第130回 USCPA CMレポート ~大阪開催第7弾!~
実施日: 2017年1月28日(土)
【Guest】関西でUSCPAとして活躍している2名の方
参加者
司会
ゲスト紹介
ホーリーさん (女性) USCPA
大学卒業後10年間外資系メーカーで経営企画・税務の仕事に携わる。
最初の4年間はFP&A、管理会計、工場勤務。その後の6年間は税務を経験。その中でシンガポールでの勤務も経験した。
原価計算・投資分析・USGAAP/日本基準での決算・監査対応・税務調査対応・国際税務と幅広い業務をこなす中で、 一度体系的に知識を整理したいと思いUSCPAの勉強を始めた。
勉強を進める過程で、どんどん日本から面白い仕事がなくなっていく会社の状況を鑑み、いい話があれば転職も視野に入れ ようという気持ちで転職活動を始め、2科目合格の時点で日系企業から内定をもらい転職を決断。
現在、国際税務・連結決算・IFRS適用検討・開示など前職では経験できなかった分野の業務にも携わることができており 、大成功の転職だったと実感している。
マックさん(男性) USCPA
大学卒業後、家電メーカーで営業及び物流費管理部門に従事。
業績悪化を契機に会計へ興味を抱く。早期希望退職制度を活用、USCPA試験に挑戦。
合格するも実務未経験のため、経理職での就業に大苦戦後、税理士事務所勤務を経て、事業会社の経理職へ転職し、国内・海外グループ会社の会計・連結決算・税務・J-Sox等に従事。
その後現在の会社へ再転職し、経理部門を経て内部監査部門へ異動後、CIAを取得。
現在、コーポレート部門の監査や、組織横断的なテーマ監査、海外子会社監査、J-Sox等に従事。
Q&A
以前、シンガポールに勤務をされていたということですが、USCPAに合格後、今また海外勤務をしてみたいという希望はありますか?
ホーリーさん) そうですね、また海外で働きたいです。
外資にいたときは毎日英語を使っていましたが、日系に来てからはほとんど英語を使う機会がないので、どんどん英語力が落ちていくという危機感を持っています。
日系に入ったデメリットはありますか?私は転職したときにグローバルだと聞いて入ったのですが、実際入ってみたら、全然そうではなくて、英語も全く使わないんですよ。
ホーリーさん) 私も同じような状況ですね(笑)海外人材募集と言いながら、本社での勤務ではほとんど英語が必要ない環境です。在外会社とのやり取りも、現地の駐在日本人と行うので英語はほとんど使いません。
マックさん) それはよく聞く話ですね。転職した友人からも似た話を聞きます。日系企業におけるグローバル業務から感じることとしては、グローバル対応可能な人材を企業が募集する場合、いざ入社すると、グローバル人材が社内に少なく、マイノリティーになることがあることですかね。
私は、社内でグローバル化対応における問題点を共有できる仲間を増やすところから始めました。賛同する仲間がいると業務が進めやすくなりますし。その様な意識共有できるのは、転職経験者に多い印象です。
連結決算だと英語を使わないんですか?
ホーリーさん)海外に駐在しているのが日本人なので、ほぼ全て日本語でのやり取りですね。
マックさん) 私の前職では、子会社の拠点がアジアに多かったのですが、経理担当者が全てローカルスタッフのため、メールや電話は全て英語でした。
一方で、日本本社では、海外からのメール等の要点を日本語で伝え直すための通訳・翻訳の様な仕事もあり、正直面倒だな(苦笑)と感じることがありました。通訳・翻訳自体は、業務に付加価値を与えるわけではありませんので。
会社によるんですよね。
ホーリーさん) そうですね。また、監査人や税務調査の担当者が英語に対応できていないことが多いように感じますので、英語の資料があれば日本語になおして、監査人に説明したり税務調査の対応をしたりしています。
マックさん) J-SOX対応で、監査法人の先生方(会計士)を海外子会社への往査へ何度かお連れしたのですが、語学に強い先生方ばかりではありません。J-SOXでのRCM作成や、(四半期)決算時に連結パッケージで取り込む海外子会社数値に関する質疑対応時にも、通訳・翻訳が必要でした。
私の上司は外国人なのですが、うちに来る監査人の方も英語が話せなくて、私が間に入って、通訳も翻訳もしている感じです。
外資から日系に移るときにネガティブに感じたことはなかったですか?それとも転職ありき、だったのですか?
