銀行マンは、半澤直樹のような仕事だけじゃない世界です。


第92回 USCPA CMレポート

2013年7月27日(土)

【Guest】 Yoshiさん
USCPA(米国公認会計士)とCIA(公認内部監査人)をお持ちです。

ゲスト紹介

kokai

大学卒業後、メガバンクに就職。

最初は支店で中小企業向けの法人営業に従事した後、2年ほどで国土交通省の航空局へ出向。

現在は銀行に復帰し、主に空港・道路・上下水道などインフラに関する官民連携(PPP/PFI)やファイナンスの調査に従事。 中央官庁・民間事業者から学識者まで働きかけながら、インフラ市場の拡大に向けた活動を行なっている。

USCPAの学習は入社2年目から開始。 将来的には海外に行きたいと思っていたのと専門知識が欲しいと考えた。それと転職は考えていなかったが、行内でのキャリアアップの為というのもあり、取得を決意した。

学習を開始して一年程で官庁への発令(国土交通省の航空局へ出向)が出た。一週間後に受験する予定があって、着任早々、休みを取ってサンディエゴで2科目受験し、いずれも合格。

その後、官庁での仕事が忙しく、毎日、2-3時まで仕事が続き、勉強の仕方を切り替えて、土日のみにし、残り2科目は1科目ずつ受験し、いずれも一発合格した。

USCPAを持ってる人に聞いてみた

  • ゲスト
  • 参加者
  • 司会

出向していた時、夜遅くまで仕事をされていたということでしたが、それは毎日だったんですか?

ほぼ毎日ですね。特に国会が空いている時が凄くて、次の日の国会の質問が前日に飛んでくるんですが、答弁は官僚が全て書いて、大臣にレクチャーするんですね。 そうした質問が早ければ昼の2時とか3時に来るんですが、遅いと夜の10時とかに来るんです。

館内放送で、「質問がまだ終わっていないので、何課と何課は待機でお願いします」という具合ですね。 待っていると連絡室から質問が来て、それを様々な担当者に振り分けて書いていきます。

書くのは30分や1時間もあれば書けるんですが、書いた後に今度は予算に絡む場合は財務省に「この答弁で出しても良いか」というお伺いを立てる必要があって、これでまた1時間かかって、そこから課長に上げて、部長に上げて、局長、秘書官、大臣という順に上げて行って、その間も詰まっているんです。色々な答弁があるので。

そんなことしていると2時とか3時になっちゃうんですよ。 次の日は大臣に朝の8時からレクチャーしないとならなくて、7時までには居る必要があるのでもう帰れないですよね。 そんな生活だったので、勉強なんて出来なかったです。その代わり土日は勉強ばかりしていました。

今、聞いてきた話ですと、会計の知識がゼロという方だと難しいのかなと感じたのですが。

全くないと無理ですね。 

ただCPAを取得する必要があるかというとそこまでではないかなと思います。

どちらかと言うと新しい会計制度を作って行く事になるので、既存の知識は要りますが、会計士が出したアイデアを見て、BS・PL・CSにどのようなモデルに影響を与えるのか、ファイナンスがつきやすくなるのか、というところを考える必要が出てきます。

今現在の仕事の普段の流れはどんな感じですか?何名かのチームでやっているのでしょうか?

ひとりでやっていますね。調査というのは一人一案件で、突き詰めていかないといけないのでチームワークでやっていく感じじゃないです。

その代わり他の会社など外のネットワークが膨大に出来てきます。

いわゆる普通の銀行員とは違うので、調査と言って何処に行っても良いんですね。 色々なところに行って、ディスカッションをしています。そういったのをかき集めて、企画を考えています。

業界が狭いので、色々な方と面識があるということですが、そうした方たちの年齢層はどのくらいなのでしょうか?

30歳から50歳くらいまで色々ですね。私が今30歳で一番若いくらいです。 パブリックなセクターはこの道、10年とか20年みたいな人がゴロゴロいる世界で、普通の業界と全然違うんですよね。

政治家も官僚も全部に顔が繋がっているみたいな人がいて、そういう人が仕事を取ってきて、若手にやらせていくわけですね。私も情報を貰うためにその人に会いに行ったりするんです。 だいたい官庁の調査ものをやるのは監査法人とか監査法人系のFASと呼ばれているところとか、あと総研系ですね。

非常に狭い業界だと思います。 私は銀行という立場で調査マンですけども半分は総研的な仕事にも首を突っ込んでいるので、そういった人たちと「ここは一緒にやりましょう」とか別の案件ではライバルになったりしながら狭い世界で仕事をしています。

調査書を書くにあたっては勉強した知識が役に立ったりしますか?

直接役に立っているかと聞かれると詰まってしまう部分はありますね。ただ会計士さんが書いてくるデューデリとかの話やプロセスに関しては、「あぁ、これは勉強したな」と思い出すことがありますし、会計士さんと話をしやすくはなりますね。

入社されて2年目から勉強を開始されたということですが、入社した時くらいから頭にあったのですか?

