転職(会社が合うか合わないか)は運もある。ダメと確信したらスグにやめて良いと思う。


第112回 USCPA CMレポート

実施日: 2014年10月18日(土)

【Guest】 郡家さん USCPA第112回 USCPA CMレポート

ゲスト紹介

高校からアメリカへ留学。帰国後、外資系IT企業にシステムエンジニアとして入社するが、すぐに向いていないことに気付く。ちょうどそのときにアジアパシフィック本部で、ファイナンスが人を募集していることを知り、英語を活かせる仕事だということで、ファイナンスの世界に足を踏み入れる。

ファイナンスには全く興味がなかったが、やってみると楽しくて、数年後にCPAを取得。

30代後半になってから、自分のポテンシャルを試してみようと、外資系コンサル会社に転職。その後、外資系のメーカーに移り、次にファッション雑誌の出版社、それから現職に至る。

最初の会社を辞めたときは平社員だったが、コンサル会社でマネージャに、その2年後、メーカーではコントローラー、その1年後、ファッション雑誌ではファイナンス・ディレクター、現在はCFOと、着実にキャリアアップを行い、最初の転職から4年と9ヶ月で、平社員からCFOまで駆け上る。さまざまな業界での経験を武器に、ファイナンス業務の改善や戦略的会計で会社の業績アップに貢献を行っている。

■郡家さんインタビュー記事 :ダイヤモンド・オンライン

郡家さんに質問

  • 郡家さん
  • 参加者
  • 司会

現在の会社について教えてもらえますか。

今は、エクスペリアンジャパンというところにいます。

日本で言うと帝国データバンクのような会社で信用調査会社です。機能的な本社はイギリスとアメリカ、そしてブラジルにあって、この3国で売上の90%くらいあります。本社は大きな会社でロンドン証券取引所では43番目という会社なのですが、日本では小さいので皆さん、殆ど知らないと思います。

40年間で200以上の会社がM&Aなどでひとつになった会社で、日本だけでも4つの会社が一緒になっています。売上は円にすると4800億円くらいですね。39カ国でビジネスを展開していて、従業員は17,000人ほど、日本では300人位でやっています。

4つのビジネスラインがあって、Credit Servicesって信用調査とデータ解析(Decision Analytics)とMarketing Services、Consumer Servicesです。もともと信用調査なのですが、その信用調査を分析する上でかなり早い段階からコンピュータを使うようになった会社で、それで自分たちのソフトウェアを作って、それがデータ分析のビジネスになっていて、日本でも与信のプログラムと実際の分析の請負とかを銀行だとかクレジットカード会社の仕事をさせてもらっています。

Marketing Servicesというのは色々なデータをマーケティングに使うという話で、ビックデータという言葉が出来る前からそのような事をやっていた会社です。日本ではこれが一番売上の中で大きいです。

それとConsumer Servicesは消費者の信用情報に関してですね。

日本ではメール配信のASPというのがメインのサービスになっていて、日本の売上げの大部分はそのビジネスで、シェアは国内で一番です。例えば楽天とかTSUTAYAとかもうちのシステムを使っていて、おそらく皆さん、ほぼ毎日、うちのシステムを通ったメールを受け取っているんじゃないかと思います。そんな感じのビジネスがメインです。

ただ今はメール配信だけだと伸びないので、マーケティング・オートメーションと言って、Webとかソーシャルなどクロスチャネルというのですが、色々なチャネルから情報を拾い上げて、正しい人に正しいメールが届くような仕組みをどんどん伸ばしています。

今までのキャリアについて教えてもらえますか。

社会人になってからIBMが一番長かったです。13年いました。最初日本IBMに入り、次にアジアパシフィックに出向し、また日本IBMに戻ってきました。そのあとアクセンチュアというコンサルの会社に転職して2年間働いて、次にモトローラというスマートフォンのメーカーに一年ほど勤めました。

そしてコンデナストというファッション雑誌の会社で一年半働き、現在勤めているエクスペリアンに来ました。IBMにいたときはずっとスタッフでしたが、アクセンチュアではマネージャーになりました。ただしここでは部下のいない名前だけのマネージャーでした。それから(モトローラ以後は)ディレクターをやっています。