ホーリーさん) 外資の中でも日系寄りと外資寄りがあると思うのですが、私がいた会社はかなり外資寄りでどんどん人が辞めていく会社でした。皆、良い会社があれば移るというようなスタンスで仕事をしているので、私も同様にそれを念頭に置いていました。
良い会社というのを何を基準に判断するのかは難しいのですが、お給料だけをみれば同じ仕事であれば外資のほうが高いですよね。ただいつ辞めさせられるかわからないというリスクがあり、定年まで働けるチャンスはほとんどない。日系は給料は少しずつではあるが上がっていき雇用も安定している。
それ以外のメリット・デメリットも踏まえて自分の中で働く上での優先順位をつける事ですね。ただ最近は日系でも人材が流動的になっているので、「自分が市場に出たときに魅力的に見えるにはどうしたら良いのか」という視点は常に意識しながら日々の仕事をしています。
マックさん) 私自身は外資系企業での勤務経験はありませんが、現在の勤務先に外資系から転職してきた方がいます。その方の転職理由が、外資系企業における日本の拠点は一つのBranchに過ぎず、親会社からの指示に従う仕事が中心でつまらなくなり、日本が本社の日系企業に転職したと言っていました。ホーリーさんの自己紹介の中で、「どんどん日本から面白い仕事がなくなっていく会社の状況を鑑み・・・・」という話と共通するところがあるのかなと。
ホーリーさん) そうですね。私は今、国際税務にも携わっています。皆さん、「BEPS(税源浸食と利益移転)」という言葉を日経新聞等でご覧になっていると思いますけども、「前職では親会社の言うことを聞いて資料を作るだけだったのが、、日系に転職し日本の親会社の立場だとどのようにBEPS対応をしていくか方針を決めて主導する立場にいるので、イチから作っていかないといけない大変さはありますが、かなり面白いです。
忙しさという点ではどちらが良いとかありますか?
ホーリーさん) 忙しさという点では変わりませんが、働き方のフレキシビリティという点では外資のほうがはるかに高いですね。
例えば、外資では在宅勤務とかフレックスの制度がきちんと機能していました。現職だとPCを持って帰るにも上司の許可を貰うとかいろいろ手続も面倒ですし在宅勤務がそもそも推奨されていませんが、前職では何処でいつ仕事をしてもOK、結果さえ出せば問題ない、という感じでした。
ですので、忙しさは変わらないけども、それに対処出来る環境が整っているのは外資なのかなと思います。
外資に戻りたいとか、また転職をしたいというような希望は今の時点でありますか?
ホーリーさん) 今のところは無いですね。まだ転職して1年ちょっとなので、日系の良いところがまだ分かっていないと思っています。
以前は転職35歳限界説を意識していまして、35歳になる前に転職しておかなければと思っていたのですが、きちんとキャリアを積んでいれば何歳だろうが転職して行く人はいますし、いまの会社でも3社目で入ってきている40歳の方もいますので、自分が歩いてきた道に何が残っているのか、ということが大事だと改めて感じます。
マックさん) 外資の方が年齢は問わない傾向にはあると思います。日系は、気にする企業が多いのが現実です。幸い、私は35歳を超えて転職しましたが(笑)。
マックさんは、経理経験が無い中の転職活動が苦労されたということで、一度、税理士事務所の経験を挟んで事業会社へ移られたということですが、やはりその税理士事務所での経験があるのとないのとでは全然違いましたか?
マックさん) 初めから税理士事務所を希望していたわけではありません。経理未経験で受け入れてくれた先が、税理士事務所であったのが正直なところです。ただ、USCPAに合格後、経理職には会計の知識だけではなくて、税務の知識も必要だなとは感じていました。Journal entry1つ入れるのに、消費税の知識も必要ですし。担当する業務内容によると思いますが、会計だけの知識で経理業務が完結することは少ないというのが実感です。
私の場合、税務の勉強をしたことで、実務未経験にも関わらず、税理士事務所が雇ってくれることに繋がり、経理職での就業への扉が開きました。
また、「税理士事務所や監査法人」に勤めるか、日系・外資を問わず「事業会社」に勤めるかという選択があるかと思います。例えば、税理士事務所で勤務すると個人事業者から一定規模の法人まで種々規模・形態のクライアントがいて、色々な企業を見る経験が出来ます。この際、「第三者」としてクライアントと関与することになります。
一方で、その企業の一員として仕事をしていないので、自分がどちらの関わり方を望むかということです。私は双方を経験しましたが、1つの会社の一員として社内の人と協業することに喜びを感じる人間だと分かったので、税理士事務所へ勤務後、事業会社に入り直しました。
その経理経験が無い中の転職が難しかったというのはUSCPAに合格した後ですか?
