USCPAは転職する際に一番強い武器


第138回 USCPA CMレポート
未経験からのM&Aアドバイザリー特集!

実施日: 2017年12月9日(土)

【Guest】 あだ名 XYZさん

USCPAゲスト紹介

XYZさん (男性) USCPA


大学卒業後、金融機関に入社し、企画系業務に従事。特に経理や財務に関する経験は全くなかったが、リーズナブル(?)と判断しUSCPAを目指すが思いのほか苦戦。
受講から約2年間は科目合格ゼロという状態だったが、その後、約半年で全科目合格を果たし、監査法人系のコンサルティング会社に転職。
様々なプロジェクトへのアサインを経験する中で、M&Aに興味を持ち、M&Aアドバイザリー会社に転職し現在に至る

  • USCPAゲスト
  • 参加者
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Q&A

まずは今までの経歴について伺えますか。

私は大学を卒業してある金融機関に入りました。ファイナンスに特別興味があったわけではなく、収益が出しやすい一つのビジネスモデルとして魅力を感じて入りました。

いつかは起業するつもりだったので、ずっと一緒の会社にいるつもりはありませんでした。今でも転職をあまりマイナスと考えていないのは最終的には起業したいという思いが強いからですね。

USCPAはその会社にいる時に取ったのですが、機会あってアメリカの監査法人の面接を受けることが出来ました。向こうのBig4は英語がペラペラで欧米の大学の会計学部を出ていないと難しいということで採用には至りませんでした。同じ時期に日本のBig4から内定が出たのでそちらに入ることにしました。

そのファームでやった業務は会計アドバイザリー業務でした。会計アドバイザリーというと漠然としていますが、「会計を核としたクライアントサービス」というような触れ込みでした。ただ当時は、クライアントもまだ少なく、「これ」といったビジネスは少ない状態でした。

例えば、事業会社の決算早期化支援金融機関の内部監査支援IRの支援審査業務の支援などです。あと会計監査も数社やりました。
2年ぐらい経ったところで、今のまま自分の専門領域が確立されにくいということに気が付きました。そこで今やっているようなM&AのFAに転職しようと思いました。

理由としては、M&Aの収益貢献度の高さ、会社の重要な場面に立ち会えること等がありました。未経験の分野だったのでイメージ先行であったとは思います。M&A関連業務の中では、DDではなくFAにこだわりました。

具体的にどのライン(FAトランザクション、バリュエーションなど)に最初に配属されましたか?

これは明確にFAですね。投資銀行にいらっしゃる方やM&Aをやっている方は分かるかもしれないですけれども、FAはM&Aのディール全体のマネージメントをする人と思っていただいて良いと思います。ディールの流れは、まず初めにM&Aの戦略を立てるというのが一つあると思います。

まず、どこを買うか(あるいはどの事業を売るか)ですね。それはどちらかと言えば戦略コンサルの専門領域になります。案件化前の段階ですね。

案件化後はFAとクライアントの経営企画等が主導で、スケジュールや方針(価格をはじめとする交渉方針)を立案し、案件を進行させていきます。DDを行う専門家(主に弁護士・会計士)はFAのアドバイスを元に、クライアントがアサインするケースが多いです。

どのようにディールを進行させるかの決まりはないので、案件ごとに全く違います。FAをアサインせずクライアントがその役割を自前で行うこともあります。(ファンドやM&Aの経験が豊富な事業会社はこの傾向が強い)

イメージしやすいように例を挙げると、入札案件(オークション方式で譲渡先を決定する)の場合の買い手のアドバイザーにつく場合、売り手からの案内(会社概要や入札の詳細は、通常売り手のFAが作成し、買い手候補を増やして競争環境を醸成します)を元に、プロセスに参加するとなると、FAとクライアントでビジネス面のシナジー検討や初期的なバリュエーションを行い、一次意向表明書というのを出して、そこに価格を記載します。

この価格は後の2次プロセス(通常2次が最終になることが多い)のDDの結果を受けて変更されることが通常です。(そのため、一次意向表明書は法的拘束力を持たないと明記されます)この価格に基づいて2次に残れるかの選定が行われるので、関心が高い案件の場合は残ろうと高い価格を出してくるケースが多いです。

一方で、2次に残ってしまうとDDをしなければならないので、専門家をアサインし数千万円からのコストを払う必要がありますので、無暗に残ればよいというものではありません。DDの専門家はFAと違って自前で行うことはほぼありません。また2次プロセスまで至らなかった場合、FAへの報酬はゼロか数百万円の作業費用にとどまるケースが多く、無駄な支出が抑えられます。