学生の頃からファイアンスを勉強されていたんですか。

大学はアメリカに行きました。

ちなみに最初の専攻は音楽をやってまして、ジャズギターを勉強してました。しかし二年くらいやった結果、自分に才能はないと気付いて(笑)、たまたまとっていた一般教養の経済学のクラスが面白かったんですが、経済か経営かと考えたときに経済はちょっと違うと思ったので経営を選び、マーケティングを専攻しました。

そのときはマーケティングやマネージメントが楽しかったです。特に当時はマネージメントの勉強はほとんど日本企業の研究でしたね。というのも80年代後半の日本のバブルの真っ最中だったので、あの頃は日本の国際競争力が4年か5年くらい連続で世界一だったんです。ソニーは世界一の会社と言われていました。そういう時代だったので、学校でもケーススタディーの半分ぐらいは日本のことが取り上げられていました。

その時、ファイナンス(Accounting)のクラスをとったのですが、大嫌いでした。全然興味がわかなくて、特にアカウンティングのクラスは本当につまらなくて苦痛だったんですが、必須科目だったのでしかたなしにがんばりました。当時はあとで自分がUSCPAを勉強するなんて夢にも思っていませんでした。周りには学校を卒業したらCPAになりたいと思っているような人が結構いましたが、僕は全くアカウンタントなんかなりたくないと思っていました。

そして、日本に帰ってきてから日本の大学院に行きました。大学院に行きながら、IBMの契約社員を2年間くらいやりました。この2年間は人事のシステム開発のプロジェクトマネージャーの仕事をやっていました。

ところで、実はもともとサラリーマンになりたくないと思っていたんです。というのも、アメリカにいるときに感じたことなのですが、アメリカ人から見た日本人のステレオタイプというのは必ずメガネをかけてスーツをびしっと着て、七三分け、といったものでした。

当時のアメリカ人から見れば、日本人はみんなそういったような同じ格好をして、同じ顔していたんです。そういうステレオタイプにあてはまるのがすごく嫌で、サラリーマンにはなりたくないと思っていました。

でも、アルバイト感覚で契約社員として仕事をやったら、とても楽しかったんです。契約社員なのにも関わらず、2か月に一回くらい海外出張があって、だんだん慣れてくると、自分から海外出張を作るようにまでなったんです。上司のところに行って、「そろそろこの国に行って、これやりたいんですけど」っていう感じで、こういう仕事はあまりないとは思うのですが、たまたまそういう仕事をしたことで、サラリーマンも面白いなと思うようになりました。そして、そのままIBMで働こう、ということで入社しました。

ただ入社後、社内のソフト開発みたいなところでシステムエンジニアとして働いてたのですが、全然面白くなかったんです。そのときはちょうどインドや中国を使おうって言うことで、英語で仕事をする事が多くて、今考えると良い経験だったなと思うのですが、当時はつまらなくて、会社を辞めようかと考え始めてもいた時に、たまたまファイナンス部門が人を募集していたんです。

システムアドミニストレーターとして、データベースの管理やテンプレートづくり、プロセスの管理といったような仕事をする人を探していて、アジアパシフィックのそういった管理をするということで、英語ができて、システムが分かって、ファイナンスに興味がある人というのが条件でした。本当はファイナンスには興味はなかったんですけど、とりあえず英語は出来るし、今の仕事よりはいいだろうと思って、そこに行くことに決めました。これがファイナンスに携わるようになったきっかけです。

その新しい仕事は、ファイナンス半分、システム半分といった感じで、結構面白かったです。全体を見る仕事なので色々な人と話しますし、また数字を見てるのも結構面白くて、会社の全体が分かるんですよね。他の仕事ではなかなか会社全体を見る機会ってないと思うのですが、ファイナンスは立場が高くなくても数字を見られるので、会社全体を見ることが出来るんです。こういうところがファイナンスの面白い所だなと思いますね。

