第42回MTGレポート
11月29日(土) 12:00~14:00
【Keyword】 米国Big4勤務経験者 外資高級ブランド経理
【ゲスト】あだ名 コーさん 35歳 CPA, MPA
まずはゲストの自己紹介
理系で大学を卒業したが、文系に転身したかったのもありアメリカに留学。
NYの大学に通い文系(国際関係)に転身した。大学在学中に大学院への進学準備をし、後にコーネル大学の行政学修士(MPA)コースに入学。
卒業後はNYのBig4に入所し監査業務を行った。リーマン・ショックの影響をダイレクトに受け、2008年に帰国。帰国後は欧州系ラグジュアリーブランドの経理の仕事を行なっている。
以下、Q&A
まず、大学院留学について質問です。MBAではなくてMPAを選択した理由は何ですか?
奨学金が理由です。MBAやLawやMedicalは奨学金が出るところが殆どありません。一方MPAは奨学金が出るところがあるので選びました。MPAと言っても、勉強する内容は自由選択なのでMBAとほぼ同じような勉強ができます。自分はFinanceを専攻していました。
奨学金はどれくらい出るんですか?
私の場合は授業料の半分くらい奨学金が出ました。
それはお得ですね。ちなみに入学についてですが、MBAよりも需要が少ない分、入るハードルも低めだったりしますか? MBAだと有名大学には行けなくても、MPAだとコーネルに入れる!みたいな。
あると思います。そういう意味では狙い目です。ただ、大学によってはコースを自由に選択できなかったり、本当に政府関係の仕事をする人のみ入学させるようなところもあるので、注意が必要です。
MPAの認知度についてですが、Big4に入所する際、コーネルのMPAは評価してもらえていましたか?
はい。ちゃんと認知されていて、それで入所できたと思います。
MBA留学を考えているのですが、投資に見合うリターンはあると思いますか?
MBAで投資回収できるのは良い時代の投資銀行やコンサルファームに入った人達くらいで、他では殆ど回収できません。ROIは相当低いと思います。でも留学はROI以外にも意義がありますし、一度しかない人生ですから行きたければ目指すのがいいと思います。
大学院時代の人脈は貴重だと思いますか?
はい。今はFacebookで繋がれるし、ちゃんと連絡を取ってメンテナンスすれば人間関係を維持できます。まだダイレクトに仕事に繋がることはありませんが、何でも話せる仲間が世界にいるというのは素晴らしい事だと思います。
アメリカに行った時、最初は英語で苦労しましたか?
はい。苦労しました。NYだったのでみんな早口で、最初は全然聞き取れませんでした。話について行けずに黙っていると、「君はどうして黙っているんだ?」などと言われることも多々ありました。まずはヒアリング力を鍛えるために、テレビをひたすら見ていました。聞きとることさえできれば、あとは基礎知識があればなんとかなります。
友達はどこの国の人が多かったですか?
最初は韓国人など同じアジア人の友達が多かったです。そのうち慣れてきたらヨーロッパ人の友達も増えました。ヨーロッパ人はアメリカ人よりも繊細なところがあって、仲良くなれば結構分かり合える仲になりました。
大学の後すぐに大学院に進学しようと思った理由は何ですか?
もう少しアメリカにいて、勉強している生活を続けたいと思ったからです。
会計の世界を目指したキッカケは何ですか?
これもアメリカにいたいというのが理由でした。アメリカで日本人が就職しやすいのは会計事務所(Big4)だと思ったので、会計の勉強をしました。アメリカでBig4に入る日本人は、会計をやりたいというよりもアメリカに残りたいからという人の方が多い気がします。
アメリカでの仕事は、スピード感があって大変そうなイメージがありますが、どうでしたか?
はい。大変でした。『この1時間で何ができたのか?』をたえず求められる環境で、プレッシャーがありました。でも、その時身につけたノウハウや習慣が今活きていて、なるべく仕事を効率的にこなして、短時間で多くの成果を出せるように工夫しています。
アメリカは従業員に対してドライというイメージがありますが、どうですか?