DDには、主に財務、税務、法務の領域で行います。専門家は資格を持った会計士、税理士、弁護士です。これはどのディールでも絶対に外さないと思います。それにプラスアルファで、ビジネスDDもあります。これは買い手内部の機関決定の際の説明資料になる場合が多く、事業会社が自前でやる場合、FAが別料金でレポート作成までやる場合、ビジネスDD専門業者をアサインする場合等、案件によって様々です。環境DDやITのDDは、よほど大きなディールならあるかもしれないですけれども、ほとんどのディールでやっていないと思いますね。

その後にDDでの検出事項を検討した上での本格的なバリュエーションをFAがやります。バリュエーションはFAと違うという認識をされていると思いますけれども、ほとんど一緒です。FAの中心業務の一つはバリュエーションです。バリュエーションというのは単純なようで難しいので、私もいろいろ勉強しながらやっているところで、若手のうちは「バリュエーション能力=FA能力」みたいなところもあると思っています。

バリュエーションの結果を受けて、クライアントが最終的な入札価格を決定し、SPA(株式譲渡契約書)と一緒に売り手に提出します。これも案件によって違いますが、入札案件の場合、SPAは予め売り手がドラフトし、2次候補者に配布し、各買い手でマークアップ(修正)を入れていくことが多いです。SPAの修正はFAが旗を振りつつ、DDで起用した弁護士が中心となって行います。

価格を中心とした交渉が終わり、無事クローズした後は、PMIという部分があります。そこも戦略コンサルの領域になります。

現在、M&Aアドバイザリー会社からの転職先でもっとも多い所はどういったところでしょうか?

同業他社が一番多いですね。半分ぐらいは同業他社に行っていると思います。そもそもこの業界は転職に強い人が集まっているので、転職が多いのですが、同業が多いのは転職によって給料が上がる場合が多いからだと思います。

例で言いますと、30歳代前半の方が最近監査法人系のFASに転職したのですが、サインアップボーナスが数百万出たと言っていました。若手ではサインアップボーナスはなかなか出ないと思います。今はそのぐらい人が少なくて、経験者が重宝されていると思います。

それ以外では、銀行や証券会社等の金融機関のフロントに行く人もいます。投資銀行部門にいけばほとんど同業ですが、それ以外にもM&Aに絡めた資金調達やアセマネ(運用)系の職種や普通の融資営業や経営企画に行く人もいます。

M&Aに隣接する分野に、債券やデリバティブの法人営業などのキャピタルマーケット系もあるのですが、何年も前からM&Aと棲み分けがされておりスキルも微妙に違っているため、ここに行く人は意外と少ないです。なぜ金融機関が多いかというと、多分年収があまり下がらないからですね。事業会社に行くと年収が下がってしまうんですよね。

先ほどの金融機関が20%ぐらいで、残りの方は事業会社に行っていると思います。事業会社に行くと恐らく80%ぐらいは経営企画系の部署に行っていると思います。経営企画で中期経営計画の策定やM&Aの業務をやると思います。なぜなら、そういう業務はFAとして非常によくやるところで、スキルが活かしやすいからです。ただし、多くの場合年収は下がってしまうと思います。

年収が下がるにもかかわらず、事業会社に行く背景としては、特にシニア(40歳以降)になると主な業務は新規案件獲得(オリジネーション)なのですが、9割の人が出来ません。案件の執行(エクゼキューション)と違って、自分のスキルアップだけでは解決できないので、本当に過酷な世界で、取れない人は何千枚名刺貰っても1件も取れないです。そういう人はプレッシャーに耐えきれなくなり自分から察して、事業会社に行くパターンが結構多いです。あとは長時間労働で疲弊した若手が行きますね。

ファンドに関しては、私の周りでは行く人は意外と少ないですね。ファンドに行く人はどちらかというと投資銀行系や戦略コンサル系が多いですね。非常にエリート意識が高い業界なので、例えば有名投資銀行にいたとかMBAを取ったとか、そういうものがないと大手のファンドには入れないんじゃないかと思います。独立系の小規模なファンドならそんなこともありませんが、そういうところはそもそもポストが少ないので募集自体が少ないのではないんじゃないでしょうか。

業界的に人手はどのような感じなのでしょうか?