たしか入社してからですね。銀行の営業というのはマニュアルなので、それに従ってやっていくだけみたいなところがあって、支店の営業というのは特にそうなんですけど、このままやっていてもバリューが上がらないなと思って、銀行って物凄く組織が大きいので、行きたい部署に行きたいとか思っても、余程目立ったことをしないと人事も行かせてくれないんです。

証券アナリストくらいだと皆持っているので、ちょっと大変なもので、社会人でも取れるものと考えて。USCPAの良いところは75点取れば合格できるという目標がはっきりしているところと英語の勉強にもなるなと思ったんですね。

他に考えた資格は無かったのですか?

その時は無かったですね。

今後は取ろうと思っている資格はありますか?

留学したいとは考えています。MBAですね。行内選抜があるのですが、かなり狭い門なんです。 人事政策上、行かせたい人を行かせる形という感じなので、そこに漏れたら、自費で行こうとは思っています。そうなると辞めないといけませんが、USCPAを持っていると多少は目立つかな、と思うので何とかなると良いな、と思っています。

それと私は経済学部だったのですが、法律系の知識が足りなく感じる事があるので、何か法律系の資格を勉強したいなとは考えていますね。制度を作る時に法制的にどうなのか、という事が出てくるので、民法とか商法とかの体系くらいはもうちょっと勉強しておけば良かったなと思っています。

会計と法律と税制というのは新しい商品を作る時には絶対セットになるので、そうした知識は全てあったほうがよいと思うんですね。会計だけだと足りないです。 税制は特に面倒ですし、キャッシュ・フローに直接関わってきてしまうので、お客さんも一番気にしますから、そうした知識があると良いなと思っています。

今現在、そういう知識が必要になった場合にはどうされているのですか?

日々、必要になった知識は本を読んで付け加えて行くしか無いんですね。資格として勉強出来ればわかりやすくて良いな、とは思うんですけども、体系的になっている資格って無いんですよね。税であれば、税理士の資格はありますが、ちょっとハードすぎるというのもありますし、それであれば、日本の会計士にしておけば良かったって話になりますからね(笑) 法律ってピンとくるものがないんですね。

仕事しながら勉強をするという意味で。 そうすると大学院に行って勉強するのが早いなと思いますね。

行内で目立ったキャリアという話がありましたが、行内でUSCPAを持っている人がどの程度いるのかのと、どの程度の評価を受けるのでしょうか?

何万人といる会社なので、流石にどのくらいいるのかはわからないのですが、それなりの評価は受けますよね。やはり多いのは主計部とか財務企画部とかです。 それと米国上場もしていたので、上場するときには米国会計基準を知っているというところで集められたと聞いていますし、今は萎んでしまっていますが、IFRS対策の時には重宝されたみたいです。

私も財務企画部は一度、興味ないかと人事に聞かれたのですが断りました(笑)

会社側で取得しろという奨励がされているわけではないのですか?

無いですね。一応、取った後、お祝い金が出ましたけど。 今は福利厚生的なものはだいぶ減りましたね。自己啓発みたいなところについては手厚かったりします。

将来的には海外へという話がありましたが、それはMBAでということなのか、それとも行内の駐在でという事なのでしょうか?

MBAを取った上で、行きたいなと思っています。私は今、インフラとファイナンスという観点でやっているのですが、日本というのはある意味では後進国なんです。

料金はそれほど取れないんだけど、社会的には他にもたくさんある、例えば上下水道とか一般道路とか、日本だと、JRさんとかNEXCOさんとかはああいった形で民営化されていますが、海外だと民間委託しているケースがもっとたくさんあるんですね。

失敗もたくさんあるんですけども。 財政的に非常に苦しくなったオーストラリアとかイギリスとかが行なっているんですが、国のお金では整備できないし、維持が出来ないという時に丸投げして、民間にやらせるんですね。 そういうところでノウハウを積んだプレイヤーが今、アジアとか南米とかの途上国のまさにインフラを作っているところにノウハウもあるし、お金もあるということでどんどんビジネスを取って行っているんです。

日本ではある意味、官製事業として囲い込まれてきたところがあるので、やっぱりプレイヤーが育っていないんですね。よく言われるのは、商社はアレンジをしますと、ゼネコンは建設会社だし、建工さんは設計はしますという形で全てバラバラで、うちに任せてくれれば全てやりますというところがないんですね。

そうすると中国とか韓国がそういうことを言ってきたり、欧米系が言ってくると負けるんです。 ただ今後は日本でもそういうインフラの民間ビジネスが開放されてきて、今は手探りでノウハウも無いんですけども、そういう形が出来てくれば、そういったインフラのノウハウを海外に輸出していくことも考えられますし、逆に海外で取って行ったものを国内に輸入していくということも考えられるので、双方向でビジネスが出来てくると思うんですね。

日本のインフラが本格的なビジネスになってくるのはたぶん5年後くらいになってくると思うので、その間に留学して海外に行って、外で仕事をして、戻ってきて国内で還元すれば、日本のために仕事をしたとなるんじゃないかと、そういったキャリアが描けたら良いなと思います。

そうした時に海外に行くと米国会計基準をわかっていると多少は仕事にも活きてくると思うので、中長期的に取っておいて意味があるのかなと思いますね。

英語力という意味では学習スタート時点ではどの程度あったのですか?

