第104回 USCPA CMレポート
実施日: 2014年3月15日(土)
【Guest】 Ryuさん USCPA
ゲスト紹介
大学卒業後、自営業及び広告代理店で営業を経験した後、32歳でUSCPA取得を目指し、勉強を開始。
1年の浪人を経て合格。 合格後、Big4税理士法人にて移転価格税制コンサルタントに転職。
1年半ほどの勤務を経て、現在、介護施設運営事業会社にて経理財務の責任者として従事されている。
ゲストのRyuさんに質問
- ゲスト
- 参加者
- 司会
移転価格税制の仕事というのはどういった事をするのでしょうか?
例えば日本で作ったノウハウを安く海外の子会社に売ってしまうと、、第3者の会社に売れば100万円で売れるものを子会社だからと言って50万円で売りました、となると売上げって下がりますよね。
そうすると税務署が入ってくるんですね。 もっと適正な価格で売って、日本に税金を納めるべきなんじゃないですか、となるので税務署が来た時に「適正な市場価格で売っているんです」とかあるいは「こういう事情があるから、この価格で売っているんです」ということが言えるように日本の本社もしくは子会社と連携して文書を作っておくんですね。
移転価格文書と言うんですが、これは「こういう理由があるから、この価格なんだと、だから適正なんだ」というのを事前に作っておいて、税務署が調査しに来たときにパッとすぐに書類を出せるようにしておくんです。
移転価格自体を設定しておくのをアドバイスするのが仕事になります。
お客さんのところに常駐するのでしょうか?
聞かないとならない情報はあるのですが、常駐するほどどっぷりというわけでもないので、自分の事務所で文書を作る、調べる、という事をやり、A社、B社、C社と回っていくわけですね。
月に一回、定期的に訪問するという感じが多かったです。
仕事の時に関わる人というのは、クライアント先の経理、税務の方と、、国税庁の方と話す機会もあるのですか?
海外部門は役員が統括しているという事もあるので、その場合には海外部門の役員が出てきて、「移転価格って何ですか?それで税金を持っていかれるなんて納得がいかない」っていうところから始まって、「移転価格とはこういうもので、追徴課税で何百億と持って行かれている会社もあるんですよ」という話から始めたりします。
この数年でも大きな会社が新聞に載ったりしましたが、それらの会社と同じ業界の人はやはり危機意識が高いので、そういうところは経理の人、税務の人とマンツーマンで今の情報を仕入れて、文書を作るという感じでスムーズに仕事が始まる事が多いですね。
なので、会社の規模にもよるかもしれないですけどね。 それと国税局の方は調査の時が多いです。 クライアント先に調査が入るとこちらに連絡が入るので、我々が行くわけですけども、調査に立会う場合もありますし、調査前に対策を立ててあとはお任せすると言う場合もあります。
国税の調査に入れるのは、基本的に税理士さんなんですね。 なので、USCPAの人が入るということはあまりないです。会計士で税理士を持っている人ならば、入るでしょうけども、USCPAだと事前の打ち合わせに入るということになると思います。
あとは先に移転価格文書を作って、国税庁に出しに行く場合もあります。
例えば、海外との取引がある会社が調査に入られる前に、適切な価格で取引を行っていることを自分たちから先に申請に行く場合があるんです。
その時にはコンサルティング会社が作った文書を会社さんの名前で先に国税庁に提出しておいて、事前審査というのを通しておいて、5年間はこの価格でやっていくことを事前に申請する場合があります。
この場合には直接、国税庁に行ってプレゼンをします。
海外とのやり取りみたいなところは、海外の子会社に安く売って、向こうの税金が違ってくるという場合の対応というのもやっているのでしょうか?
逆に日本から不当に高く仕入れられているんじゃないかという場合には、向こうの国税が調査に入るので、現地法人の人から問い合わせがあって、どうしたら良いんだって本社に話があるんです。
その時にその部品の価格がどうだったかとか、ノウハウを売った時、それを伝える為に現地へ行った社員の出張費がどうだったのかとか、そういった価格の洗い出しが始まります。
直接、海外とやり取りをするというよりも、海外の子会社から日本の本社に連絡が行って、そこから税理士法人に話が来るという感じですか?