今、これは明確に少ないですね。非常に足りないという状況です。特に若手が足りていません。その理由としては、一昔前と比べて、会計バックグラウンドの人たちがこの業界をあまり志向しなくなっているというのがあります。ワークライフバランスが悪いという悪評が一時期すごく広まってこの業界を出ていく人が多かったのと、リーマンショックからの2000年代後半の不況でかなりの人が首を切られたことが相まってあまりイメージが良くないからだと思っています。

そういった経緯もあり、人手が足りていないため未経験者でも採用するようになってきているので、入りやすい状況ではあると思います。ただ、求められるスキルが厳しいので、あまり違う業種からですと結構厳しいというのは依然としてあるかと思いますが、人材が足りないというのはどこの業界でも共通している話かと。

人が足りていないという事で、忙しいというイメージがもちろんあるのですが、コンサル業界を含め、今どこでも残業規制とか厳しいと思うのですが、どうでしょうか?

私のところはないですね。私はあまり長時間労働が好きではないので深夜は残らないようにしているんですけれども、やはり多いですね。今まで働いた会社の中では明確に多いですし、周りを見てもそれが普通になっています。

それは、そもそもの仕事量としてどうしてもその時間をかけなくてはいけないのか、それともやはり残る人が偉いという環境下なので残らざるを得ない状況で、仕事量としてはそうでもないのか、どうですか。

両方あると思うんですけれども、そもそも仕事がないとそれほど残れないですよね。帰りづらいというのは常にあるものの、独立系のM&Aアドバイザーの特徴として案件の掛け持ちがものすごく多くなるんですよ。

1つの案件で稼げるフィーがそこまで多くないですし、成約の可能性が低い案件も多いんですよね。成約率が2割を切ったりするので、そのことを考えると掛け持ちせざるを得なくて、部としても来た仕事を断れないんですよ。

そうなると多いときは7件とか抱えるケースもあります。経験は積めるのですが、対応が細切れになるのでスキルがあまり磨かれないんです。このあたりは、独立系ファームのデメリットであると私は思っています。

公認会計士やUSCPAの合格者は、どちらかというとDDやバリュエーション部門、フォレンジックなどに行くことが多いと思いますが、FAとして採用されるには何が必要だと思いますか?

未経験という前提でお話しをさせていただきますと、一番大きいのは年齢ですね。しかも若ければ若いほど有利です。40歳未経験で入る人は1人もいないです。何もなければ32歳ぐらいと思っていただいていいと思います。コネクションがあるとか、顧客を持ってくるとか、そういうことであれば話は違うと思いますけれども、未経験で何もなく、ポテンシャルだけで採ってくださいというのは、32歳ぐらいが限度ではないかと思っています。

FAの中にもM&A仲介や事業承継という業種もあって、そういう所はおそらく営業的な仕事をしていた人だと年齢が高くても入りやすいと思います。テクニカルなことをあまり知らなくても入れると思うので、そこを目指すのも一つありかなと思います。

ただ、全く別業種みたいな認識をされているので、その後に大手ファンドなりBig4のFASに入るというのはあまり考えないほうがいいかもしれないです。ただ、成功しているところは非常に給料がいいので、「そこで稼ぐ」みたいな感じで思ったほうがいいかと思いますね。

未経験から投資銀行のM&A部門での採用というのは、かなり難しいと思いますね。英語がペラペラと話せて、かつ、経歴が光っているのは大前提で、そこから面接官にアピールできないと一流投資銀行には入れないかと思います。M&A経験者で若ければまた別かと思いますけれどもね。

そのところで言うと、USCPAを持っていることの評価というのはどうでしょうか?

USCPAは転職する際に一番強い武器だと思いますね。USCPAを持っているだけで転職するときにものすごく有利です。資格を持っていることがその職業に就く前提となるような独占業務がある資格以外であれば、USCPAほど評価される資格はないと思います。USCPAはどの業界へ行っても「すごいね」となるんですよ。

先ほど投資銀行は英語が話せなければいけないと言う話があったと思いますが、USCPAを持っていることに対しては評価が高かったと言うことでしょうか。

評価は高かったと思いますね。合格していたから投資銀行の面接まで行けたと思います。未経験にも関わらず、外資系の投資銀行でも面接まで至ることが出来たのはUSCPAを持っていたからだと思いますね。

USCPAが仕事で生きた場面や経験があれば教えて頂けますか。

FAの場合は、資格がなくてもできる仕事なので持っている人はあまり多くないかもしれません。ただ、会計バックグラウンドという意味では多いので、日本の会計士を持っている人が割と多くて、USCPAを持っている人も多少いるかなという感じです。あとの半分ぐらいは何も持っていない人です。証券会社から来た方はアナリストを持っている人が多いですね。

