一般職から総合職へ。資格は、自分の知識・やる気・実績をアピールするには有効な手段。


第80回 USCPA CMレポート

実施日: 2012年12月18日(日)
【Guest】 Makiさん

自己紹介

大学は英文科卒。
父親の仕事の関係で海外によく行き、外国人と接する機会が多かった事と付属の中学/高校の英語教育が盛んだったことから、英文科へ進学した。

就職においては、世界とつながる仕事をしたいと漠然と考えており、総合商社を希望業種として活動。結果、他業種の総合職での内定と天秤にかけ、現在勤務している総合商社に一般職として入社することにした。

最初に配属されたのは、電力プロジェクト部で、海外での発電所建設に必要な、機械や設備の設計や調達から建設までをワンパッケージで提供するプロジェクトの受注・契約履行業務を行っている部署。

約8年間、建設地で必要な資材や機械を国内外のメーカーから調達し、船積を手配し、着荷を確認の上、代金回収を行う実務を担当し、忙しくも充実した日々を過ごしていた。

自分が長年アシスタントを務めていた担当者が、一般職から総合職に転換した女性だった事から、一般職の能力や経験値を把握し、様々な業務を任せて貰ったが、それがいい経験になった。
その後、総合商社がトレードだけではなく、事業投資のビジネスモデルも確立し、、発電ビジネスにおいても、海外の発電所に投資し、株主の立場で経営に参画し、その会社の利益を自社に連結するビジネスが始まった。

自分も同じ電力本部内で、事業投資の部署に異動したが、新しい分野で、ある程度責任ある仕事を任せてもらう為には、自分自身の価値を上げなければいけないと気づき、投資先の経営状態を把握する為の財務諸表分析に役立つであろうUSCPAの学習を2005年7月にスタート。途中、勉強を中断した時期もあったが、2008年末に全科目合格した。

職掌転換については、輸出業務を担当していた時期やUSCPAを勉強している最中から、上司に勧められていたが、総合商社という優秀な人材が集まる厳しい職場環境において、また、発電所の経営という業務内容に対して、期待に応えられる自信がなく、ずっと断り続けていた。

そんな中、USCPAに合格し、机上で得た知識を陳腐化させず、実務に活かしたいと考えた事と、チャンスを頂いているにもかかわらず、チャレンジしなければ、将来的に後悔するのではないかと考え、立場を変えて、フィールドを広げる決意をした。

総合職に転換してからは海外出張が多く、仕事中心の毎日を送っている。

Q&A

  • ゲスト
  • 参加者
  • 司会

総合商社の中でUSCPAホルダーの位置づけはどのような感じでしょうか?

USCPA取得者は多く、総合職/一般職問わず、事業投資に関わる営業の方、経理財務の方が主に取得しています。

仕事しながらでも頑張れば合格可能なので、社内でそれなりに評価はされていますが、資格そのものの価値としては、日本の公認会計士ほどではないかと思います。

ただ、大手総合商社はIFRSかUS GAAPのどちらか海外の会計基準を適用していますし、日本語で勘定科目を勉強してしまうと日本語の財務諸表しか読めなくなってしまっていたと思います。海外相手の仕事が多い総合商社では、最初から英語で学んでいる事(USGAAP)が、現地の会計士と話をする上で役立つと思います。

働いていて、どのような点にやりがいを感じますか?

後から、自分の過去を振り返った時に、視点が変わっていたり、視野が広がっている事を実感する点です。

総合職になってからまさに実感していますが、海外の発電所の経営には、様々な要素が絡んできます。現地の会計基準は勿論ですし、今年の7月からオーストラリアで導入された炭素税等現地の税法や、その導入/改編を巡る政治情勢を追っていないといけません。

また、銀行から数百億円規模のお金を借りているので、金利の動きや、ガスや石炭等燃料価格の動向も追い、将来の事業採算性を査定しています。

つまりは新聞に載っている世界情勢全てが、どのように自分の仕事に直結していくかという視点で動向をチェックしており、そういう視点を持つようになった事は、主に目の前の実務のみをこなしていた一般職の時代よりも視野が広がった結果かなと思います。

そういった自分の成長を実感出来るということがやりがいに繋がっていると思います。

仕事をされていた時にどのように勉強をされていましたか?