その場合は現地が雇っているコンサルティング会社と相談して対策を立てる場合もあります。ただ最終的には日本の本社が最終的な権限を持っている場合が多いので、現地の移転価格文書作りがどうなっているのかというのも本社側が管理している場合が多いですね。
移転価格に関してはBig4のような大きい税理士法人は多いというか、規模感というのがあると思うので、大きい会社になれば、なるほどBig4に発注してきますからね。
移転価格にお金を掛けてやろうというのはやはり大企業に多いので、やはりBig4に回ってくるんだと思います。
移転価格に関しては、英語と会計のいずれも必要になってきますか?
会計の知識が無くても出来るということはないですか?
でも同じくらい英語の要求もあります。
私はTOEICでいうと870点くらいのレベルで、出来ないわけじゃないけど900点を取っているわけでもないというレベルなんです。なので、「英語が出来ます」と声を大にして言えるかというとそういうレベルではないです。
読み書き、メールは問題なく出来るんですけども、それは普通にこなして欲しいと思われるレベルで、出来ればテレフォン・カンファレンスに参加して欲しいとか、もっと言うと海外の税務当局に出す移転価格文書が書けたら、それが一番良いという感じですね。
テレカンくらいは何割かの人は出来ると思うんですけども、移転価格文書を英語で書くというのはかなりのレベルになります。
法律用語とか、税務用語とか出て来て、そもそも間違えてはいけないので、そこまでいけば、コンサルタントとしても一流だと思います。
移転価格コンサルという需要に対して適正な人材が足りないと思われますか?
ニッチという程ではないと思いますが、一般的な法人税の人たちのチームからするとボリュームは少ないので、必ずしも税務の知識が無くても入っていけるという部分はあって、それは多少英語が出来るというのと他のビジネスの経験があるので、その部分を活かせると思って貰えるんだと思います。
移転価格は本当にビジネスを知っていないと仕事が回って行かないんですね。
そういった異業種の経験が活かせるというのは税務の分野では珍しいのかなと思います。
中途の方が多かったですか?
移転価格コンサルの市場自体は今後、増えると思いますか?
あとはやっぱりそこでカバーしきれないノウハウだとか凄くスマートなアイデアとかを提案できる会社が引き続きコンサルタントとして雇って貰えると思うので、ベーシックな部分しか出来ないとコンサルにはお金が払えないって事になってくると思います。
なので、市場としては残っていくと思いますが、むやみやたらに広がっていくかというとそういうわけではないかなと思います。
勿論、人によって色々と考え方はあるとは思いますし、移転価格でもちょっと別の話が出てくるかもしれませんしね。
税理士法人内で移転価格をやった後、違う分野に異動される方とか異動希望を出される方もいらっしゃるんですか?
ただあるとしたらですね、国際税務の分野には自然に手が広がって行くので、移転価格のチームではなく、タックスヘイブンだとか過少資本税制だとか租税条約だとかいう国際税務の他の分野を主にやるチームに呼ばれていくとか、海外に行くとかが多いかもしれないですね。
税理士法人というのはどのように分かれているのでしょうか?
結構、土日とか残業が多かったりするんですか?
業界の中でも私がいたところはハードだと言われがちでした。 それと日本企業以上に上司との関係が大事になるかもしれません。
パートナーの直属の部下になっていくんですけども、パートナーが仕事を振ってくるんです。「この仕事を50時間でやれ」と仕事を持ってくるんで、仕事をきっちりやらないと仕事が回ってこなくてやること無いということになってしまいます。
仕事をしっかりやる人には、仕事が回ってきますね。
仕事がハードだと言っても、人によって感じ方が違いますし、毎日2-3時までやっていても楽しそうにやっていたりしますからね。 最初の1-2年は大変だと思うんですけども、そこを乗り越えれば、自分のパワーで動かしていけるので、大丈夫なんだと思います。
最初は全然わからない移転価格の文書を読まないといけませんし、海外の税法も英語で探して、自分で勉強しないといけないですしね。
だから最初は大変だと思います。 ただ勉強してしまえば、その知識って他の人はあまり持っていないので、お金になると思いますし、転職の際にBig4で3年やっていましたって言えば、採用しないところはないんじゃないですかね。
事業会社としては日系・外資問わずでしょうか?