そういう前提がありつつ、生きた場面といいますとやはり名刺を出す場面です。名刺に書けるというのはかなり大きいので、そこは非常に生きています。あとは採用のときですね。
仕事でその専門知識が生きた場面というのは、正直に言うとあまりないと思います。ここは非常に重要なところで、分けて考えたほうがいいと思うのですが、仕事で会計の実務ができるようになるのと、USCPAの勉強は全く違うと思ったほうがいいと思います。

さらに言えば、実務で使える英語力という意味でもこの試験だけではそこまでつかないんじゃないかと思っています。求められる英語力はしゃべることですから、毎日英語の資料を見ているので当然ある程度は上がっていると思いますけれども、そこまで効率的ではないかと思います。

やはり日本の公認会計士と比べると勉強量が少ないので、それだけで実務に使えるような資格ではないと私は思っています。当然基礎的な部分は学べるんですが、あまり実務で生きると思わないほうがいいかと思いますね。転職するための武器と割り切って勉強したほうがいいんじゃないでしょうか。

あとはメリットですけれども、取得したことによるメリットは、先ほども言いましたけれども、やはり転職がすごくしやすいのと年収も上げやすい。そこに尽きるかと思っています。あとは名刺に書けて、「ある程度のことが話せる人なんだな」と認知されるという点がメリットだと思います。

M&A業務の開始前と後で得たギャップは何かありますか?

地味な仕事が多いです。本当にエクセルとか、パソコンとにらめっこの仕事がものすごく多くて、それを深夜2時までずっとやっていたりすると、今この世界で一番つまらないことをやっているなと思いますよね(笑)これは冗談ですけれども、本当に地味な作業が多く、ストレスが溜まったりはします。

高度な専門知識が必要な仕事だと思っていたのですけれども、確かにそういう一面はあるものの、全く専門知識なしで上に上がっている人も一定数はいるので、勘でできる仕事だなと思ったりもします(笑)

ただ、そういう人はやはり営業力があるんだなと思います。気配りや交渉力ですよね。空気を読みつつ、物おじせずに相手にガツガツものを言うとか、そういう場の空気をつくることがうまい人はやはり上に行くと思いますね。

給料等の部分で言いますと、この業種は明らかにいいと思います。同世代の話を聞くと他は少ないと感じるので、そこがこの業種の一つの魅力だと思います。稼ぎたい人には良いんじゃないですかね。

勿論、一流投資銀行であればもっと貰ってますけどもね。上がり幅という意味では、40代ぐらいになって仕事が取れなくなるとある一定のところで停滞するので、その辺になると普通のメーカー勤務の人との逆転が起こってくるかもしれないです。

ワークライフバランスは悪いですね。ただ、朝は遅いです。10時に出社しても何も言われないです。毎日昼に行ったらさすがにどうかと思うのですが、ちょっと寝坊して昼に行ったとしても、特にミーティングとか顧客訪問がなければ何も言われないですし、誰も気付かないです。

21時から0時の間に帰るのが普通と思ったほうがいいかと、下手をするともっと遅い日が多くなる。そういうことは覚悟したほうがいいと思います。

土日はどうですか?

土日は仕事が終わらなければ自主的に出ている人が多いです。「土日に出てこい」というパターンも多いですね。月に1回はあると織り込んでおいたほうがいいです。

前にいた監査法人はそれほど忙しくなかったですね。残業規制もありましたし、何より人が多かったです。幾らでも人を借りられるという状況があるので一人当たりの業務量はそれほど多くない感じでした。監査法人に入ったら、多分監査チームでもそれほど忙しくはないと思います。

ただ、普通の事業会社のように毎日夕方5時に帰れるというようなことはないと思うので、それに比べると多いと言った感じかと思います。

そこは以前に較べるとだいぶ改善されましたよね。

改善されたと思います。
ただ、監査法人の人は残業代が付くので逆に残業がなくて困っているかもしれないですね。残業代で稼いでいる人もある程度いるので。

仕事の進め方についてですが、例えば何人かでチームを組んで「あなたはバリュエーションをやって」とか、どういう仕事の進め方なのか、詳しく教えて貰えますか。

固定的なチームではないです。案件に応じてプロジェクトチームが組成されるような感じです。

部長が仕事を取ってきて、取ってきた部長が空いている者を見つけてチームをつくるみたいな形ですか?