土日の勉強量だけでは足りず、平日も夜に1時間でも2時間でも良いので勉強していましたし、通勤時間中もMCカードを見ていました。

土日も知り合いとの付き合いは基本的に絶っていましたね。
資格取得を目指している事を周囲に公言する事で、モチベーションを上げていました。

お仕事をしていく上で、将来的な夢とかありますか?

当社の投資先である発電事業会社にCFOなりCEOのポジションで派遣される人になりたいと思っています。

一年に一度、面談があり、この先の中長期的なキャリアプランについて上司と話をしますが、目の前の仕事をこなしていくことで精一杯だった時期を経て、今はようやく先のことを考えられるようになり、このような自分の希望・夢を言えるようになりました。

世界各地にある発電所で日本企業が何らかの形で関わっている事はよくあるものなのですか?

そうですね。かなりあります。
総合商社が、日本のメーカーと組んでプラント建設するケースや、国内の電力会社と組んで海外の発電事業会社の経営に携わるケースもあります。また、逆にそういった国内の会社にはこだわらず、海外のメーカーや電力会社と組む場合もあります。

具体的にCEOやCFOになって、やりたい事はあるのでしょうか?

出資先の発電事業会社の利益を最大化する事、その会社の従業員にイキイキと働いてもらえる環境を作る事は勿論ですが、当社にいかに事業経営のノウハウを引っ張ってくるかという点が派遣される身として重要だと考えています。

総合商社の人材は、基本的にSpecialistではなく、Generalistが多いです。
なので、最前線である現場に派遣されるような事があれば、現場のSpecialistから出来る限りのノウハウを吸収し、総合商社における発電事業ノウハウの蓄積に最大限貢献する事を目指さなければいけないと思っています。

いわゆる発電のビジネスというのは、もの凄いお金が動くわけですよね。

そうですね。一般職の時は、伝票を見てゼロが山のように連なっていても、自分の感覚はあまり無かったのですが、総合職に転換し、様々な周辺情報を自分で消化していく中で、100億、1000億の規模の違いが感覚でわかるようになってきました。
そういった感覚を得た事も、総合職に転換して感じている面白さの一つになります。

一案件の流れを教えてもらえますか。そもそも投資が、どこからどのように決まり、どうなった時にMakiさんは絡んでくるのでしょうか?

 

新しく投資の決断をする時は、様々なパターンがあります。まず、ある国の政府が「20xx年までに何メガワットの発電所を作りたい」という概要を発表して入札を実施し、総合商社が国内外のメーカーや金融機関と組んで応札するケースがあります。

あとは、証券会社から持ち込まれるケースもあり、その場合は既に稼働している発電所の株主が、何らかの理由で権利を手放したい事が多いです。

それ以外では、市場に根ざした関係者との人脈を通して、内密に案件が持ち込まれて、相対で交渉する事もあります。

当社内の組織は、買収や開発を手掛けるチームと当社が株式を取得した後、日々の発電所の経営を行うチームに分かれていて、私は後者のチームに所属しています。

買収を手掛ける開発チームは、現地の弁護士事務所、税理士法人、監査法人等のアドバイザーを起用して、その案件の事業性を見定め、契約に結びつけます。

私は、既に買収が完了している発電所の経営がメインの業務ですが、同じ市場で、2件目の発電所買収が計画されていて、開発チームが手掛けている場合には、担当している発電所の経営を通じて蓄積された市場ノウハウを開発チームに還元したり、両チームで常に情報交換は行うようにしています。

そして、買収が無事完了したら、今度は私のチームがメインでその案件に携わり現地に出張し、発電所の稼働状況を確認しながら、長期的に経営の最適化・最善化を図っていく事になります。

今はどのくらいのチームでやっているのでしょうか?

総合職は男性が6名、女性が私を含め2名で、一般職は女性が5名で合計13名です。

総合職と事務職の2,3名で一か所の発電所を担当し、総合職は、大体、2,3箇所の発電所の経営にあたっています。私自身は、現在、バーレーンとオーストラリアの発電所を担当しています。

仕事がつまらないと思ったことはありますか?

たぶん、ないかな。。(笑)
でも、「何で発電所絡みの部署なのだろう?」とは転換するまで常に思っていましたね(笑)。総合商社は多岐に渡るビジネスを展開していますので、食肉を輸入している部署もあれば、洋服を売っている部署もあります。そういった、生活に身近な商売の方がイメージしやすく、男社会のイメージがあった発電ビジネスの部署に配属された事の難しさを感じていた期間は長かったです。

以前、ゲストに来た商社の方が、一度、その事業部に配属になったら、退職まで異動することはまずないと仰っていたのですが、やはり同様ですか?