APAC(アジア・パシフィック)の財務管理部のシステム管轄で、プランニング部門の実績のデータを毎日インポートしたり、プランナーが予算を組む時には予算のデータを入れるためのテンプレートを作ったり、マクロでボタンを作って簡単に入力できるようにしたり、そのスケジュールを作ったりといった管理全般を行っていました。

IBMはとても大きな企業で、ファイナンスだけでアジアパシフィックには数百人くらいいました。その管理がすごく大変だったので、4人くらいでこの仕事をしていました。これを4年半続けていたら、次に100%ファイナンスの仕事をしないかと声をかけられました。今度はまたアジアパシフィックの中で、ソフトウェアのプランニングをやりました。おもに、実績を追っかける仕事ですね。新しいレポートを作ったり分析したりして、アジアパシフィック全体だったり細部だったり、クォーターの終わりには一日ごとに売上げをかけたりとか、そういうことをやっていました。

大きな会社なのでとても細分化されていて、ファイナンスの中にもいろいろな部門がありました。ハードウェアやソフトウェアといったようなサービスがあり、さらにその中でもいろいろなサービスに分かれていて、それぞれ担当がいるんです。これは製品やソリューションによる分け方なのですが、それとはまた別にクライアント別で縦割りに見るという担当の人たちもいます。私はこの中で、ソフトウェアの部門を担当していました。

この時点で、アジアパシフィックには6~7年くらいいたんですが、そろそろ長すぎるから帰って来いと(日本IBMに)言われました。当時年齢は32~33歳くらいで、数年間100%ファイナンスの仕事をしてきて、「これは間違いなく楽しい、この仕事をずっと続けていきたい」と思うようになってました。そこでこの時、USCPAの勉強をはじめました。

USCPAの勉強はどのくらいかかりましたか?

この仕事を続けていきたいというモチベーションがあったので、勉強は全然辛くなくて、むしろ結構楽しめました。結局1年9か月くらいでUSCPAに合格をしました。

その頃、日本IBMに戻ってきまして、今度はプライシングという仕事に携わりました。

一般的にはファイナンスといえば経理かFP&Aのどちらかで、プライシングはあまり他の会社にはない部門だと思います。プライシングというのは、案件ごとの財務分析です。IBMはすごく大きな案件がいっぱいあるんですけども、担当した中で一番大きかったのは10年契約の700億円のものでした。そういった契約をするときに、契約の段階で間違えてしまうと、結果が全然変わってしまいます。

そういう案件が積み重なって、結局、会社全体の数字になるわけです。なので、一つ一つの案件ごとにきちんとファイナンスの専門家が入って、それぞれ間違いのないような案件にしていこう、というのがこのプライシング部門の目的で、営業を中心とした提案チームの一員としてプロジェクトに参加します。

フィナンシャルモデルでは、そこにコストがどれだけかかるかとか、海外のリソースを使う場合は為替の変動リスク、インフレなど数値化して、リスクをコストとしてモデル化します。もしもお客さんがそんなにお金がなくて、為替変動リスクをコストとして入れると高くなりすぎる場合には、お客さんに契約書で「もしも為替レートがこうなったらこれだけ多く払う必要がある」というリスクがあることをお客さんの方へ明示しておくんです。そうすれば、こちら側のリスクのコストはいらなくなります。

そうしたことも営業と一緒になって考えて、最終的にキャッシュフローはこんな感じで、IRRはこれだけで、payback monthが何ヶ月とかっていうのが会社で決まっていて、もちろん利益率とかもですね。それがきちんと会社の標準になるように、案件を作ります。という仕事を、4年間くらいやりました。

この仕事が非常に楽しくて、IBMの中では一番現場に近いファイナンスと言われているんですけども、案件チームの一部なので、色々な営業とも話したし、非常に感謝されるんです。案件を一緒に良くしていって、実際に案件が取れれば一緒にお祝いをして、みたいな感じで、この時にコミュニケーション能力が培われましたね。ファイナンスがわからない人にファイナンスの考え方を伝えなければならなかったので、収益の認識のルールとかを専門用語は使わずにちゃんと説明するというのが必要だったので、コミュニケーション能力が付いたと思います。