そうですね。シニアが取ってくる場合もあります。そういうときは誰を入れたいとか部長に相談するので、基本的に部長が全部決める感じです。

プロジェクトチームができると、どういう分担の仕方なのですか。

案件のサイズにもよるのですが、成功報酬4,000万とか5,000万の案件ですと、最終責任者として部長がいて、その下にシニアが1人就きます。その下にディレクターやマネージャーが就いて、この人がプロマネをします。そして、その下に若手のアソシエイトレベルの人が1.5人ぐらいの感じです。

業務は、人によってもスタイルは違うと思うんですけれども、顧客との窓口の部分は大体若手がやります。顧客とかDDファームといって専門家の先生方と話す機会は、やりとりから全部若手がやっていき、その報告をディレクターが受けて細かな判断をしていきます。重要な局面での顧客との折衝はディレクターレベルがやります。

案件全体の方向性を決めたり、顧客に出す資料のレビューはシニアが全部やって、間違っていないかとか、おかしな方向に行っていたら修正するという役割を担っていきます。

基本、作業をするのはアソシエイトという感じですか。

全部そうですね。ただアソシエイトレベルの人でも全部丸投げされたら嫌じゃないですか。ある程度自分で出来るような事はディレクターがやるとか、そうならないように配慮している人はいます。基本的にバリュエーションなどはトレーニングも含めて1人でやらされますね。

案件を取ってくるような作業(ピッチ)はアソシエイトが資料を作ります。そういうときは人によってやり方が全然違っていて、ある程度丁寧に教えてくれる人や、丸投げで「こういう資料を作れ」という人もいます。

そうやって丸投げをする人は嫌われて、その人の仕事は受けたくないというクレームが挙がってきて、やっぱりそういう人って仕事が取れないですので居づらくなって辞めていくことが多いですね。自分が手を動かさない人はウケが悪いです。

先程、仕事を取ってくる気遣いと交渉能力が出世では必要だとおっしゃっていたのですけれども、仕事を取ってくる気遣いというのを具体的に知りたいのと、交渉というのはどういう相手に対して、どういうシチュエーションでされるのか、具体的に伺えますか。

気遣いですけれども、これはどの仕事でも重要だと思います。本当に細かいことで言えば、資料はきちんと印刷設定までして、その人が好むような印刷の出し方で設定するとか、頼まれた以上のことをしてサプライズしてもらうことですかね。

対お客さんで言えば、頻繁に無料で情報提供をすることだと思います。自分たちで調べてこの会社を買えばいいのではないかとかいろいろ考えるんですけれども、それが「それいいですね」となって案件が動くことはそうそうないと思うんですね。無料で資料を作って、御社をここまで知っています、ここまで分かっていますというような情報提供をたくさんしていくんですよ。

他の会社はこういうことをやっていますとか、直接会いに行って、そういうことを何回もやっていると信頼されて、その案件は進まなかったとしても、やっていくうちに向こうから「こういう案件をやりたい」と持ってくるんですよ。会社の中で考えて意思決定されたものが信頼された人に来るんです。フィーは持ち込み案件よりは取れないですけれども、案件の成功率が非常に高いです。

契約書の文言修正というのは、契約書等も扱うのですか。

扱いますね。これも非常に驚いたところなんですけれども、FAは法律の知識が結構要ると思います。ですので、法律が分からない人はFAには向いていないと思います。

どうやって勉強したんですか?

大学は法学部だったこともあって割と法律には詳しいと思っていたのですが、M&Aに特化した法律とか、契約書の文言もあるので、そういうことは入ってから勉強しました。

法律に関した話ですが、自分も同じように聞かれるんですけれども、基本的に聞かれたらすぐに答えられる感じですか?たまにマイナーな質問をされて「預かって後で答えます」となるときもあるのですが。

それが普通だと思いますね。普通に出てくるような簡単な質問ならいいですけれども、難しい質問に対して安易に答えると「それ本当なの?」となると思うので、お客さんとしてはきちんと検討してくれたほうがいいと思うんです。お客さんもすぐに答えが出るようなものではないことは分かっていると思いますよ。

私も昔は即答したかったんですが、情報を内部でよく咀嚼して出してあげたほうがいいのかと思います。若いときは自分の判断と上の人の判断がズレていて「何で違うのだろう」とか、「こちらのほうが合っているんじゃないか」とか思うときがあったんですけれど、やはり経験している人のほうが正しい場合が多いと思えるようになって、まめに報告して判断を仰ぐということは気を付けています。

キャリア寄りの話ですが、他の内定先が決まった中でM&AとかFA寄りのほうを選んだ理由をもう少し聞かせてもらえますか。

若いときしかできないと思ったからです。おそらく年をとったら採ってくれないと思うんですよ。スキルを磨きたいと思ったら、若いときにクライアント業務をやって、他社事例をたくさん知リたいと思って希望しました。あとはやはり給料が良いので、そこは魅力に感じましたね。

給料の次にモチベーションになってくるということですか?給料以外で引かれる点はどのようなところでしょうか?

