第65回 USCPA CMレポート
【Guest】 あだ名 いちさん USCPA
自己紹介
大学を卒業後、海外に行きたくて総合商社に入社。
配属は物資部で紙パルプの営業だった。
主に海外から輸入して、日本で営業をするという形だったが、商社の中では地味で一番弱い部署で、何年か待てば、部署移動や海外への移動も考えられたが、営業としてもそれほど面白みを感じられず、3年3ヶ月で退職。
マーケティングをやりたいと思いたい、医療機器の会社に転職を果たした。
この会社は、シェア的にも1or2位の商品が多く、マーケティングに強いという触れ込みで、マーケティング部を希望し、入社後、マーケティング部に配属されたものの、入社1日目で後悔。。。
理由としては、マーケティングを経験している人や勉強している人がいなく、叩き上げの人が幹部になっているような会社で泥臭かった。すぐに退職も考えたが、マーケティングを学ぶ為に仕事をしながら夜間大学院へ入学することを決意。勉強をしながら、仕事を続けた。
実際に働いてみると医療機器というのはマーケティングというのはあまり無い世界で、日本のメーカーは殆ど商品を作っていなくて、海外から輸入したものを売っていた。
仕事は楽でそこそこ良かったが、先を考えたときに余りメリットがないなと思い、退職を決意。
食品メーカーの海外部門に転職。消費材という事で具体的にマーケティングが出来ると思った。海外部門という事で輸入しているものを扱っていて、色々と企画を考えて面白みがあった。
マーケティングで頑張ろうと思っていたのと同時に海外部門なので、いずれ海外に行ければと思ったいたら、4年間働いた後に買収したペンシルバニアの会社に行けることに。海外では日本人が営業をするというのは余り考えられておらず、経理財務部門として行く事になった。
経理の仕事は最初、キャリアに厚みを持たせられるかなと思ったくらいで、ほとんど興味がなく、実際、行ってみると英語がよくわからない日本人が行っても入る余地がない感じで殆ど仕事が無かった。そこそこTOEICも高く、英語への自信はあったが、実際に行ってみるとネイティブの英語が全然分からない状態。。
1年くらい経ったときにこのままの状態でいてもヤバいなと思って、帰国する事も考えたが、色々と検討の結果、このまま会計にどっぷりはまる事にして、CPAの学習をする事を決意した。
が、勉強を開始してすぐに現地CFOの不適切会計が発覚。。。
その事件が発覚して、やはり帰国をしようとも考えたが、1年かけてこの処理を行なう事に。その間、勉強が止まったものの、1年後に勉強を再開し、1年で合格を果たした。
その後も現地で1年働いたが、昇給試験で日本に帰国した際に周りの話を聞き、帰国を決意。転職活動をした結果、2009年4月から元いた総合商社に戻った。今はストラクチャードファイナンス部で業務を行なっている。
Q&Aコーナー
- ゲスト
- 参加者
- 司会
元々海外で経理をやられていて、今と全然畑が違いますが、今の仕事に関してはどのように学ばれましたか?
今は、業務の中で事業投資の比率って少ないんですよね。何が多いかというと商社なのでプラントを輸出するんです。プラントを作るところって新興国が多くて、お金がない場合がほとんどなので、そこにお金を付けてあげて、付けたお金でプラント代金を回収するっていうのが多くて、制度金融と呼ばれる国際協力銀行等からのお金をプロジェクトにつけてあげて、そこからお金を回収するわけです。
なので、実は会計とは全く関係ない事をしていて、何から学んだかって、本当に仕事で、実務でしか学んでいないですね。仕事をやっていて思ったのは、知識があっても実務が無いとなかなか付いてこないんですね。
うちの会社にも他に何人かUSCPAに合格している人がいますが、実際にアメリカで使っている人っていなくて、机上の空論にはなるんですが、具体的に仕事で会社がうまく行かなかったりすると「こういうものが問題になっているけど、どうなんだろう?」と言ったときに、他の人は「会計上はこういった処理ですよね」という状況を説明する事しか出来なくて、「じゃあ、こうしましょう」とか実際のところは、実務をやっていないとなかなか分からなくなて、今やっているファイナンスも実務をやっていれば、あまり資格は関係ないかなと思ったりします。
ただ仕事をして行く上で、きっかけとして、「USCPA持ってます」と言うと国内でも幅が広がりますし、海外に行ったときに現地の会計事務所の人と話をするときに「USCPA」と書いてあるだけで話を聞いてくれるようになりますよね。説得力が増して、様々な問題も切り抜けられるわけです。
今の投資先としてはどこですか?
前職で海外に行かれて、最初は全然ネイティブの英語に付いて行けなかったという事でしたが、現地で働いているうちに解消されていったんですか?