それとファイナンスとして信用してもらうってことですね。

よくあるのがファイナンスと営業の仲が悪くて、口を利かないって会社もあるらしいんですが、それでは絶対にうまくいくわけがありません。

信頼関係が無いと、営業って色々なことを隠します。隠すだけならばまだ良くて、、嘘をつくこともあります。やばいことがあると、嘘をつくんです。そうなるともうファイナンスってどうしようもないですよね。ただ最後には絶対にバレます。

で、信頼されているとちゃんと言ってくれるんです。この仕事をしていて、一番嬉しい瞬間というのは「郡家さんだから言うんですけど」って言って色々教えてくれる時でした。そうしてもらえるとだいたい何か解決法があるんです。それは基本的に「会計のルールではダメなんだけど、もしかしたらこういう方法があるかしれません。」という風に親身になって考えてあげるんです。

やばい話があった時には一生懸命、一緒に考えてあげると、向こうも信頼してくれるようになり、そこからは何でも話してくれるようになるんです。そういう人間関係作りを4年間で学びました。

その後、転職をされるんですね。

そうですね。3つめの転機が始めての転職ですね。

契約社員を含めれば、IBMに13年間いて、僕がいた時はすごく居心地の良い会社で、上司にも同僚にも恵まれていて、全然不満は無かったんです。すごく評価も良くて、3年続けて、トップの成績で、確実に次はマネージャーかなという時だったんですが、直接、それまでと同じ部門でマネージャーにすることはあまり無くて、他の部門のマネージャーになって、後から戻るということはあるんですが、この仕事が楽しすぎて、他の部門に行きたくなかったんです。

この仕事があまりにも面白くて、他に面白い仕事って無いんじゃないかって思ったのと、評価が高くて自信が出てきたので、自分は今よりもっと活躍できるんじゃないかと思って、始めて転職を考えました。たしかこれは37-8歳の時だったと思います。

ある転職サイトに登録して、「スカウトメールの受取り」というところにチェックを入れたら、その日のうちに20通くらいきたんですよ。それですぐにそれは外したんですけども、その20通を見て行ったら、ひとつだけ会社のすぐ近くにあったんです。なので、すぐ近くだし、その日の夕方に行きまして、そこで一番最初に見せて貰った情報がアクセンチュアでした。そしたら、自分がやっていた仕事にそっくりで、エージェントが「コレは合うんじゃないですかね。」と言われて、すぐに面接が決まって、次の週くらいに面接2回で内定を貰いました。

そして、上司に辞めると伝えたら、引き止められたので、とりあえずは内定を辞退してIBMで続けたんですが、やっぱり行きたいなという思いはありました。半年くらいしたら、またアクセンチュアから連絡が来て、「考えは変わりませんか、やっぱり来てもらえませんか」と言ってもらったんです。それで、そこまで言ってもらえるならば、ということで転職を決めました。

その時に給料も上がったし、マネージャーになりました。

ただ、これも同じプライシングの仕事だったので案件の中でファイナンスのジュニアメンバーがいて、指導したりはしましたが、管理職ではなかったです。

どうして2年しかいなかったのですか?

仕事はまあまあ楽しかったし、アクセンチュアが良かったのは周りにはすごく優秀な人が多くて、それは良い経験になったんですが、前の仕事とやっていることは同じで、IBMだとソフトウェアがあって、ハードウェアがあって、サービスがあって、自分たちのリース会社を持っていて、その中にリースまで入ってくるんですね。色々なスキームがあって、すごく複雑なんです。それに対して、アクセンチュアはコンサルなのでほとんどサービスだけなんです。なので、凄くシンプルで、気づいたら、何も学んでいることが無いと思ったんです。最初の1年間はあまり考えなかったんですが、1年経ってみて、これはまずいなと思ったんです。そして、転職活動を始めました。

1回めの時って百発百中でしたよね。最初に行った会社で内定をもらえたので、転職ってすごく簡単だと思ったんですが、次は全然見つからなくて、色々な会社を受けたんですが、最終的に採用してくれたのがモトローラでした。

