理系修士の方は実はアドバンテージを持っている!


第131回 USCPA CMレポート  ~パブリックセクター・理系大学院生特集!~

実施日: 2017年2月11日(土)

【Guest】 あだ名 kentaroさん

USCPAゲスト紹介

kentaroさん (男性) USCPA


大学・大学院修士課程(理学部)卒業後、大手IT企業にて金融システムエンジニアとして勤務後、地元の県庁に転職。
県庁から霞が関の省庁派遣時に、公的部門において企業会計の有識者が不足していることを感じ、企業会計全般の知識を身につけることと、有識者であることの表示手段を得るため、日商簿記1級取得の次のステップとしてUSCPAを選択。
2年間の出向期間中に全科目を1回目の受験で合格(FAR=88、BEC=89、AUD=96、REG=88)。
受験期間はゼロからの単位取得を含めて約1年。
合格後、県庁に復帰し、さらに専門性を向上させるため、働きながら大学院博士課程(経済学部)にて博士号取得を目指して学会報告や論文執筆をこなしています。

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Q&A

職場の中で有識者が不足していたのが学習を始めるひとつのモチベーションになったというのが案内に出ていましたが、もう少しその辺りの話を聞かせて頂けますか。

県庁では企業会計について詳しい人はあまり多くありません。業務の中で決算の報告をするんですけども、キャッシュフローベースのいわゆる「県庁会計」といって、県庁でしか使わない会計基準に基づいて報告をしているわけです。

勿論、それは大事な仕事なのですが、そもそも複式簿記ではなくて、いくら歳入があがって、いくら歳出があったというのが県庁の決算で発生主義ではないんです。ですので、減価償却費とかは出てこないんですよ。しかも単式簿記なので仕訳が発生しません。

したがって、県庁の仕事をしている分には要らないですし、知っている必要は無いんですね。ただ、だからと言って、企業会計を全く知らなくて良いかというとそうではないんですよね。だれも知らないし、全く使わないということであれば良いんですが、たまに使うので、やはり詳しい人が何名かいないと困るときがあると思います。

それと面白いのが銀行は金融庁が監督官庁になりますが、農協、漁協の監督官庁は県庁になるんです。そして、そこは複式簿記で、決算を見るのは県庁職員になりますので、そうした部署は知らないといけないですよね。

今のが仕事で企業会計に接する場面で、もう一つ公会計という分野があって、県庁でもキャッシュフローベースの決算書だけではなくて、ちゃんとバランスシートを作りましょうという動きがあって、県庁を複式簿記にしていくというのを今まさに総務省が働きがけをしていて、おそらく来年度決算から統一的な基準に基づいて複式簿記のバランスシートが作られていくことになると思います。

その時には私もUSCPAとして、もっと突っ込んだ話が出来ると良いなと思っていますね。

去年くらいから複式簿記を用いた公会計検定が始まったという話を聞いていて、そうなると今後も公共分野において、その複式の機運が高まっていくのかなと思っているのですが、実務の中で感じられるところはありますか?

まだまだこれからですね。やらなきゃならないという話は色々と出ていて、うちの県庁でも過去10年位は作っているんです。ただそれを有効に使っている人は殆どいなくて、まだまだ活用方法を検討している段階です。

皆さん、県庁とか都道府県のバランスシートをご覧になった事があるかどうかわかりませんけども、事業会社のものと違って、どれだけ真剣に見てみても実務に跳ね返ってこないですよね。配当金とか無いですし、債務超過になったら、東証一部上場じゃなくなるわけでもないです。

コレは私の研究の話になりますけども、県庁のバランスシートって一体何の為にあるかって、実は国際的にも全然明らかになっていないんです。外国の論文とかでも、そもそも複式簿記で発生主義で作る必要があるの?っていう学者がいるくらいなんですね。私も複式簿記、発生主義のほうが良くて、単式簿記はダメ、県庁はダメ、って思っていましたけど、色々と勉強をしていくと、、っていう話なんですね。

日本は借金大国だって言ってるけど、実は隠し財産がたくさんあって、それは単式簿記だから見えないだけで、複式にすると実は含み益があるなんて事が書かれていたりしますよね。