やはり会社の重要な局面に立ち会えるということですね。買う側のオーナーは幾らになるか目の色を変えて気にします。オーナー系は本当に顕著ですかね。100億持っていてもまだ欲しいのかという人と知り合えるのもいいですし、本当に貴重な経験をするなとよく思います。

それと売られる側の社員も、明日は仕事がなくなるのではないかと思ってやっているので、そういう人に対しては真摯に対応しなくてはいけないと思いますし、買う側も失敗したら会社が潰れてしまうレベルのディールもあるので、そこはやはり責任重大だなと思ってやっています。

ブティック系の会社のオリジネーション等と実務をやるエグゼキューションの割合はどれぐらいですか?

まず、その2つは分かれていないです。カバレッチみたいな担当部署があるにはあるのですけれども、基本的にはないです。提案もエグゼキューションもやる形で、業務割合で言うと6・4から7・3くらいでエグゼキューションのほうが多いという感じです。

提案はシニアになると多くなるのかもしれないですが、若手のうちはエグゼキューションのほうが多いと思います。私が今やっているのはほぼエグゼキューションです。

それは、実際にエグゼキューションとなると本当に複数のプロジェクトを掛け持ちしてという話にもなるのですか。

そうですね。これはFA特有で、本当に掛け持ちが多いので、そこで忙しくなるというのが多いです。仕事を断らないので難易度の高い案件ををずっと持っていたりします。若手へのトレーニング提供というのもあるって話ですが、あまりにも多いので、それは健全ではないかなと思います。

具体的なエグゼキューションの内容について伺えますか。

一つはバリュエーションです。場合にもよるのですが、これが業務の多くを占めると言っても過言ではないと思います。バリュエーションといっても奥が深いといいますか、FAの場合、バリュエーションをやるのは先の事業計画が重要ですね。

それが無かったり、いい加減だったり。客観的に見て、これを買い手に持っていって根拠がないとなったら、それに基づいた価値は付かないじゃないですか。ですから、バリュエーションンになると事業計画を作るところから始まります。そこからDCF法や類似会社比較法を使って企業価値の算定を行います。

DDって買手も売手も対応窓口なんですよね。売手の場合はDDを受ける側なので、例えば「この資料をください」とか「この質問に答えてください」というのは全部まずFAが受けるんですよ。

会社によってはそれを丸投げしても全部やってくれる会社もあるんですけど、人が足りていないところはFAがヒアリングして作るんです。知らない会社のことをあたかもその会社にいるように回答をしたり、新たに資料を作ったり、それを1人でやらされるので本当に大変です。

あとは、買い手の工場見学とか、サイトビジットのアテンドとか、そういった交通整理ではないですけれども、そういうことをやります。DDレポートを作ること以外は全部という感じです(笑)

私はデリバティブとかオプションを扱っているんですけれども、エグゼキューション自体はなくなっていく職だと言われているのですが、投資銀行からなくなっていくと思いますか?

ニュースでトレーダーの98%が解雇されたと聞いて、「嘘だろう」って思ったのですが、本当らしくて。うちに転職してきた若いトレーダーがいるのですが、アルゴリズムを監視するだけの業務になってきているようなことを言っていました。そのようにAIに置き換えられる業務は金融業界では多いと思っているのですが、M&Aに関しては本当に人との関わり合いが多い仕事なのですぐにはなくならないのではないかと思っています。

ただバリュエーションは、もっと効率化できるのではないかとよく思いますし、エクセルでやると本当にやることが多くて、これはソフトとかになって数字を入れたらピッと出てくるようになるのかなと思ったりするので、そういったところはどんどん進んでいくのかなと思います。

ただ、ディールをマネージメントする人は絶対に要るので、残るのではないかと思っています。でも、報酬自体はそれほど上がっていかないかと思いますね。

個人的にはDDもなくなってほしいなと思っているんですけど。

そうですね。DDに関しては、本当に聞くことが決まっているんですよね。定型フォーマットがあって、それに沿って投げてきてというのがあるので、本当に付加価値が下がっている業務ではないかと、フィーがどんどん下がってきていて、それが如実に出る分野だと思います。無くならないにしても結構きついかなという気はします。