もう日本では撤退をしたんですが、もともと携帯を売っていて、Motorola RAZRって結構、人気があったんですね。ただ、日本のガラケーの中では勝てないってことで、一度撤退して、その後、スマホの時代になったので、もう一度、携帯事業に参入したのがこの時だったんです。

これまではずっと管理会計の方だったんですが、ここで始めて経理の方に行き、いきなりコントローラとして入ったんです。今まで経理の実務とかは全くやったことがなかったので、内定をもらった時は耳を疑いましたね(笑)。この時、私ともう一人、最終面接に残っていたのが、外資の携帯会社で既にコントローラをやっていた人だったんですね。だから、どう考えてもそちらのほうが適任じゃないかと思ったんですけども、私が採用されました。

これはおそらくなんですけども、私はIBMでエンジニアとしてインド人と一緒に仕事をしていたので、インド英語の聞き取りには自信がありました。モトローラのファイナンスってインド人が多くて、面接4回やったうち、3人はインド人で、さらに3人のうち2人は電話でのインタビューでした。電話って直接話すよりも聞き取りづらいんですが、私は全然問題なくて、普通に話せたのが、この採用に至った理由かなと思っています。

そして、始めての経理の仕事で、経理ってUSCPAの中で勉強したっていう知識しかなくて、本当にできるかな、と思ったんですが、部下もいたので、ちゃんと回すことが出来て、色々なことを学べました。ただ、だんだん雲行きが怪しくなってきて、Googleに買収をされたんですけども、あまり変わらなくて、私が入る前に、ドコモとはすでに関係が悪くなっていて、入った後にKDDIとも関係が悪くなり。残るはソフトバンクだけでした。私も毎週のように契約の交渉に一緒に行っていたんですが、日本の営業はクライアントととてもいい関係を持っていましたが、本社は契約の条項とかまったく譲らないんです。これはうちのスタンダードだから、これしかないという感じで譲ってくれなくて、ソフトバンク側は「それはフェアじゃないでしょ、こっちがフェアですよね」という感じで、まともな感じで話しをしてきたので、それを本社に持って行くんですけども、全然言うことを聞かないんです。

日本というのは、キャリアーが強くて、キャリアーのいうことを聞かないとビジネスが出来ないんです。だからメーカーというのは言いなりに近いんですが、モトローラはそれをわかってくれなくて、結局、ソフトバンクからもこれで最後かな、というところでヘッドハンターから連絡が来て、それまではそれほど積極的に転職も考えていなかったんですが、コンデナストというファッション雑誌の会社からの誘いでした。ファッション雑誌には全く興味がなくて、最初は断ったんです。でも、ヘッドハンターから、話を聞くだけでもって言われて、話を聞きに行ったら、社長と話が盛り上がって、結局行くことになりました。

これが4社目です。

ただ入社はしたんですが、プライベート企業でファイナンスのやり方が大企業と全然違っていて、オーナーが見たいKPIだけを出していればそれで良くって、今までのスキルを使ったりとかがあまり出来なくて、仕事的にちょっと違うなと。ファイナンス・ディレクターというタイトルがありながらも殆ど経理を見ているだけみたいな感じで、新しい事をしたかったのに、これでは自分のやりたいことが出来ないなと思いました。ただこの時は管理本部ということで、人事も見て、ITも見て、いろんな経験は出来ました。そういう意味ではいい経験をしたんですが、ずっとここにいたのではファイナンスのキャリアとしては良くないかなと思って、今の職場に転職をしました。

今の仕事はすごく楽しくて、本当に理想的な感じで、会社の戦略に直接関わって、会社の方向性を決めていけるポジションなので、すごく楽しいです。

ここまでが私のキャリアになります。

今の話の流れだとあまり行く先を悩まずに行っている感じだったのですが。

あまり考えないですね。とにかくここにいたんじゃ成長しないとか、自分に合っていないと思うととりあえず場所を変えるという感じで、色々なところを見て、ただ自分では選べないので、受かったところから良いところなのかな、という感じで。あまり次は何を、、とは考えていなかったですね。