マックさん) そうです。USCPAには合格したが実務未経験という状況でした。ライセンスについては事業会社への転職後、国内のMBAを取得する過程で、会計・ビジネス単位が揃い、ワシントン州のライセンスの取得に至りました。
転職のときに2科目合格していると言うのはやはり違いはありましたか?
ホーリーさん) どうでしょうか。採用する側ではなかったのでわかりませんが、書かないよりかはマシかなというレベルだと思います。面接での質問は、自分がやってきた仕事についてを重点的に聞かれ、USCPAについては全く聞かれませんでした。
マックさん) 税理士事務所から事業会社へ入社した際は、海外経理担当での採用でした。当時の上司が海外駐在の経験がある方で、これは後から知ったことですが、USCPAを勉強された経験をお持ちの方でした。その上司はUSCPAの合格まではたどり着かなかったのですが、そこへ合格者の私が入社を希望して来たので、採用時には間違いなく、プラスになったと思います(笑)。
合格された後、経理だったり監査だったり、関係している仕事をされていますが、今後のキャリアや目標はどのように考えていらっしゃいますか?
ホーリーさん) まさに模索中です。USCPAに合格したからといって、世界が変わるわけではないです。どちらかというと、それまで費やしてきた時間や労力が報われたことによる自信と達成感が生まれるので、それが仕事にプラスに活きる効果があると思います。
USCPAの資格が日々の仕事に実践的に役立つ実感は正直なところあまりないです。FARを勉強したから会計士の仕事が出来るかというと、そういうわけではないですね。
会計基準は日々アップデートされますし、教科書に書いてあることはベーシックなことですが実務は応用の積み重ねなので、勉強の日々はUSCPA合格後も続きます。ただ、そのベーシックなところを自分で勉強してるというのは経理の仕事をしていなくてもプラスになると思います。
ご質問いただいた今後のキャリアや目標については模索中です。マックさんがCIAを取得されたというのを聞いて、ちょっとやってみても良いかな、、と思ったところです(笑)
マックさん) 今は明確に、次のステップとしての目標があるわけではありません。ただ、現在の仕事(内部監査)を通じて俯瞰的に経営を見る経験は大切にしています。これはあくまで私見ですが、経理職に従事される方は専門性が求められるためか、人事異動が少なく入社以来ずっと経理という方が少なくありません。経理実務には詳しいけれど、自社ビジネスの理解が不充分な方もいます。
その様な状況下で、経理から予算削減などの厳しい話を各部門にする場合、他部門の経験がないと、その(他)部門の方の反感を買い、揉めてしまうことがあります。皆さんも、「経理は数字・数字ばかりうるさい!」という声を社内で、聞いた経験はありませんか?原因の一つとして、他部門での業務経験がないがために、予算削減をお願いする部門の方々の気持ちに配慮出来なかったというケースを多々見てきました。
私は今、内部監査部門にいて社内の色々な部署から情報が入るのですが、この様なボタンのかけ違いに遭遇することがあります。その際に大切なことが、経営を俯瞰する目であり、数字の見方に対する知識であると考えています。企業は利益を出すために活動しているわけですから。
ホーリーさん) 非常に耳が痛いですね。「経理だけ」「現場がわかっていない」「他の部署が何をしているかわからない」というのはまさに今の私の状況です。転職して一年しか経っていませんが、現場がわからなくても連結決算はできてしまいます。仕訳を切れれば出来るので。今のマックさんのお言葉はグサグサっと刺さりました。
マックさん) 数字を纏める業務も大切には違いありません。しかし、それだけでは単なる作業屋さんになってしまいます。ただ、先ほどのお話したことなどを、私が感じるようになったのも自身が経理職から離れ、少し客観的な立場で考えるようになってからです。私も経理にいた頃は、全然・・・(笑)。
私は経理をやったことがないんですが、会計業務支援のシステムを作りたいと思っていまして、どういうところに困っているのかを知りたいのですが。
マックさん) 経理やファイナンス部門の方が、いえ、経営陣がどうした数字を見たいのかを形にすることが大切です。経理部門の中で、数字が分かりシステム構築できる人材は少ないと思うので。そのような方が経理部門にいるのは、非常に助かります。私の友人で元々SEの方がいますが、USCPA合格後、BIG4のコンサル部門へ転職されました。会計を一通り理解していることで、経理部門のニーズを満たしたシステム構築の仕事をされています。