移転価格のコンサルタントとしてのメリットというのは、いろいろな業界、会社を勉強できるんですね。
メーカーであったり、サービス業の会社であったり、本当に色々とあるので、どんどん自分の中で頭が良くなっていくような実感を得やすいんですよ。
それに色々な国の事も知ることが出来て、アメリカは一段落していて、日米の税務当局間でもだいぶルールが出来てきているんですね。取引が多いですし。
なので、日豪とか、日本と東ヨーロッパとかの取引についてはルール作りをしていく余地が結構あるんですね。
そうすると東ヨーロッパの事を知れるし、どんな税制があるのかっていう単純な知識好奇心が広がっていくので、だからこそ、移転価格のコンサルタントは楽しいですね。
日系企業という意味では、転職の際に日本のメーカーの税務課に行こうかと思うとまた狭まっちゃうんですね。
それを良いと考えるかどうかなんですけども、仕事の広がりは無くなるのかなと思います。
今の仕事では、経理・財務の仕事と労務管理などもしているということで、前の仕事と直接の関わりが無かったと思うのですが、何が転職できた要因だと思いますか?
介護の業界というのは会計知識を持っている人が余りおらず基本的には税理士さんに伝票一枚から全部お願いしているというところも多いんですね。
大きい会社だと別だと思いますが、小規模だと有難がって貰えます。 「どうして会計士の方が介護の会社に来たのですか?」と聞かれることも多いのですが、「介護の会社であっても経理はしっかりしていないといけないでしょう」と話をしています。
ただ二人も三人も経理を雇う余裕なんて無いので全部ひとりでやる覚悟がないといけないですし、私もそのつもりで今の会社に入りました。
業界と会社の人員規模に着目して転職先を考えていた感じですか?
それに対して、介護っていうのはやはりカツカツでやっているので、お金はそれほど出せないですよね。
今の仕事はずっと続けていきたいですか?
いまの規模感の中でお金のところを全部回せるというところが魅力なのでしょうか?
30代の時点で広告代理店からBig4に移ったということですが、その時はUSCPAの知識以外はゼロから転職をされたということでしょうか?
英語はどうでしたか?
そこにプラスアルファが欲しいと思って、会計を勉強したんです。
ただ会計の知識は本当にゼロで、営業だったので、売上を立てるとか、経費の精算をするとかはありましたが、仕訳は一切知りませんでした。
転職されたのは実際には何歳の時ですか?
32-3歳で未経験だと気持ち的にも大変だし、見られ方も厳し目かと思うのですが、転職はすぐに決まりましたか?
結局、転職した先ではスタートは遅いほうだから、頑張らないとダメだよっていう事は言われました。
移転価格だと20台後半くらいから始める人が多いので、32歳だとシニアくらいを求められるんですね。
自分は見習いからのスタートで、半年くらい経って、ようやくスタッフとして認められた感じです。年齢というよりも会計の経験が無かった部分が大きかったと思いますね。
その時に事業会社の経理とか、監査法人で監査とかは考えなかったのですか?
事業会社で経理部という事も考えなかったわけではないですけど、経理部だと経験者を求める場合が多いんですよね、32歳くらいになると。
事業会社で2-3年やっていたとか、上場会社の決算の経験がある方とか。
自分にはそうした経験が無くて、そこにはマッチしていなかったわけですね。
移転価格というのは未経験でも採用してもらえるというのがあって、ビジネスの感覚があるというのが大事で、商売を見る感覚というか、お客様の立場に立てるというのが大事なので、そういう意味では広告の仕事をしていましたし、自営でやっていた事もあったので、商売に関しては、共感できる部分が多いかなと思っていました。
周りを見てもそのくらいのスタートの方が結構、いらっしゃいますか?
ただチャンスはどこかにあるので、堪えて待つのが大事ではないでしょうか。
結構、時間を掛けて探したのですか?
ちょうど震災の時だったんですね。なので、求人も減っていた頃でした。
今は非常に求人が出ている状況で、35歳位で未経験だけど、英語力とUSCPAでBig4に行っている人が知っている限りでも結構いますね。それとBig4は無理だけど、まず中堅どころに入って、と言う人もいらっしゃいます。
お客さんからもそういった要求が多いと思うんです。 大きいところだと移転価格の話の隣で、租税条約だ、何だという話になると隣のチームを呼んでこなくてはならないんですが、「あなたが答えてよ」という場面も多いんですね。
だから、私もタックスヘイブンがわかっていなくてはならないとか、過小資本税制についてとかも知らないと別の税理士法人に持って行かれちゃうんですよね。
だから、そういう意味では中堅どころでの仕事だと仕事の幅とか税務の知識が横に広がっていくんじゃないかと思います。
そこでどんどん早めに色々な好きなことを見つけて、スペシャリストになって、もし大きなところに興味があれば、ステップアップするというのもひとつでしょうしね。 なので、Big4だから良いというわけではないと思います。
英語力が大事だという事ですが、具体的にどのくらいのレベルまで持っていれば良いのでしょうか?