ちなみに私はCFOになりたいとは全然思っていなくて、システムの仕事も楽しくて、一生コレでも良いかなと思っていました。業界とかもこだわりが無いし、ファッション雑誌とかも興味が無かったですけども楽しかったですしね。違う業界の経験はすごく良いと思っていて、ひとつの業界の常識が非常識だったり、その逆だったりするんですよね。あと色々な会社の経理を見るのも同じように有効で、やり方が違うのを見ていくうちに色々な学びがあったりするんです。

転職の時にどういう経験を話しましたか?

私は今まで50社以上受けていて、アプローチは回数を重ねるうちに変わってきたと思うんですが、最終的には、自分の事を隠さない、弱みみたいなところもできるだけ言うようにしています。「自分はココが出来ます」という場合にはそれを信じてくれるような根拠を含めて、「こういう経験でこうしてきました」と自分をアピールしますが、正直ベースで話すようにしています。うそは必ずばれますから。

経理経験がない中、コントローラをやり、今はCFOをやられていて、財務諸表をレビューしたりすると思うのですが、これは大変だなと感じることは何かありますか?

無いですね。今は部下に優秀なコントローラがいて、経理はほとんど任せています。コントローラだけで判断できない事由など、私が判断することはありますが、基本的に経理的についてはコントローラに任せています。ちなみにそのコントローラはアビタスの卒業生です(笑)。

CFOになるのに経理経験が必要かという質問がありましたが、無くても全然出来ると思います。下に優秀なコントローラがいて、自分も知識としてわかっていて、何かあった時に意思決定が出来るようであれば十分で、実務経験としては無くても大丈夫だと思います。ただし、ヘッドハンターとかに良く「実務経験が無いとなかなかCFOにはなれない」というのは聞きます。

やはりCFOになるには色々と経験が必要で、Accountingもあるし、FP&Aもあって、監査はやったことがなくても、監査を受けたことが経験としてあると良いですし、そういった色々な経験があればあるほど良いと聞きます。例外はあると思いますが、色々なヘッドハンターに聞くとそう言われます。

IBMでAPACに行った時からファイナンスをやられていたということですが、その時はファイナンスの知識が無かったということでしょうか。

そうです。学生の時にAccountingを取っただけで全くなかったです。だから、半分システム半分ファイナンスの仕事をしながら、ファイナンスの事がだんだんわかってきた感じです。

では、実務をやりながら、USCPAを取ろうという気持ちが出てきた感じですか。

はい、私はもともとファイナンスではなかったので、遅れを取り戻したいと思って、USCPAをやりました。でも、やりだしてみたら、とても楽しかったですね。

次に自分を成長させる経験ということで、今でも自分でやっていることがあるので、その話をさせてください。

①新しいことにチャレンジすること

これは死ぬまでやりたいと思っていて、チャレンジしないと成長のチャンスを失ってしまうと考えています。転職も新しいチャレンジですし、とにかく新しいことは常にやりたいと思っています。

②「楽しい」を追求する

楽しくなければパフォーマンスを上げるのは難しいという考え方です。今までの経験の中で一番楽しかった時期はIBMでプライシングをやっていた時で、今考えるとかなり残業もしていましたが、全然辛くなかったし、評価も良くて、絶好調に楽しかったんです。そういう時って無意識にかなりのスピードで成長をしているんです。そういう状態を目指すというか、楽しくなかったら何かを変えないと行けないと思っています。転職をするとか、同じ会社の中で仕事を変えるとか、自分の考え方を変えることもあるかもしれません。ただ楽しくない中で我慢して続けていくというのは本当に良くないし、自分も成長しないと思います。

③勉強することを止めない

USCPAの勉強のときはもちろんですが、そういう集中的な勉強だけでなく、本を読んだり、セミナーに出たり、最近は自分でセミナーをオーガナイズしたりもしてます。そういうのも全て勉強で、とても大切だと思います。