最初は全然ダメでしたね。普通にしてたらダメだったと思います。アメリカ人に「お前は何を言っているかわからない」とはっきりと言われるし、自分がいなくても会社は回って行くんですよね。
でも、逆を考えたら、それは当然ですよね。自分の部署に外国人が来て、全く日本語が話せなかったら、同じようになるんじゃないかと思います。
また特にペンシルバニアって保守的なところなので、日本人の事を馬鹿にしているんですよね。英語も出来ない、会計の知識もない、経験も無いという状況では完全に無視される状況でした。
それで、聞くのは結構早く慣れたんですが、発音は本当に大変で。勉強して、苦労して、車の中とかで聞いたり、発音の練習をしたり、家の中ではウォークマンで聞いたりして勉強しましたね。
そもそも、どうして海外へ行く事になったんですか?
仕事を振ってくるのは誰ですか?
はじめは日本人の社長も経理データが出て来ても知識がなくてわからないので、それを調べるのが最初の仕事でした。
売上げが上がってます、原価が下がってますってレポートが上がって来てもわからなくて、アメリカ人が説明をするんですけど、英語でいっきにまくし立てて説明するのでわからないので、「お前調べろ」と社長に言われて、そのサポートをするって感じでした。
その社長のサポートが大きかったので、英語に触れる機会は半々くらいで、日本で働いているのとあまり変わりませんでした。
USCPA勉強されて実務との親和性はどうでしたか?
そういった経験を積んだあとは単語とかかなり覚えて来て、聞きやすくなって来たとかありましたか?
言葉の専門用語も合って来て、そうすると向こうも聞いてくれるし、言ってる事もまともだし。CPAの知識が付いて来て、現地のアメリカ人とも対等に普通の仕事ができるようになりましたね。
いちさんの人生においてアメリカでの経験というのは行って良かったと思いますか?
正直、当時は失敗したなと思ったし、結局、今は同じ会社に戻ってきているので、「辞めなきゃ良かったんじゃないか」という話もあるんですが(笑)、転職せずにずっと同じ会社にいたら、会計に興味を持つこともなかったと思うんですよね。
なので、振り返ってみれば結果オーライって感じですね。
入社した時の同期もたくさんいるんですが、彼らはずっと同じ仕事をやっているので、そういった意味でいい経験が出来たと思います。
私は31歳で転職をしたんですが、海外に行きたいと思って、海外へ直接行って仕事を探そうかと思ったり、MBAに行きたいと思ったりしたんですが、大学院の先生と話した時に「人生は長いんだから、そんなに焦らずにもうちょっと色々と考えてみたらどうか」って言われたんですね。
よく転職は何歳までとかありますけど、何回か転職した中で感じたんですが、年齢って関係ないですよね。実際、行ってみるとそういう仕切りってそんなに高くなくて、転職の時に凄くやりたいことがあるという強い思いがあれば、行けると思うんです。
マーケティングを勉強している中で、また先生に言われたのが「自分のポジショニングを考えなさい」と言われて、もしも自分が営業の中で埋もれてしまうということであれば、自分が何が強いのか、英語なのか、会計なのか、ITなのか、3つくらい自分が何かこれはできますというのがあれば、どうにかなるだろうって。
転職するときは良い会社に行けるかもしれないけど、転職先を辞めることも考えて、転職しなさいと言われたのが良かったですね。
合格まで1年くらいだったとおっしゃっていましたが、どのように勉強をされたんですか?
私は海外にいるときに勉強をしていて、ニューハンプシャー州で出願したのですが、単位を取ったり、学歴評価で結構、NTS(受験票)を受け取るまで時間がかかりました。本当に短期集中でないと続かないと思ったので、NTSを受け取ってからは半年で全科目合格しましたね。
勉強方法として決めたのは、最初はあまり理解せずにひたすらMCの問題と答えを暗記しようと思ったんですね。英文なので、いちいち理解しようとはせずにほぼ暗記に近いようにして、そうしているうちにこれとこれが繋がっているなとわかってきましたね。
試験を受けているときに思ったのは、「やらないことを決める」って事で、本を読んだり、映画を見たり、ということをせずに短期集中が良いと思いますね。
勉強を始めた時のCPA試験の専門用語だったり、会計英語とかの言葉の壁ってありましたか?
単語はある程度、調べますけど、文を全部調べて日本語に訳していたら、めちゃくちゃ時間がかかるので、こう書いてあったら、こういう答えだっていう風に丸暗記をしちゃいました。
文を全部覚える必要はないんですけど、日本語に直さずに、問題の文章って同じような事を聞かれるので、こうやって書いてあったら、こういう答えだって覚えちゃいましたね。
本当は理論的な背景をきちんと理解してっていうほうが良いんでしょうけど、それをやっていたら、終わらないと思って。どんどん忘れちゃいますし、これだけある問題をどれだけ短いスパンで繰り返すかってことを考えてやりましたね。結構、理論的なことって、暗記してからわかるってことがありましたので、やっぱりMCは解いてナンボって感じです。
アビタスの教材だけで合格をしましたか?