そういう話もありますよね。連結したら、借金はないんだっていう人もいます。有名な学者さんの話だと日銀は政府が出資しているから、日銀を連結したら、借金が消えるんだって、日本には借金はないなんていう事を仰る人もいます。ただ、その議論が正しいかどうかは、答えはまだ出ていないと思いますけどね。

わからないんですよ。公会計の財務諸表から財務健全性を測定する技術ってまだ無いんです。企業会計であればいろいろあって、銀行は自己資本比率を出して、バーゼル規制とかで何%を切ったらお金を貸しちゃいけない、とかありますよね。

それに対して県庁の場合には、財務諸表を見ても、健全かどうかって、そうしたものが無いんですよね。自己資本比率は電卓を叩けば出ますけども、その比率がどうなのかっていうのはわかりません。

アメリカは公会計が進んでいますけども、そうはいってもこの十数年で、新しい分野になるんですよね。今のところ、公会計というのはそうした位置付けになります。勉強の対象としては面白いですけどね。

実務上のキャッシュフローで事足りちゃうってことなんですかね。

そうですね。法律ではキャッシュフローで足りるようにしましょうと決まっていますし、発生主義にしたらどのような利益があるのか、分かっていないんですよね。

複式簿記にすることによって、今までの資産が網羅的に見られるようになるとかはあるんでしょうけども、じゃあ、それをどのように使うかとか、県庁はお金が余っているじゃないかということを指摘できるような会計の技術が追いついていないんです。

名古屋は減税日本で減税しましょうとやっていて、その根拠になり得たり、税収上げる、議員の報酬上げる・下げるなんて言う時にも使えるのかなと漠然と思ったりするんですが。

いつかはそういうことが出来るかもしれないですね。何々県の財務諸表がぼろぼろだから、公共事業はやめましょうとか。政策的な意思決定に使えることが遠い将来出来るかもしれませんが、今はまだまだですね。そもそも分析技術がまだまだ、という状況です。

そういうことであれば、産業振興などの分野でより顕著に役立って来る感じでしょうか。

そうだと思いますね。USCPAを取得して、県庁や都庁で使うのであれば。ただ今の県庁などの会計はガラパゴスではありますが、それで運用されちゃっているので、県庁会計を知らない訳にはいかないんですね。ですので、役所で働く人間は、公会計・企業会計の両方を知っておくと良いと思いますね。

では、USCPAで学ぶような公会計とは全く違うということでしょうか?

そうですね。そもそも日本だと公会計が各都道府県庁によって違うんですよね。別の方法で作っていると思います。

働きながら学習をされていたということですが、どのようにモチベーションを維持しながら、勉強をされていましたか?

モチベーションという意味では、名刺に書けるというのが大きなモチベーションになりました。日商簿記1級とUSCPAはいずれも私にとっては難しい試験でしたが、名刺に「簿記検定1級合格」とは書けないですよね。

それに対して、例えば大学の先生とか、あるいは県庁の仕事の中で金融機関の方と話すときにUSCPAは名刺に書いてあるので、金融の方ですと皆さん、USCPAをご存じで、「US」のひとには初めて会ったと言われることも結構ありました。

やはり、自分が少なくともこの試験に受かるくらいには会計の事がわかっているという事を名刺で言えるというのが自分のモチベーションに繋がると思っていましたし、実際にそうでした。

県庁のひとが会計に詳しいって普通は思わないですよね。県庁の職員だけど、こうした「企業会計の事が一通りわかっている」ということを一番手っ取り早く表示できるわけです。
それにやはり珍しいですよね。USCPA合格者というのは。

県庁の中でも、もしかしたら、県内でも私だけかもしれません。(笑) 今、通っている大学院は別の県にありますけども、大学の教授の中にもUSCPAを持っている方はいないですね。やはり珍しいんですよね。珍しいということはその人にしか知らない何かを持っているであろうと思われるので。

それとUSCPAは日本の法律とかでUSCPAを持っていたら、こういうことが出来るとか、独占業務とか何もないですよね。ということはUSCPAに合格して、どういうふうに使うかは自分で考えないといけなくて、日本の会計士であれば監査法人に行って、実務経験を積んで、公認会計士と名乗れるようになったら、独立する、もしくはそのまま監査法人に残る、という方がほとんどだと思うんですよね。

それに対して、USCPAは働きながら勉強して合格できる試験なので、皆さん、実務の経験があるわけです。従って、独占業務は無いけれども、資格プラスアルファ(実務)があるというのが非常に強みになると思いますね。

USCPAなのに監査業務の実績は無いというのはどのように考えていらっしゃいますか?