リーディングとヒアリングについてはTOEICはやっていたので、あまり支障は無かったという感じだと思います。 大学受験のような英文読解ではないので、そんなに難しいという感じではなかったですね。 会計の専門用語さえ覚えれば何とかなると思いました。

業種にもよると思いますが、USCPAを取得した後、合格者の皆さんはどの程度、業務の中で英語を使われているのでしょうか?

私は今、読み物は多いですね。最近、日本のインフラに投資したいという海外からのお話も増えてきたので、たまに電話会議などで話したりはしますね。 よく監査法人の方とも仕事をしていますが、マーケットがどんどん小さくなってきているので、どこも国内だけでは厳しいんですよね。

そうすると海外の案件となって、英語を使う機会も増えますし、海外から投資したいという人も増えて、アベノミクスで関心も高まっていて、日本の直接投資を増やしていく方向性なのだとも思いますので、国内にいても仕事をしていく機会が増えていくんじゃないかと思います。

そういった調査ビジネスみたいなものが、会社にとってどの程度のリターンがあるのでしょうか。

難しいですよね。制度を作ることによって生まれてくるビジネスっていうのがやっぱりあるんですね。 自分たちのところだけというのは難しいんですが、案件を主導的に立ち回ることによって、一番至近な例で言うと官民ファンドとしてできた産業革新機構みたいなところに社長級の人を送り込めるとかですかね。

今の仕事は人事的には、何を持って評価されているのでしょうか?

何でしょうね、よくわからないです(笑) 人事と話しても、向こうもよくわかっていない感じですね。 こないだ学者と一緒に論文を書きましたって言っても、銀行的にはどうでもよい話なんですよね。だから評価されているのかと言うとよくわからないんですが、こういう事をやっている人間は必要なんだと人事は思ってくれているんだと思います(笑)

他のメガバンクでは、そう言ったビジネスへの度合いが違ったりするんでしょうか?

だいぶ違いますね。うちはパブリックでの仕事が柱のひとつになっているんですね。今はまだマーケットを作っている段階なので、普通の銀行や証券ビジネスですと他の会社には負けるな、というのが常にあるわけですども、今はうまくやっていこうよという場面が生まれるんです。

マーケットや制度を作っていく段階なので、ここは一緒にやろうとか、協調する場面が出てくるんですね。 そういうのが面白いですね。多少大きな志で一緒に仕事が出来るというのが良いですね。

銀行から中央官庁に出向される方は多いんですか?

多いですね。うちは一際多いんですが。。。 各省庁にほぼ出していますね。

任期付きですか?

2年ですね。 一度、退職して行く場合もありますが、それはまちまちで私は出向だったので、給与も半々で貰うんです。 監査法人からも来ていますよね。面白いのは出向する、と必ず出向した同士で仲良くなるんです(笑) 役所というのは一割くらい出向者なので、そういう人たちと飲みに行ったりしても利害関係が無いので良いんですね。

本当に友達になれるんですよ。 そういう人たちから別の業界の話を聞けるのも楽しいですしね。

公共性の高い案件を作るという意味ではJICAとかに共通する部分があるのかと思うのですが、そういったところでの仕事には興味がありますか?

あまり思い浮かばないんですよね。 儲ける為に仕事をしていないように見えるというのがあると思いますね。民間のビジネスにして行きたいんですよ。

MBAに行きたいという話がありましたが、そういう選択肢を考えなかった場合というのは、今の職場で今後、どういったキャリアが考えられるのですか?同じ部署の方はどうされているのでしょうか?

そうですね。。。調査マンとして銀行の中で生きていくケースが多いと思います。 そういった意味ではややアカデミックなフィールドに近い部分もあるので、大学の先生になる方もいらっしゃいますし、外に出て自分でビジネスを立ち上げる方もいますし、会社の看板で仕事をしていると言うよりも自分一人で仕事をしているという方が強いので、割りと出て行っちゃう方が多いと思います。

逆に外からくるケースというのは無いのですか?

それがいないんですよね。外から引っ張ってくるのも面白いと思うんですが。。 人が足りないですしね。 狭い世界なので、いわゆるコンサル業界とかはグルグルと人が回っている印象ですよね。

今の仕事の一番の魅力はどこにありますか?

多少、お国の為にというところがありますし、民間ビジネスに流れている、滞留しているようなお金が流れ出る経路にもなって、国民一般の利益にもなっていくんですよね。技術的なイノベーションは全くわからないんですが、インフラを民間の発想で変えていくというのもイノベーションのひとつだと思っているんで。

この先、一生やっていくかどうかわからないですし、30年、40年やっていくと色んな波があると思うんですが、いまは非常に関心がありますね。


以上です。

ゲストのYoshiさんはこの先のキャリアを明確に持っていらっしゃり、たびたび「この国の為に」という事を仰っていたのが印象的でした。

話も知らないことだらけで全く新しい世界に触れられたミーティングでした。 ゲストのYoshiさん、有難うございました!

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