今や経理は国外の時代! シェアードサービス導入を手がけてる、Big4系コンサルで働くUSCPA!


第57回 USCPA CMレポート

【Guest】 アユさん USCPA 情報システム修士

まずはゲストの自己紹介から。

英語学科で大学を卒業して、新卒でERPソフトベンダーに入社した。

エンジニアの仕事をやりたいと思っていたが、入社してみたらCRMシステムのプリセールスをやることになった。

新製品が出たら米国本社に行ってそのソフトについてマスターしてきて、日本で社内や顧客にソフトの説明をしていた。

徐々にCRMよりも会計よりのシステムに興味を持つようになって、志願して会計系に異動。連結会計システムの仕事を数件担当した。その時にBig4系のコンサルの人達と仕事をすることがあり、彼らの会計知識の深さが素晴らしく、自分もいつかそういう仕事がしたいなぁと思うようになった。

そこで、ベンダーのプリセールスではなくてコンサルティングの仕事がしたいと思い、転職活動を開始。当時Big4系のファームが人気だったが、そういう所には友達も結構行っているのでつまらない というか、もう少しニッチなところに行きたいという気持ちがあった。

そんな中でインド系のコンサルファームと巡り合った。そこはクロスボーダーの案件が殆どで、国籍や場所にとらわれずに色々な国の仕事をする環境だったので、面白そうだと思い入社した。

転職後、今度はコンサルとして働くことになるので会計の知識を深めたいと思いUSCPAの資格取得を目指し、1科目づつ受験して最終的に合格することができた。

インドのファームでは、最初は日本企業(米国上場)のU.S. SOXに関する業務。次に買収されて外資になった企業のSAP導入プロジェクト。次に外資系企業の日本法人の経理などのバックオフィス業務を中国に移管するBPOプロジェクトを経験した。

インドのファームで4年間経った段階で、Big4系コンサルファームに転職した。現在は日本の上場企業のシェアードサービス導入のプロジェクトに入っている。

Q&Aの前に、ちょっと用語説明

【用語説明:シェアードサービス】
国内の各所、また世界各所でバラバラに行なっている業務を『一箇所にまとめてやった方が効率的じゃない?人件費が安いところに集約したら大きなコストダウンになるしネ!』という発想で集約させる事。今や欧米企業の主流。メジャーな集約拠点はインド・東南アジア・東欧・中国。

【用語説明:BPO “Business Process Outsourcing”】
コンセプトはシェアードサービスと同じ。でも『そこまで集約するんだったら、自社で一からシェアードサービス拠点つくらなくても、既に持ってるその道のプロに“アウトソース”しちゃった方が良くない?』という発想で業務をアウトソースする事。BPOセンターの主要拠点も上記と同様の国々。こちらも今や欧米では超主流。

【用語説明:SAS70】
アウトソースを請けている企業が独自に監査を受けて『この会社はこういう内部統制でこういう管理体制でアウトソース業務を行なっていますよ』という内容のSAS70 レポートを監査法人から発行してもらう。→そのアウトソース企業を使っている会社は、自社の監査の時にそのSAS70 レポートを受け取ることで、アウトソース先の内部統制等を監査しなくても済む。というもの。超効率的!

以下、Q&Aです。

  • ゲスト
  • 参加者
  • 司会

最初の職場時代に『コンサルタントって凄いなぁ』と思ったということですが、どんなところに凄さを感じたんですか?

当時は連結決算システムのプロジェクトに入っていたんですが、日本の会計は特殊なので、米国製の自社のソフトではなかなか対応できない部分が多かったんです。このままだとディーバなどの日本ベンダーには勝てないということで、米国本社に日本用の仕様を導入してもらうよう動いていました。そのプロジェクトの時にBig4系のコンサルの人達と仕事をしたんです。コンサルの人達は深い会計の知識やノウハウを持っていたので、入れるべき仕訳の意味がしっかりわかっていて、会計絡みの部分で凄く力になってくれました。その知識やノウハウの多さに凄さを感じました。

ERPベンダーとコンサルファームの違いはどんなところですか?

クライアントの要望に応じてシステムやスキームを提案するという点は同じなのですが、ベンダーはやっぱりパッケージ(自社製品)ありきなんですよ。パッケージを売ってなんぼの世界です。一方コンサルの方はもっと柔軟にクライアントの問題点を解決して行けるので、その点が大きく違うと思います。

今回はBPO特集という事なので、BPOについて聞かせてください。インド系のファームで最後やったというBPO案件の概要を教えてもらえますか?

外資系企業の日本法人のクライアントで、その時点で国内にあった経理とITと人事とコールセンターの業務を中国に移管(アウトソース)するという仕事でした。全体で1年半くらいかかった案件でした。

日本国内にいたそういう仕事のスタッフは何人くらいでしたか?また、中国へのアウトソース後その人達はどうなりましたか?

それらの業務に関連している人は60人くらいでした。最終的にコールセンターの移管は色々あって断念したんですが、他は無事移管することができました。経理に関しては元は20人くらいいましたが、アウトソース後は2人くらいになりました。

かなりのコストカットになるものなんですか?

この案件ではコストを約半分にするという感じでした。外資系企業で日本法人のトップも外人だったので、こういうドラスティックなことができたんだと思います。日本企業だとそうはいかないでしょうねぇ。

外人がトップの企業と日本企業だとそんなに違いますか?