やってみたかったなとは思いますね。あと10年若ければ、、とは思いますけど(笑)
転職のエージェントはやはりそこを言ってはきますよね。

会計検査院で公的部門の監査を2年間、やったのでそれで誤魔化せる部分はありますが、本当に監査法人へ転職をしようと思ったら、そこを聞かれると思います。ただ、今、監査法人は人が不足しているみたいですね。私にもスカウトメールが着たりしますので。

では、時々、自分の市場価値の確認をしたりしているのですか?

昔、登録した転職サイトからたまにメールが着たりするんですよね。登録したときは山のように着ました。私は32-3歳で合格しているのですが、当時はベストマッチしているので、すぐに来てくださいという連絡がよく来ていました。
今はかなり求人があるんですよね?

そうですね。うちにも監査法人の求人がたくさん着ていて、頻繁にアビタスでもBig4の採用セミナーを開催しています。それと監査法人にはパブリックセクターがあるので、そうしたところでの経験があるkentatoさんのような方は欲しいと思いますね。

AIが進むと会計士の仕事が消えていくって話がありますけども、どのようにお考えになっていますか?

確かに今ってGoogleで検索すればなんでも出てきちゃいますよね。法律に詳しいとか、仕訳をする力とか、そういうのは要らなくなってきますよね。検索すれば出てくるので。

単純に何かに詳しいということはなくなってきますけども、財務諸表を監査するとか、不正を監査するというのはコンピュータで判断できないところが必ず出てくると思うので、そうしたところは残るんじゃないかと私は思っています。

コンサルなどで財務諸表を分析して、同業他社と較べて、経営に関するアドバイスをするという場合、色々な分析をする際にAIを使うことはあると思いますけど、その分析結果を使って提案するのは人じゃないと出来ないと思うので、そういったところは残るんじゃないですかね。

日商簿記一級を取得されているということだったと思いますが、USCPAとどちらが難しかったですか?

そうですね。もう一度、どちらを受けますか?と聞かれたら、、勿論、どちらも受けたくは無いですけども(笑)一科目で良ければUSCPAのうちのひとつを受けますね。ただ4科目全て受け直しか、日商簿記一級かと言われたら、簿記一級のほうがマシかなと思いますね。一発勝負ですから。

FARの問題って3-4行で電卓叩いて2分前後で解いていきますけど、日商簿記の問題は1問を解くのに1時間とかかかるんですよ。修行みたいです(笑)実務でこんなの手作業でやるわけないし、Excelならば一発で出て来るでしょうという感じなんですけどね。

評価の観点としてはどうですか?例えばBATICとの比較だと私の肌感覚としてUSCPAは上位資格のような感じなのですが。

私がいるところだとUSCPAをほとんど知らないですし、ましてやBATICは誰も知らないと思いますね。先ほど名刺に記入できるのは大きいという話をしましたが、USCPAと名刺に書いてあって好意的な反応を示してくれるのは会計のプロフェッショナルとか、それに近い人ですね。ですので、そういった日本の会計士とかには簿記一級よりUSCPAのほうがアピールになると思います。

日本の会計士の人に「簿記一級を持っているんです」と話しても「へぇ・・」程度だと思いますが、「USCPAを持っている」と話したら「え?なんで持っているの」となるんですよね。ですので、相手が会計に詳しい人であれば、簿記よりもUSCPAのほうが良いですね。

ただうちの県庁のように公認会計士でしかもアメリカ、となると希少過ぎて宇宙人のような目で見られるんですよ(笑)。そういった意味では評価の基準がまだまだ定まっていません。それに対して、日商簿記はお年寄りでも知っていますので、「凄いね」と言ってもらえて、そうした一般の人には日商簿記のほうが今までのところはウケが良かったです。

職場などでUSCPAを説明するときにこうした切り口で話したとかアピールしたとかありますか?