ホーリーさん) 会計システムについては、親会社から連結子会社まで一括して同じシステムを使っている場合とそうでない場合の2タイプあるかと思います。
同じシステムを使っている場合には全ての情報がひとつのシステムに入っているので、連結決算もやりやすいと思います。もうひとつは親会社と子会社が全てバラバラのシステムを使っている場合で、連結決算システムを別に持っているケースです。
この場合には個別決算を締めてから連結のシステムへ情報を入れ直さないといけないという作業が発生します。元の決算情報を全て入れるとパンクしてしまうし作業量も膨大になってしまうのでそこに何を入れるべきなのかを決めないといけません。
必要な情報が何なのかを親会社が見極めて子会社に頼みますが、そこに抜けがいっぱいあるんですよ。「コレもほしいのに、アレも欲しいのに、、、無い!」って感じで。
私は今、システム会社と連結決算システムの改修を進めているところですが、システムの設計段階で会社側が気付かないような、「こういう情報を取っておいたほうが良いんじゃないですか」という提案が出来るような人は本当にありがたいです。
「決算をする上で、こういった情報は必ずあとで必要になる」というのをわかっている人とわかっていない人だとシステム屋さんとしてのバリューは全く違うと思いますね。
会社側が言うことをただやるだけじゃなくて、「こんなところが抜けてませんか」とか、「こういうのがあると便利じゃないですか」という一言があるだけで全然違うと思います。
マックさん) 今の話、凄くわかります。会計の話を理解した上で、システム構築や提案が出来る方は本当に価値が高いと思います。
USCPAを取得した人の中で特に重宝される方というのはどのような方なのでしょうか?
マックさん) J-SOX対応で海外子会社へ頻繁に通い、会計士の先生方を海外子会社へお連れする経験をさせて頂きました。
その経験から、会計・税務・監査などの専門的な話が英語(や中国語)で可能であれば、監査法人の方や、監査法人がグローバル提携しているローカルFirmの方々と話が出来るので、重宝されると感じます。
あと、これは余談ですが、海外子会社の往査時に行なう名刺交換時に、CPAの文字が入っていると相手が安心してくれます(笑)。
そのおかげで、ディスカッションがスムーズにいくことも経験しました。
事前の案内で、「日本の外資系は面白くなくなってきている」って話があったと思うのですが、それってどういう理由からなのでしょうか?
ホーリーさん) 前の会社はどんどん地域統合を進めていて、日本でやっていた仕事のかなりの部分が海外に引き上げられていっていました。日本にある仕事の職責範囲が狭まったというイメージです。
ただ、現地法人が現地のビジネスを主導する方針を採っている外資系も多いですので、あくまでも一例として聞いていただければと思います。
マックさん) 現在の勤務先で外資から転職された方の話とは別に、アジアHQが日本にある会社で働いていた方が、アジアHQのシンガポール移転に伴い、家族の事情でシンガポールへの転勤が難しく悩まれていた方もいました。
海外の関係子会社に監査の対応の準備で行かせてもらったことがあるんですが、その際にやはり日本に較べると仕事のレベルというか、質が下がっているって聞いていて、そういったものの監査にも行かれるのですか?
マックさん) 日本と比較して質の面で問題のある海外子会社もありましたが、中には非常に優秀なローカルスタッフもいて、逆に本社経理担当のこちらが助けられた経験もしました。
また、業務の質を一定に保つために、海外子会社の経理担当者を日本に呼んで、経理担当者会議を開催し、それぞれの国の会計や税務対応の大きな問題から、日々のオペレーションの課題などを話しあう場を設けるなどしました。
そういうことは英語でやるんですか?
マックさん) 私が経験した経理担当者会議では、ローカルスタッフの使用言語の関係で、英語圏と中国語圏のチームに分けて開催しました。
私は中国語が出来ないので、英語チームの取り纏めを上司と共に担当しましたが、結構、大変でした(笑)。
開催直前は泣きそうになる位大変でしたが、非常に意義のある取り組みであったと思います。
国際税務に興味があるのですが、シンガポールで国際税務っていうと、どのような事をされていたんですか?