ドライだと思います。リーマンの時、私は同じビルで働いていたんですが、凄い勢いでリーマンの人達が解雇されていきました。『今回はこの階』みたいな感じで、ビルのフロア毎に解雇されていって、かなりドラスティックでした。
アメリカのBig4の人達の特徴は何かありますか?
ずっと監査をやり続けようと思っている人が少ないのが特徴だと思います。多くの人は2年~3年で辞めて行って、事業会社などに移って行きます。最初からBig4での業務は修行的な意義や、Resumeにはくを付ける意味合いで入る人が多いように感じます。
ずっと監査をやっていて、ある程度の歳になった人はアメリカではどうするんですか?
30代半ばまでずっと監査しかやった事がないと、転職はなかなか苦労すると思います。
Big4以外にアメリカで働く場所はどんなところがありますか?
日本企業の現地採用社員という選択肢もあります。でもこれは駐在員と違って給与等の条件が非常に悪いし、上のポジションは日本から駐在員が来てしまうのでプロモーションも殆ど無いという、結構厳しい環境です。
今はヨーロッパの会社にお勤めですが、アメリカとヨーロッパで仕事のやり方に違いはありますか?
はい。あります。今の会社はアメリカよりもドライじゃない部分もありますし、職人気質で商売が下手だなぁと思う部分もあります。考え方そのものが違う感じがします。
監査の仕事と今の仕事の大きな違いは何ですか?
監査は人が作った財務諸表に色々と意見を言う仕事ですが、これができるからといって財務諸表を作ることができるわけではありません。実際に経理の仕事をやると監査とは全く違うノウハウが必要になるので、事業会社で経理のキャリアを積んでいくなら早くスタートした方がいいと思います。
今の会社の日本法人のシェアはどれくらいですか?
約15%です。日本はあまり大きくありません。日本は既に各ブランドがプレゼンスを確立しきっているので、ここで売上を上げるのはとても難しいです。一方台湾やオーストラリアはまだ多くのブランドが進出しきっていない時に出ていったらしく、この2国ではかなり強いようです。
ラグジュアリーブランドにとって、日本市場はどういう立ち位置ですか?
なかなか難しいポジショニングになっています。どのブランドもダウンサイジングしています。人員も削られるので、残った人の負担が増えて結構大変です。一方、日本市場をテストマーケットと見ているブランドもあって『日本でこういう売れ方をする商品は中国でも売れる』というような見方もあるそうです。
仕事のやりがいはどんなところですか?
今の会社の日本の組織はさほど大きくないので、自分で何でもやらないといけません。時には人事的な仕事にも手を出すことがあります。Big4で監査をしていた時は、歯車感がありましたが、今は自分の職責が大きい分やり甲斐も感じます。大きな組織で小さな職責か、小さな組織で大きな職責か、自分にとって合う方を選んでいくといいと思います。
今の会社に入って、成長したなと思う能力は何ですか?
Big4の時は全てのインフラやナレッジが揃った環境で、いかに効率的に業務を進めるかという感じでしたが、実際のビジネスは全然違うんだというのがわかったのが大きいです。実際のビジネスでは、インフラが完全に整っていることの方がまれで、色々な制約があります。お金が無いとか人やシステムが足りないとか、みな色々な制約の中で運営していっています。今の仕事をしていて、そういった様々な制約の中でもなんとか工夫して成果を出すノウハウが磨かれたと思います。
今後についてはどう考えていますか?
今のような小さな組織で大きな職責を担う方が、自分のスキルアップになっていると思いますが、仕事は縁なので今後についてはわかりません。縁があるところがあればそこでまた新たな能力をつけていきたいと思います。
その他、アメリカのBig4時代のお話や大学院留学の事など、色々お話して頂きました。
ゲストのコーさん、ありがとうございました。
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