回って、調査をする予定です。
それと今ではなくて、以前扱ったものになりますが、ウクライナで金融危機があった時にお金を回すのが厳しく、国債を発行するという話になったのですが、国債の残高管理とか、国債を発行する為の利回りの条件とか、いわゆるBondのマーケットにおいて、あまり評価されていない部分があって、そこをより国際標準に近づけていくような能力を付けるというプロジェクトに関わっていました。
もうひとつは監査ですね。ODAの資金の流れが正しく行われているのかをJICAはいろいろなマニュアルを持っているので、そのマニュアルに準拠しているのかというのを第三者の立場からチェックしていました。
評価業務のノウハウというのは組織として持っているのでしょうか。
金融機関の評価をするということで、評価の能力が求められるのと金融の知識が求められるのですが、金融の知識に関しては、金融監査部というのがあり、そうしたところに関わってきた方がいるので、日本の標準的な信用リスク管理とか自己査定などを教えてもらうことが出来るわけですね。
それにプラス実際に同じグループの海外事務所が過去に同じ調査をやっているので、その時の調査報告書をもらって参考にしています。
その他には、実際の現地の金融事情をよく知る必要があるということで現地の事務所から資料をもらっているところですね。
金融に関しては裏打ちがあるのですが、実際にデリバリーをするというところで評価に関しては始めて取り組む人ばかりなので、評価業務の強い会社と一緒に共同事業体を組んでやっています。
海外のネットワークを使いながらということですが、海外とのやり取りはどのくらいの頻度になるのでしょうか?
情報交換は毎週、必ずやっていますね。
JICAから公示があって、その公示にどのくらい海外の事務所が興味を持っているかというのがあり、やるとすると海外事務所のアドバイザリー部門と一緒にやっていくわけですが、そうした公示内容は必ず英語でメールを流します。
それに対して海外の事務所が関心があるということであれば、応募をしますし、うちのリソースだけでは出来ない内容であれば、出来そうな会社を紹介して、そこを繋げることでコネクション作りをしていきます。
逆に海外事務所の仕事に対して、日本側が参加するということもあるのでしょうか。
今はうちのチームは立ち上がったばかりなので、そうしたことはないのですが、将来的にはそうなったらよいなと思ってはいます。
どういう風に情報交換をしているかという話は、セントラルがアメリカにあって、アメリカがグリップを握っていて、そこのトップが先日も来日したのですが、そうした方をJICAへ連れて行ったり、共同関係にある開発コンサルへ連れて行って、うちのノウハウについて話したりしました。
今の仕事というのはやはりUSCPAを全科目合格して、会計士としてやるような仕事というイメージなのでしょうか。
ひとつはUSCPAがこの業務にどのように関わってくるのかという話だと思うのですが、監査法人としてはUSにしても日本にしても会計士資格を持っている方を基本的に採用するというスタンスですね。
USCPAを会計、英語の知識を海外開発援助プロジェクトの実践において活かしていくために、監査法人ですから監査に従事する機会を与えていただいて、監査から得られる知識が色々とあるわけですね。
私自身、入社してちょうど1年が経ったのですが、監査クライアントに年間を通じて行っているんですけども、様々な知識、経験を積むことができ、監査をやって良かったなと本当に思っています。監査にアサインしてもらったことを感謝しています。
会計を見る目というか、財務諸表、会計数値を分析するというのは監査をすることで得られていくというのは強く感じました。
そこを上の人達は認識をしていて、そうした会計を見る目を持った人たちにアドバイザリー業務もやって欲しいというのがありますね。監査で養った力をアドバイザリーで発揮出来る人を求めていて、その為にはやはり日本もしくはUSCPAを持っている人の力が必要になるということですね。
今いらっしゃるチームの業務についてもう少し教えてもらえますか。
今、私がいるチームは国際協力の仕事を取る為に発足したわけですが、若干、求められてる仕事が増えてきていて、インフラ輸出の方を、というのがあるんですね。ひとつはJICAをメインにやる人たち、これは私も含めてUSCPAの方々がメインでやっていて、プラス、インフラ輸出に関してやる人を連れてきてそこを伸ばしていこうという話があります。
それと「IR」というのがあって、皆さん、「IR」と聞いて、何を思い浮かべるかなっていうのがあるのですが、「Integrated Resort」と言って、いわゆるカジノを中心とした統合リゾートですね。これを今、取り込もうということでやっていまして、ある自治体が地の利を活かして、人を呼びこむための仕掛けをつくろうと。
カジノだけではなくてコンベンションセンターとか、ホテル、リゾート施設等を作って集積地を作ることで人を呼び込もうとしているんです。
自治体が旗振りをして、大まかなコンセプトを考えたり、用地を提供したりするんですが、アイデアや何を作るかというのは民間のデベロッパーや運営側が考えて下さいとしているんです。その経済効果や税制、会計に関しての問題点をうちが請け負って基礎調査をしているところです。
海外の成功例を参考に調査を進めています。どういったところを調査するかというと当然ラスベガスとか、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズとか、韓国のパラダイス・リゾートなどを調査していく事になります。
監査法人とカジノってむしろ両極にあるような感じがするんですけどもね(笑)。ただカジノというのは非常にたくさんのお金を扱うので、海外では準金融機関の扱いなんですね。したがって、金融機関としてのサービスになっていくわけです。当然、会計周りはしっかりしておかないと税金の支払いの問題が出てくるので、会計事務所が入っていくということかと思います。
こういった形でアドバイザリー業務をどんどん拡大していこうという法人の傾向なわけですね。
私達のチームとしては、JICA業務ありきというわけではなくて、監査があり、それとアドバイザリー業務があり、このアドバイザリー業務を伸ばしていくという流れの中で国際協力業務があるわけですね。そのアドバイザリーにはカジノの話や空港の話も出てくるわけです。
JICAから出てきた公示に対して、例えばベトナムのものが出てきたとしたら、ベトナム事務所が主体になるのですか?それともやはり日本が主体になるのですか?
そこはあくまで日本ですね。JICAから出た公示に関しては、グローバルにメールが流れて、海外からは受注したいという関心は表明をしてもらう訳ですけども、実際に25%ルールとか、50%ルールとかあるんですけども、海外の方が関与できる割合が決まっているんですね。
今回は8名でやるという時に25%ルールが適用になると2名までしか関与できないことになりますし、25%を海外の事務所にお願いするとなるとその分、売上がうちには入ってこないことになるので、その兼ね合いもあって、うちで出来る事はやって、そこは海外に払っても良いから海外と一緒にやりましょうという判断もしながら、一緒にアライアンスを組んでやっているわけです。
その25%ルールというのはJICA側が決めるんですか?
ITの知識や経験は活用できますか?
ITの知識が無いために応募を断念したという案件もありました。その知識があれば、会計システムを導入するとかいう案件もよく出ているんですね。今だとそういう案件を取ろうと思ったら、同じグループの別会社にお願いしないとならないので、そういう知識がある方がいれば、良いなと感じることはあります。
今、いらっしゃるチームのセントラルがアメリカにあるということでしたが、人事の交流というのは海外とあるのでしょうか。
今後について考えていることはありますか?
私自身は海外の業務をやれたら良いな、国際協力できたら良いなと思って入社して、思いがけないことも色々あったのですが、目の前の仕事に全力で取り組んでまいりました。今はこの組織を何とかして大きくしていくという思いでいっぱいです。
何名かの優秀なUSCPAホルダーも入ってきたので、一緒にチームの規模を大きくしたいと思っています。
それをオープニングスタッフとして携われたのは良かったなと思っていますし、これからも頑張って行きたいと思います。