ホーリーさん) 当時、シンガポールにアジアの統括会社があったので、アジア全域の税務リスク管理をしていました。また、BEPSが騒がれ始めた時期でしたので、情報収集と対応方法の検討もしていました。
色々な国の税務の知識がないとダメですよね。
ホーリーさん) 各国に税務担当がいましたので彼らからヒアリングし地域統括会社としてどうリスクを管理するかを検討していました。国ごとに税制に様々な特色があり、とても勉強になりましたね。
各国の税務担当者というのは会計事務所の人ですか?
ホーリーさん) 現地子会社の税務担当者です。国際税務は楽しいと思いますよ。
昔から欧米企業が積極的に取り組んできた分野だと思いますが、日系企業も遅ればせながら、税務戦略を持ち実行しないといけないというのに気づいてきてますよね。
どういうステップを踏んだら、そういう仕事に就けるのかわからないんですけど。
マックさん) 税理士法人で国際税務に携わった経験のある方が、事業会社へ転職したケースを知っています。
転職理由としては、税理士法人における移転価格やM&Aのアドバイザリー業務はかなり激務のようで、一定期間経験を積んだら、事業会社に移り、長く勤めたいといった声です。
ホーリーさん) 私が勉強していた当時は、アビタスのキャリアセンターから移転価格の人材募集がよくきていました。
そうですね。この数年、移転価格部門の求人は常にあるような感じです。
マックさん) 移転価格対応は日本の対応がかなり遅れている分野と言われています。
一方で、対応に長期間のリソースが割かれ、経営に与える金額のインパクトが大きくなる可能性も潜むため、専門家が欲しいという事業会社のニーズはあると思います。
需要に対して供給が間に合っていない状況なんですかね?
ホーリーさん)おそらくそうなのだろうと思います。海外との取引が活発になると税務リスクも増大しますので、積極的に対処しようと考える会社が増えてきたのだと思います。
今後、AIの発達によって、会計士の仕事がなくなるという話があると思うのですが、どう思われますか?それとIFRSが統一されたら、処理も簡単に行くのではないかと思うのですが、実際に働かれている視点でいうとどう思われますか?
ホーリーさん)ひとつめのご質問についてですが、実務では、会計基準に明確には書いてないようなケースが発生したりします。コンピュータが全ての処理ケースを網羅出来るとは思えないので、個々の問題に対する判断・対応という業務は残るのかなと思っています。
マックさん)IFRS導入でグループ会社の会計基準が統一されても、人が判断する業務は残ると思います。機械的な処理が要求されるルーティン業務に対しては、AIなりシステムを導入することで、業務の効率化を図り、ホワイトカラーの生産性を向上させる方向で進むと思いますし、そうあるべきだと考えています。
ただ、自社でどのような事業を伸ばすのかということはAIが決めてくれるわけではありません。それは人が判断することでしょうし、事業の失敗をAIが負ってくれるわけではありません。
業務上の最新の情報はどのように得ていますか?
ホーリーさん) Big4提供のニュースレターの購読をしたり専門誌から情報を得ています。
マックさん) 現在、抑えておくべき国が比較的少なく限定的ですので、新聞や専門誌で関係する国の情報に注視する形です。全ての国・情報を網羅的把握することは出来ないので、必要に応じて社外の専門家(顧問弁護士・税理士)に意見を伺うことも可能です。
ホーリーさん) 英語圏以外の国で、現地の言葉で詳しく情報公開をする国もあります。BEPS対応をしていると各国の基準を知らなければなりませんが、税理士法人の英訳を待つなど時間がかかるので、困ることもあります。
業務の中で日本基準とか、IFRSとかで苦労した事は無いですか?