付加価値というのはどういうところで大切なのですか。

FAとしての付加価値ですか。売り手FAでしたらやはり価格を上げることですよね。そのためにはたくさん買い手を連れてきて競争環境を作り出さなければいけません。たくさんの会社があってどの会社が興味を示すか分からないので、人海戦術で何社も当たって候補者を連れてくるようなことをしますので本当に大変です。

FAはディールを成立させることに集中してしまうので、時として顧客とコンフリクトするんですよね。買い手の場合は高い価格を出せばディールが成立する確率が高いのですが、その分、損をしますよね。高値掴みをさせてしまう可能性があるんですよね。

そういうときは成立させたほうがフィーはもらえるんですけれども、必ずしもそれは顧客にとってプラスなのかなと思ったりするので、そこで「高いのでやめておきましょう」と言える人は凄くかっこいいと思います。ただ、それによって会社の予算が達成できないという事態にもなりかねないので、それもどうなのかと思います。

前職からの転職の際、他にも幾つか受けたんですよね?

受けましたね。FAとファンドを見ました。ファンドはまず募集が少ないです。2社ぐらい受けたのかな?両方とも駄目でした。その次に受けたのが証券会社系と自分がいたBig4ではないFASを受けました。2社ほど内定は取れたんですけども、全部財務DDだと言われました。

FAは今いる会社に受かって少し迷ったんですけれども、財務DDをやったらたぶんFAをやりたくなるなと思ったので今の会社にしました。別モノだと聞いていましたし、実際、本当に別モノなので、ただM&Aをやりたいと思って財務DDに入ると「あれ?」となってすぐに辞めてしまう人がいるので、そこは気を付けたほうがいいと思いますね。

先程、同業他社への転職ということをおっしゃったと思うんですが、実際に現在いらっしゃるブティック系から、Big4系のFASのFAラインに行くということはあるんでしょうか。

逆もありますけれども、それは結構多いです。Big4に限定して話をすると、法人によって全然違うので、入る前によく確認したほうが良いと思いますね。監査業務だったらどのBig4も元からクライアントの基盤がある程度あるので、どこに入ってもあまり変わらないと思うのですが、FASとか監査法人系コンサルは全く別会社だと思ったほうがいいので、Big4と一括りせずに一個一個見ていったほうがいいと思います。

監査法人の中でFASは増えてきていると思うのですが、実態としてはどういう感じなのでしょうか。

監査法人がまずあって、その子会社としてFAS会社があります。これは、昔、監査法人にいた人が独立してつくった会社ですね。一方で監査法人の中でもM&A関連業務をやる部署が残っています。業務レベルはFASのほうが明らかに高く、フィーも高いです。
それと、監査法人の中でもM&A関連業務の募集はあります。ただ、FAの仕事はありませんので、やる内容はバリュエーションかDDに限定されると思います。選べるのであれば、業務の幅が広いFASに入ったほうが良いと思いますね。

バリュエーションは本とか出ていて、理屈とかはよく分かるのですが、何となくピンとこないというのがありまして、どのように勉強されているのか参考までに伺えればと思うのですが。

これは教えてもらうしかないと思います。向き不向きがたぶんあって、もともと日本の公認会計士の勉強をしていて会計をずっとやってきた人は割とできるんですよ。監査法人出身者ができるのは、調書を作ることに似ていて、例えば計画期間の売上の前提シートを作り、次に営業外費用の内訳のシートを作って・・・という作業が、まさに監査で調書を作るのと一緒なんです。ただ、監査と違い視点が過去ではなくて将来に向かっているという違いはあります。

本をたくさん読むことだと思います。あとはそういう案件をたくさん回してもらうことではないですかね。私は部長にバリュエーションをまず極めたいので、バリュエーションの仕事をたくさん振ってくださいと言ったら、本当にたくさん来て、たくさん間違えて、たくさん怒られました。でも、そうやって言われながら何回もやっていったらできるようになるのではないかと思っています。

証券アナリストという話も出たと思うのですけれども、USCPAと比較した時にどう思われますか?