それと次に関係しますが、いろいろな人の話を聞くというのも重要です。

④たくさんの人に会う

特に自分よりも賢い人とか自分よりも成功している人に会うと、いろいろな刺激を受けますし、勉強にもなって、アイデアももらえます。人に会うのは本当に自分の糧みたいになっていて、最近はいろいろな人に会っていますね。新しい人にも会うし、繰り返し会う人もいますし、ただ自分よりも賢い人に出来るだけ積極的に会うようにしています。どこかのセミナーに行って、この人、面白そうだなと思うと今度、飲みに行きましょうって積極的に誘っみたりとか。

⑤仕事の外の活動に積極的に参加する

会社員をやっていると会社の仕事が中心になってしまうと思いますが、仕事に一見関係のないようなところでも仕事に役に立ったりすると考えています。

このコネクション・ミーティングを始めたNOBUさんが始めたMFPという集まりがあって、色々なファイナンスの偉い人を呼んでセミナーを年に3-4回のペースでやっていました。これはすごく楽しかったし、いろいろな人に出会えました。今は外資系リーダーズというコミュニティ・プロジェクトを何名かの仲間とやっていて、これもすごく勉強になってます。

⑥転職活動を行う

これは部下にも言っているんですが、転職活動は、実際に転職する、しないに関わらず、定期的にやったほうが良いと思います。転職活動をすると自分の市場価値がわかるんです。自分がマーケットに求められているのか、いないのかがわかりますし、何が足りないのかがわかるんですね。足りないところがあれば何とかしないといけないわけなので。

これをいうと部下もビックリしますが、常に自分の価値を知るというのは重要です。

経歴を見ているとかなり早い段階でCFOになられているなと感じるのですが、何故、CFOになれたと思いますか?

運でしょうか。転職って全部、運だと思うんですけど。

そこで探しているポジションと自分がマッチしているかなので、たまたまエクスペリアンでCFOを探していて、僕のスキルとか経験とか、あと性格とかがぴったりだったようです。

CFOと言っても皆、同じような人ではないと思うんです。今まで見てきたCFOって両極端で2種類いて、ひとつは物凄く怖い人、もう一つがすごく良い人のどちらかで、中間がいないんです。

だから、こうじゃないとCFOになれないというのは無いと思うんですが、その時に自分がそこにマッチしているかはわからないと思います。求めているCFO像が違うので。

最初はCFOを目指していなかったということですが、結果的にCFOになってしまったのか、それともどこかのタイミングでCFOを目指すようになったのかどちらなのでしょうか。

コントローラをやっているときはまだそれは思っていなかったですね。そして、次にファイナンスディレクターになって、それって殆どCFOと変わらなくて、その時に気がついたら上の方に来てたなと思って、タイトルとしてのCFOではなかったですが、でも気がついたらという感じですね。。

わりと長期を見据えるというよりもその時の環境で考える方ですか?

そうですね。あまり長期には考えない方です。

新しい職場に移られた時に具体的な目標を設定して、そこまで行ったら次を考えようみたいな事はありますか?

全く無いですね。とりあえず、転職をしたら、そこで何が必要なのかを見つけて、やらなければならないことをやって、それが空回りする場合もありますが。今は自分のやりたい事と会社が求めていることがピッタリとマッチしているので、本当に仕事が楽しくて楽しくてしょうがないです。

仕事内容についてもう少しお聞きしたいのですが、CFOというのはルーティン的な業務が多いのか、数ヶ月単位で進めていくプロジェクトがあるのかどちらなのでしょうか。

両方ありますね。ルーティン的なものは毎月のAPACのCEOに対する数字の報告です。

事業別にとか、重要な案件を説明したりとかなので、ビジネスのことをよくわかっていないといけないです。このお客さんとこういう関係になっていて、こういう問題が起こっているとか、この案件は取れそうなんだけど、まだこういうリスクがあるとか、そこまで知っておかないといけないので、数字の裏にあることまで把握しておく必要があります。そのため、営業とはよく話しています。そういったレポーティングを上にプレゼンをするので、これもルーティン的な業務ですね。