はい。違うと思います。人員削減を含めたコストカットだし、日常業務を変えてもらわないといけないし、移行時期は面倒な仕事も増えるので、社内の反発は結構激しいんです。でも外資系でトップが本社から来ている外人の場合、トップダウンスタイルで強行に実施していきます。自分の日本赴任中にどれだけ利益を出せたかが彼らにとっては重要なので、社内が何と言おうと断行します。日本企業の場合はそんなに強力にトップダウンで何かをしていくことは少ないと思うので、こうは行かないと思います。

アウトソースしていく具体的な流れを教えてもらえますか?

まずは、アウトソースする業務と、本社に残す業務を特定するところから始めます。日頃の業務の流れを調査・分析して、『これは移せる、これは複雑すぎて移せない』などの判断をしていきます。その案件では殆どの経理業務をアウトソースする方向で進みました。

次に中国のアウトソースセンターにいるリーダークラスの人を二人くらい日本に連れてきて、彼らに業務の引継ぎを行います。彼らが業務をしっかり覚えてから中国に帰って、中国のスタッフに業務を教えていくという流れです。

その案件もその流れで進んだんですか?

いや、当初はそうだったんですが、その案件は経理業務で複雑な業務がたくさんあったので、リーダークラスが全部を理解して引き継ぐことが不可能でした。そこで、中国の全スタッフにOJTで教えて業務を引き継いで行くことになり、その後はうまく行くようになりました。

OJTで中国と日本間で引継ぎって、具体的にどうやってやるんですか?

スタッフを2人づつくらい日本に連れてきて、自分が担当する業務をしている日本人スタッフに3ヶ月くらい張り付いて仕事を覚えていくというスタイルです。

中国人への引継ぎっていう事は、ずっと通訳がつきっきりでついているんですか

いえいえ、中国人スタッフは全員“日本語ペラペラ”の人を雇っていますので、引継ぎはオール日本語です。中国の若者は優秀で、日本に来たこともないのに全く違和感がないレベルの日本語を話すし読み書きもできます。中国は30代以上は歳はそうでもないんですが、20歳前後の若者はメチャメチャ優秀ですよ。日本語ができる人で、地頭が良さそうな人を選べば、業務はすぐに覚えてくれます。それでいて月給3万円~4万円です。

最近は中国も人件費が上がってきていると聞きますが、どうでしたか?

確かに上がってはいますが、毎年10%上がってもベースが3万円ですから、金額的にはたいしたUPではないんです。まだまだコスト競争力はあると思いますよ。

どうやって日本語ができる中国人を採用するんですか?

僕も採用活動をやったんですが、日本語ができる人はたくさんいます。大連などに多いんですが、僕の会社のアウトソースセンターは少し田舎の方にあったので、よく電話で大連の人の面接をしました。電話での面接だけで採用を決めてしまうんですが、中国人はフットワークが軽くて、一度も来たこともない場所に電話面接だけで入社を決めて、実際に来てしまうんですよね。まぁ逆に辞める時のフットワークも軽いんですけどね^^

中国のシェアードセンターについて教えてください。どれくらいの規模なんですか?

だいたい400人くらいが働いています。1社のアウトソースだけじゃなくて、欧米の様々な企業のアウトソースを請けています。アウトソース元の企業毎に場所が区切られていて、自分が担当している会社のエリアにしか入れないようになっています。ある欧州企業を担当しているエリアでは、エリア内がまた国毎に分かれていて、『ここは欧州・ここは日本・ここはアメリカ』という感じで各国の業務をまとめてそこでやっている感じでした。

経理業務をそんなに中国に出してしまって、監査的に問題はないんですか?

アウトソースを使っている場合はSAS70というレポートを使えるので監査上の問題はさほどないです。

インド系のファームからBig4系に転職された理由を教えてください。

BPO業務はとても面白かったんですが、中国から帰国してすぐにアサインされた仕事が、ちょっとドメスティックでつまらなかったんです。入社して4年経っていたのでそろそろ別のファームも見てみたいというのもありました。

Big4系の中で今のファームに決めた理由な何ですか?

3社内定をもらったんですが、その中で今のファームが一番クロスボーダー案件が多かったのが決め手でした。入社したら比較的早い段階でグローバル案件で世界に出ていけそうだったので、ここに決めました。

仕事のやり方などで変わった部分はありますか?

はい。今のファームは前よりもよりオーダーメイドのコンサルを行なっています。前のファームではある程度『こういう業務をやります』というパッケージがしっかり決まっていてそれに従ってやる感じでしたが、今のファームはクライアントの状況に応じてオーダーメイドで業務を進めていきます。そこが大きな違いです。

今後についてはどう考えていますか?

コンサルとしてもっと成長していきたいです。今のファームの上司は凄く優秀な人で、近くにロールモデルがいるので、それを目指して頑張りたいと思います。

コンサルとして成長するっていうのは、どういうイメージですか?

仕事を通してどんどん成長していくイメージです。今でも、あるプロジェクトを終えて振り返ってみると、『あぁ 前はこういう事でいなかったけど、今はできるようになったなぁ』とか思うことがたくさんあるんです。これからもそういうのを積み上げて成長していきたいと思います。

以上です。
その他、経理業務のアウトソース関係の細かい流れや難しいところや今後の動向など、色々な話をしてくださいました。ゲストのアユさん、ありがとうございました!

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