今のところ、職場でUSCPAを使って何かをやったというのは無いんですね。次の異動でどうなるかはわからないんですけど。公務でどう使うかというのは他に誰も持っていない以上はわからないというのが本当のところですね。

USCPA単体だけで何かをしていくということだと監査法人になるとは思うんですけども、プラスアルファで実務があれば、色々とアピールできるところはあるんじゃないでしょうかね。

私としては、県庁職員としてパブリックの仕事がわかっているのとUSCPAを持っている点、それと学術的な研究も出来るというところがあって、おそらく普通の公認会計士は忙しいので、学術論文を書いたりしないと思うんです。

公会計の分野ってまだ研究が進んでいなくて、そもそも要るのか要らないのかというところがあるので、今でも大学院でやっていますが、もっと研究を進めて、論文を書いてといったところで、何か面白いことが出来ればいいなと思っています。

月に一度だけ大学院へ行くんですか?講義に出たりはしないんですか?

講義には出ないですね。教授にもよるんですけども、私が通っている大学は、社会人博士だったら、論文だけ月に一度、書いて出せば良いとしてくれています。

事前の案内に理系の人にお勧めということが書かれていたと思うのですが。

理系の修士まで行くと英語をたくさん読まされると思うので、英語への抵抗が少ないということで有利だと思いますね。
おそらくこの資格を勉強されるのは経済学部とか商学部の方が多いと思うのですが、その英語の面で実は理系の方はアドバンテージを持っているんじゃないかと。単語さえわかれば英文を読む力は持っているので大変さはないですよね。ただ出願のための単位は持っていないので受験条件揃えるのは大変ですかね。

私は物理の大学院生だったときに統計分析が専門で、統計分析が出来る会計ができる人というのは日本ではおそらく皆無で、アメリカではそうした研究が盛んで、例えば私がやっている公会計の分野であれば米国の州の財務状況が悪化したら、格付け機関の格付けがどのように影響が出るのか定量的に分析を、、などがあるんですけども、日本ではまだ全然なされていないですね。そういう意味でも理系からこうした文系の中の専門的な知識を得るというのは意味があると思います。

私は文系で社会統計を専攻していて統計も将来的に使えればという思いもあるのですが、会計と統計を繋げたようなものを実務で何か想像されていることはありますか?

学術的にはとても大事だけど不足している分野なんですね。アメリカでやっている統計のデータ分析、実証研究と言われる分野は海外では主流で、日本では論文は全然なくて、そういうこともやらないといけないとはされているんですが。

ですので、私のように論文を発表して学位を取得するという時にはものすごく有利かなと思います。実務的には統計的なものを使ったことが出来れば良いんですけども、いまはまだ統計的、会計的な議論はどこもまだできていないと思います。

大学院の専攻を決めるにあたってはどのように決められたのでしょうか。

私は決めるのに凄く苦労しました。仕事に関連するものでないとって思ったのですが経済だろうと思って、最初は地方財政の先生と話したのですが、その先生に財務会計の先生を紹介していただいて、今の先生についています。

しかし、公会計を専門にやっている研究者って、全国的にほとんどいないみたいなんですね。これから流行っていけばいいな、と思いますけどね。

出願州はグアムだったんですよね。

そうですね。今話したように理系だと単位が無いので、単位取得が大変でしたが、ライセンスを取って名刺に書きたかったので。大学の先生には凄くウケが良かったですね。博士課程に入るときにプレゼンがあったんですが、質問はそればかりでした。いつ合格したのかとか何処の州に登録しているのか、研究のことを全然聞かれませんでした(笑

やはりせっかく合格したからには名刺に書けた方が良いと思うので、ラインセスはおすすめですね。皆さんも早期合格目指して頑張ってください。
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