面接でも見られるのでしょうか?
ただ得意じゃなくてもやっている人は沢山います。 そういう人は逆に移転価格の方をしっかり勉強していたり、監査法人で監査をやっていたとか、決算書を見るのが本当に的確だったりして、ネイティブみたいに話せなかったり、テレカンとかは苦手だけど、分析力はしっかり持っていたりという風に他で補っているんだと思います。
業務時間外でどのようなところを勉強されていましたか?
あとは日本の法人税の知識がないので、本は時々読んでいましたね。法人税ってなんだろう?というところからでしたが、税理士法人に就職したので、そういった知識は付けようとしていました。
他の人の話だと、余裕がある人は関税とか貿易の本を読んでいましたね。
仕事に関連するところを深く勉強するのでなくて、その周りのことをやっていた感じですね。
日本の財務諸表をしっかり勉強しようと思って、資格を取るというよりも土日に何か勉強したいと思って、やっていましたね。
USCPAの受験の時は、終日、USCPAの事に注力していましたか?
将来就きたい仕事の専門書を読んだりはしませんでしたか?
移転価格で適正価格を決めるという話がありましたが、その中でどのようにUSCPAで学んだ知識が使われるのでしょうか?
どうして財務諸表が読めないといけないかと言いますと適正価格を決めるときに例えば、「100円が適正だ」と言える時って殆ど無いんですね。 「これは100円が適正だ」と言えるためには、周りの状況が全て同じでないとダメで、第3者の取引で、例えば、テープレコーダーを100円で売っている取引を見つけてきて、うちも100円で売っているから、これは市場価格でしょ、と言えないといけないんですね。
でも、状況は全て違うので、「これが100円だ」と言っても、税務当局から「コレが違う、コレが違う、国が違う、使っている素材が違うでしょ」と言われたら答えられなくなっちゃうんです。
そこでどうしているかというと「利益水準が適正だ」という言い方をするんです。
こういったビジネスをやっている他の会社も同じくらいの利益水準をなんだから、うちの価格は適正なんだという言い方をするんです。
その時に財務諸表を読めないと利益率を出せないので、知識がマストで必要になります。しかも英語で、と言う事になりますね。
同業他社の財務諸表を見る機会が多くなるんですか?
それと、自分がいた時は中国が多かったですね。
日本からするとどんどん中国に人もノウハウも流れていって、そうすると日本が空洞化して、日本の税収が下がるんじゃないかと言う事になって、そのノウハウってどこから生まれているのかというと日本でしょうと。
だから、ノウハウに見合うだけの対価を中国の子会社から回収しなさいと言われるんですね。
そして、今度、回収し過ぎると中国の当局が怒ってくるんです。これは中国人が頑張っているんだから、中国に納税しろと言ってくるわけですね。
そこで日本と中国の当局が揉めるんです。
その為に事前に移転価格文書を作成しておきますが、日本と中国の子会社双方が納得するような文書が作れるかどうか、という意味で日本の本社からの期待はありますよね。
現職では経理周り以外のところでUSCPAの知識をどの程度、使っていらっしゃいますか?
知らないでやってしまう事もあると思うので、知っておいて本当によかったです。 上場企業にいけば、より役に立つことも多いかもしれませんけどね。
SOX法とか勉強して、日本の法令遵守の意識を持っているのと持っていないのとでは違うと思いますから。
今の会社では何という部署になるのですか?
ITまでやっているんですか?
今、たくさん業務を抱えていると思うんですが、いずれ業務の標準化をしていこうと考えているのでしょうか?
昔から介護のほうに興味があったのでしょうか?
そんな時に紹介を受けて、転職することになったんです。
前職の同僚で起業している方はいますか?
勉強している時のモチベーションの維持はどうされてましたか?
このくらいの事が出来なければ、この先、何やっても出来ないだろうと思って、成功体験を作ろうとしてやっていました。
難しい試験ではありますけども、ここは最低限、クリアしないと次に行けないなと思っていましたね。
皆さんも頑張って是非合格して下さい。