証券アナリストだと転職のときに評価されないと思いますね。証券会社にいて証券アナリストを持っている人がいると思うんですけれども、その人は証券アナリストを持っていなくても採用されていると思います。

一方でBig4のFASに長くいて公認会計士もUSCPAも何も持っていない人を見ると私は「この人はUSCPAは取れなかったんだろうな」と思います。Big4にいたら絶対に取ろうと思うじゃないですか。だから諦めちゃったんだろうなって思います。

そう思われないためにも、この資格以上に転職のときに評価される資格はないですし、一回挑戦したのなら合格するまでやったほうがいいと思います。仮に自動車の営業をやったとしても、USCPAと名刺に書いてあったら絶対に話題になると思うんですよ。それだけですごいプラスですよね。

私も最初の2年は1科目も合格できませんでした。お金も時間もないし、周りを見たら土日とかは遊んでいるわけです。私の場合は勉強仲間をつくらなかったので、仕事を早く切り上げてファミレスなどでずっと1人で勉強するというのを繰り返していると「何であいつ早く帰ってんだ」と言われて嫌な思いもしたのですが、合格したらそういうことは全然気にならないくらい良かったなと思いますし、2年半と長くかかったかもしれないですけれども、本当に価値のある資格なので3年・4年かけても全然いいと思います。

ちなみに、関連してCFAのホルダーは周りにどれぐらいいらっしゃいますか。

周りには1人もいないです。お客さんではたまにいます。

お客さんというのは経営企画の部長とか。

そうです。あとはたまにDDファームの人でいます。勉強している人がいるんですけれども、CFAは数学的な素養がないと厳しいと言っています。

確率とか、そういう世界が多いらしく、「全くやってこなかった人は厳しいよね」と。バリュエーションの分野に大きく重なるので、M&Aをやる人にとってはいいかと思います。試験回数も少なく日本人にとってはおそらくUSCPAより難しいと思いますね。

学習内容としては日本の証券アナリストと大きく変わらないので、同じことを学びたいのならUSCPAが受かった後に日本の証券アナリストをやってもよいかと思います。転職価値の面で言うとCFAは日本での知名度は低いと思いますね。

それは金融業界の方でですか。

知らない人が多いと思いますね。外資系の証券会社、投資銀行、ファンドですと知っていると思いますけれども、認知度はUSCPAより低いと思います。一般的にはもっと知られていないと思いますね。情報量が少ないですよね。

FAだったら向き、不向きがあると思うのですけれども、そういうのはなかったですか。

まず長時間労働ができる人でなければ無理ですね。体力が一番重要だと言う人もいます。長時間労働が嫌な人はやめたほうがいいと思います。私も長時間労働は好きではないので長く続けたいと思わないという理由でもあるのですけれども、まず長時間労働ができる人。ですから女性が非常に少ないのです。

あとは数字に強い人です。若手は数字に触らせられるので出来たほうがいいと思います。数字は見るのは嫌だという人は結構きついと思いますね。
それと、あまり他の人は言わないかもしれないですが、美的センスがある人がいいです。絵が描けない人は資料を作るのが下手なのですよ。ですから、パワーポイントに触るのは嫌ですという人は結構きついと思います。

他は、コミュニケーションですよね。「人と話すのはあんまり得意じゃないです」という人はクライアント業務全般に向かないかなと。経理などはいいかもしれないですけど、監査法人のときもそういうことを思いました。

実際に細かい作業を見ると、昔の定型的なものがあるので内容を差し替えてやれば、通じるところがあるんじゃないかと思うんですけれども、実際に一から作ることが結構多かったりしますか。

そう思いますよね。監査でも同じで、まず過年度調書を見ろと言いますし、前の年の調書をもとに作るとか、過去の案件の中から適当なものを取ってくるというのがありますけども、実はそれって遠回りだったりするんですよ。

というのも、案件ごとにかなりカスタマイズされていて、そのとおりに数字を埋め込んだら間違えるんですよね。ミスがすごく多いんです。だから、自分で作ったほうがいいと思っていますし、そのほうが力になると思っています。他の人が作ったものをもらうことはやめたほうがいいと思います。自分で作ってそれを何回も使うというのがいいと思いますね。

一からやっていると間に合わないときもあるので過去のものは当然参考にしますが、基本的に自分で作る。そこの重要性を最近痛感しています。

これからどういうキャリアパスを考えているのか伺えますか。

私は今の会社はそれほど長くはないと思っています。あと1年以内には考えていますね。

そういう話を同じぐらいの若手と結構するのですが、長くいたいと思っている人は少ないです。私の場合は、起業したいというのがずっと根底にあるので、この会社を辞めて起業することも当然考えていますが、その前にもう1社別の会社に行くことも考えています。

価格競争になっていて、なかなか付加価値を出しにくいと思うので、FAという業種を極めようとは思っていないです。むしろビジネスの一つのスキルとしてM&Aを修得したい、バリュエーションをもっと極めたいという気持ちがあります。

皆さんも頑張って合格して、USCPAを活かして活躍して下さい。

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