はい、そうですね。アメリカにいたので他にも洋書の教材とか色々とあったんですが、ちょっと見てみても、結局書いてあることって同じだったんですよ。
なので、他にやる必要はなくて、テキストとMCだけで十分合格できましたし、合格出来ると思います。
投資の仕事をされていて、最先端で色々と見ている方というのは、20年後のスパンとかで日本はどうなっていると思いますか?
日本は新規投資ってほとんど案件としてはなくて、今は太陽光発電とか原子力に代わるRenewable Energyと呼ばれるような東北での案件くらいしかなくて、会社としてもほぼすべて東南アジアとか南米とかアフリカとかに力を入れているんですね。なので、今はもうそういうところでしか、ある程度お金をもらえて働けるところってないと思うんですね。
前の会社とかでも、やはり国内でやっている限りだと横ばいの状態なので、海外で仕事が出来るスキルを身につけるっていうのはマストだと思いますね。総合商社って昔のトレードと言ったものは今はほとんどなく、新事業もなくて、だいたいの場合、投資してそこで作ったものを売るという形で、資本が入って会社を立ち上げてという形になっているので、そういった意味でも今後、総合商社の仕事はどんどん広がっていくと思いますし、特にアセット、ファイナンスの経験がある方とかITの知識がある方はまだまだ重宝されていくと思いますね。
大手の総合商社も人をたくさん採用しているみたいです。大手総合商社は、どんどん収入が入ってきて、自己資本も厚いので、今、投資能力があるんですよね。海外の仕事をどんどん作るし、重要なところであれば、日本人を送り込みたいんですよね。そこにCPAが分かる人がいれば、会社としては安心だし、そういった需要があって、凄く募集が多いですよね。
海外のお金っていうのはプロジェクトごとに邦銀から出してもらうんですか?
海外は邦銀もありますけど、現地で借りるってこともありますね。うちが投資する場合には、多いのは最近、IPP(Independent Power Producer)と言われるもので、新興国というのは電気がないんですね。
そこに民間がお金を入れて、発電所を作って、国に売るっていう投資形態が凄く多くて、よく最近、プロジェクトファイナンスと言って、会社の与信で借りるのではなくて、そのプロジェクトから出てくる収入でお金を返すっていうのも多いんです。そうすると邦銀も多いですけど、外銀も多くなってきますね。
でも今は、ギリシャの問題もあって、ほとんど欧州の銀行からはお金が出てこないので、世界市場でも日本の邦銀って存在感が強くなってきてます。
いちさんの今後の展望はどんな感じですか?
やっぱり会計をもう一度やりたいなと思っているので、内部で会計に動くか、海外の事業会社がいくつかあるので、事業会社で働くか、もしかしたら、他に転職ってこともあるかもしれませんが、今のところ仕事の内容とか人にも満足しているので、海外勤務の希望を出しているところですね。欧米先進国を希望しているんですけど、なかなか少ないんです。
それと、会計で生きようと思った中で、それだけじゃまずいなと思って、管理会計士の資格でCMA(Certified Management Accountant:公認管理会計士)というのを取ったんですね。コスト・アカウンティングに強いとメーカーに行っても、原価計算ってメーカーでは重要なので、そういった資格を取ったり、経験を積むのっていうのは、メーカーで働くのであればポイントかなと思いますね。
USCPA資格を取得後の転職先としては、具体的にはやっぱり総合商社って良いですかね?
そういった会社の経理とか、USCPAを活かせる部署を希望して、海外へ行けるもんなのでしょうか?
経理未経験であってもそういった案件に申込んでも大丈夫ですかね。
勿論、経験を積むっていうのは良いとは思うんですが、入っていきなりハイレベルのことをやれって言われても絶対に1年くらいやれば追いつきますから。
よくエージェントに行くと2年くらいどこかで経験を積んでからと言われますけど、それを真に受けても何年もかかっちゃいますから、CPAを取得してポテンシャルをきちんと示して行けば大丈夫だと思います。わざわざCPAを取得した後に下積みっていうのは無いですよ。頑張って下さい。
以上です。
参加者の皆さんは、海外志向が強く、「いつ頃海外に行きたいと思っているか」という熱い話で盛り上がっていました。
同じ方向へ向かって頑張っている人たちと同じ時間を共有できるのもこのミーティングの良さだと実感した次第です。
ゲストのいちさん、有難うございました!!