ホーリーさん) 私は簿記の勉強をしていたので日本の基準をベースにUSGAAPを勉強しました。ただ、会計基準の違いが分かるほど深くFARで勉強したかというとそうでも無いかなという印象です。
マックさん) 私の場合は逆でUS.GAAPを勉強後、日本の会計を勉強したパターンです。私が、USCPAを勉強していた当時、日本の会計基準がUS.GAAPを後追いすることが多かったです。
例えば、固定資産の減損会計などは、日本で導入される前にUS.GAAPで勉強していたため、日本での強制適用時にUS.GAAPを把握していた私は、その要点を当時の会社の上司などに説明することが出来ました。その後も、USGAAPやIFRSの考え方の影響を受けた日本基準の改訂が続いていると思います。
USCPAを勉強されている方は、一足先に新しい分野を勉強していると考えれば、勉強のモチベーションも上がるのではないでしょうか(笑)。
ホーリーさん) 英語のほうがスッキリしている気がしますよね。
マックさん) あります・あります。会計基準の日本語が分かりにくく、英語の原文を読むほうが分かりやすいというのは何度も経験しています。
今までで、一番やりがいのあった仕事、その逆で辛かった仕事をそれぞれその理由も含めて教えて頂けますか。
ホーリーさん) やりがいがあったのは、前職での税務調査対応ですね。詳しくは言えませんが、特に国際税務は正解があるわけではなく、国同士のパイの取り合いなので、どう折り合いをつけて落とし込んでいくかというやり取りが面白かったです。
辛かったことは、FP&Aの仕事です。予算を作ったり、新製品の青写真を描いたりという仕事が苦手で。。。向き・不向きの問題かと思います。
マックさん) 面白かったのは、J-SOX対応が始まり、海外子会社へ往査させてもらいローカルスタッフの方々に現地の美味しいレストランへ連れて行ってもらったことです。すいません、仕事自体の話ではないですね(笑)。
仕事自体では、先ほど話した海外子会社の経理担当者を日本本社で開催した、海外経理担当者会議が一番印象に残っています。
普段は日本から離れた国にいる経理担当者が一同に会し、Face to Faceで直接コミュニケーションを取る大切さを改めて感じました。
反対に辛かったのは、東南アジアの製造子会社(工場)を閉鎖した事です。理由は2つあります。
1つは事業撤退に長い時間が要するためです。海外への新規進出は大変だと思いますが、会社清算も本当に大変です。
清算のための税務クリアランスを取得までには、当局との長い交渉が必要です。当局も、こちらからとれるもの(税金)は極力取りたいというスタンスで来ますので。
もう1つの理由は、お世話になった現地の経理担当者を含め、従業員を解雇する側になったことです。外資系ではこのあたりドライに考えると思うので、私がちょっとウェットなのかもしれません。
私は新卒で勤めていた会社が、業績不振で親会社に吸収合併される経験をしました。それがきっかけで会社の数字(=会計)に興味を持ち、USCPAの勉強を始め、今に繋がっているのですが、まさか自分が解雇する親会社側の仕事に携わることになるとは、考えていませんでした。仕事とはいえ、工場閉鎖と継続時のケース比較を行い、最終的に閉鎖の判断を下す判断に至りました。結果として、仲間を切り離した感は拭えません。
子会社の閉鎖決定後、現地の経理担当者から、会社の閉鎖前にどうしても現地を見に来てくれと言うので、プライベートの休暇を取り現地を訪れました。既に生産設備が、他の子会社へ移管された空き地同然の工場ラインを見た際のことは・・・・忘れられない経験です。
FP&Aのところをもう少し教えて頂けますか。
ホーリーさん) 私がやっていたのは、予算の管理とプロジェクトのNPV・IRR分析です。
例えば、新製品を出すときに、広告宣伝費をもっと抑えて、パッケージの質を上げたほうが良いんじゃないかとか、そういった分析をしながら他部署の人達とプロジェクトを進めていくような仕事でした。
会計の数字を活かした仕事というとざっくり挙げていくとどんなものがあるのでしょうか。
ホーリーさん) USCPAの勉強中に学んだ事を活かせないところを探すほうが難しいのかなと思いますね。
というのもNPVとか投資分析ってファイナンスとか財務部門にいる人だけがやる仕事ではないですよね。、そういう意味ではお答えが難しいかなとは思いますが、監査対応、決算、IFRS適用等が該当するのでしょうか。
マックさん) USCPA試験を通じて学ぶ知識は、ある一定の会計等のビジネス知識を英語で理解出来ますという、運転免許みたいなものです。
その意味で、ホーリーさんと同じ意見なのですが、CPAの資格が経理やファイナンスに何かの分野に限定して役に立つというのではなく、企業が数字(利益)を上げることが目的である以上、ビジネスの素養として必要な知識であると考えています。
ホーリーさん) 例えば、AUDITの考え方は工場での内部統制・コントロールにも役に立つと思います。原材料が記録された場所に記録された量があるか、というのをチェックするプロセスを作る際にはまさにAUDITの考え方が役に立つと思います。
マックさん) 今、CPAの勉強をされている方は、合格までは大変だなと感じることが多々あると思います。でも、その頑張りはきっと将来に繋がるはずです。
Steve Jobsの有名な演説Connecting the dotsをご存知だと思いますが、時間を経て振り返った時、CPAの勉強経験が始点となり、自分の将来が繋がり始めたと、感じる時があることを願っています。