そうですね。余程の事がない限り、営業間の異動はないと思います。
配属された部署での経験値が高まれば高まるほど、その部署でこそ、過去の経験値が生かされますので、なかなか異動はありません。

もし入社時にコーポレイトに配属されると、そのままずっとコーポレイトで行く事になるのですか?

コーポレイトの場合は特殊で、コーポレイトから営業、営業からコーポレイトに異動するケースはあります。

総合商社という巨大組織で仕事をしていく以上、会社の成り立ちを知る事は、営業に身を置くものとしても大切ですので、コーポレイトと営業の交流は、意識的に会社が実施しています。

私は今、営業部門に所属していますが、会計の知識を強化したいと思い、コーポレイト部門である主計部や経理部に行きたいとキャリアプランに書いたこともあります。

ワークライフバランスという観点では如何でしょうか?

私は、出身大学や社内の一般職の方向けの研修に呼ばれて、女性のワークライフバランスについてお話させて頂く事が多いのですが、良く聞かれるのは、「結婚して、出産して、更に仕事もバリバリやる事は出来るの?」ということです。当社でも、結婚して、出産もして、仕事をしている人はたくさんいます。

勿論、総合職ではなく、一般職の方が多いですが、時間短縮勤務制度を使うと、通常より2時間早く帰宅できるので、私生活に重きを置く方はそういう制度を活用して、仕事との両立を図っています。

総合職ですと、責任も大きいので、自ら仕事の時間を制限する短縮勤務制度を取得している人はほとんどいませんが、20代後半から30代の総合職の女性達の中には、結婚して、女性側が海外に語学研修生や事業会社のトレーニーとして赴任し、別居婚という形で結婚生活をされている方も出てきています。

そういう風に、仕事もプライベートもやりたい事はすべて実現しようと気概を持って活躍している女性が近年非常に多くなっており、頼もしく感じています。

皆さんもそういった機会があれば、自分で可能性を制限せずに是非頑張ってほしいと思います。

総合商社の社内において、資格の価値はどうでしょうか?

資格は、自分の知識・やる気・実績をアピールするには有効な手段だと思います。
USCPAの勉強は大変でしたが、今、実際に会計に関わる仕事をしていて、実務の方がより難易度が高いと実感しています。現地の監査人と話すと、USCPAの勉強ではサラッとしか出てこなかったヘッジ会計などがバンバン出てきます。けれども、USCPAを持っているということで社内の方が聞きに来られたりして、わからない時は急いで調べています!ただそうやって周囲の方が頼りにして下さるのも、資格を取得したという実績がわかりやすいからだと思います。

中途採用が総合商社で増えてきているようですが、実際はどうなのでしょうか?

そうですね。かなり増えてきていますね。
私の同期総合職は入社当初100名くらいでしたが、中途で入社され、同期扱いの方が更に10名くらいいます。また、今の所属部署では、3人転職者がいまして、2人は金融機関から、3人目は電力会社から転職されてきた方です。

USCPAの知識を現在の業務でどの程度活かしていますか?

出資先の財務諸表を見るのが一番活かせている部分だと思います。
今の事業投資の仕事において、USCPAで勉強したほぼ全科目の知識を思い起こしながら、仕事をしています。また、BECで学んだ企業価値の算定は、まさに今実務でやっていることです。FAREで学んだ一つ一つのTransactionの仕分けも役に立っていますし、税法でも、暗記した米国の知識をベースに担当国との違いだけを確認しています。おそらく公会計以外・・(笑)は実務に役立っていると思います。
勿論、業界にもよると思いますが、今、勉強していることが無駄になることはないと思いますので、是非引き続き、頑張って下さい。

以上です。

USCPAの合格後に総合職へ転換を図られたわけですが、勿論、色々と苦労はあるとは思いますが、とても充実した仕事が出来ているんだろうな、というのがお話の表情からとても伝わって来ました。
将来のビジョンも明確に持たれていたので、今後もステップアップして、仕事をされていくのだと思います。
Makiさんの人柄が出たとても良い会でした。

Makiさん、有難うございました!

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