それと、プロジェクトとしてやっている事は今は経理業務のシェアードサービスセンター(SSC)への移管です。これは色々な会社でやっていると思うんですが、マレーシアにSSCがあって、もともと日本にコントローラがいて、正社員のAccountingがいて、派遣社員が3名いたんです。そして去年あたりからSSCに日本語が話せるマレーシア人を3名置いて、全部で8名でやっていたんですが、僕が来た時に300人の会社で8人での経理は無いだろうということになり、今は人数を減らしました。

現在日本にはコントローラーと、正社員と、派遣社員の三人がいるのですが、もしかすると派遣社員はいらなくなるかもしれないし、三人のうちの一人を半分FP&Aの方に持ってくるかもしれない…というプロジェクトをやっています。

あと、ルーティンに近いかもしれないんですけど、ファイナンスのFP&Aで一番重要な任務ってなんだと思います?

それはフォーキャスティングの正確さです。

まずは予算を作ります。そして予算を達成するように頑張るんですけれども、ぴったり行くことって絶対ないじゃないですか。ショートするかもしれないし、オーバーするかもしれないし。毎月フォーキャストをやって、「来月はこのくらい行きそう、コストはこれくらいかかりそう」「再来月はこうで、今年の全体の数字はこうなります。」といったことを、できるかぎり正確に練っていきます。

タクシー代がいくらなのかといった細かいところなどは結構わからないと思うのですが、それを出来る限り正確にやっていくのが一番重要なところだと思います。この辺の正確さをインプルーブするっていうのを、いま重点的にやっていますね。

そのために会計のやり方をちょっと変えたり、事業部とかとの連絡の仕方とか情報のもらい方を変えたりといったことも進めています。以前は事業部に「これはいくらになりますか?」と聞いて数字をそのまま貰っていたことが多かったんですけれども、これでは自分たちで何のコントロールもできません。なので、今、営業からもらうのは、うちが計算するために必要な基本情報にするようにやり方を変えてきています。これも結構大きなプロジェクトですね。

あとは事業部の戦略作りに役に立つようなレポートを組むといったようなものです。数字って膨大でいろんな種類があるので、それをどう並べるか、どう見せるかで違ってきます。

つい最近、あるプロジェクトであった話なのですが、ずっとそのプロジェクトは赤字だったんです。それで、部下に「なんでこのプロジェクトはやめないのかな」と聞いてみたところ、「わからないですね」と言うんです。

ちなみに社長はこのプロジェクトを知っていて、毎月そのプロジェクトのレポートも出していたんです。レポートは一つのエクセルファイルなんですが、タブが30くらい細かくあって毎月の数字とかがそれぞれに出てるんですけど、そのプロジェクトだけの全体の数字が分からないんです。パッと見て分かる類のものではないんです。

丁度そのタイミングで、社長が関係者と共にそのプロジェクトのレビューをやると聞いたので、一枚でそのプロジェクトの状況が分かるように、また始まってから今までの状況が一目で見れるように、余計な情報がない資料を作るように部下に指示を出しました。そのミーティングの直前に社長に「これ参考にしてください」と渡したら、すぐにそのプロジェクトは中止になりました。

なので、見せ方やストーリーの作り方、といった点で、ファイナンスの資料は絵本じゃないといけないんです。絵本は書き物の中で一番分かりやすいでしょう?絵があって、ストーリーがあって。ファイナンスの資料も同じで、絵というのは、直感的にわかるような棒グラフであったり、円グラフといったグラフのようなものです。

ストーリーというのは、パワーポイントの1ページ目、2ページ目、3ページ目の順番にはちゃんと関係があるという事で、たとえば、1ページ目でまずこういうことを見せて、何らかの理由があって2ページ目があって、最後に結論があって、ちゃんと目標がある…というようにして、分かってもらいたいことを明確にすることでファイナンスの資料ってすごく分かりやすくなります。

以前の定例会議に使っていた資料はすごく大きなエクセルで、数字を追いかけられるのは作った本人だけです。他の人は全く数字が見えないので、ほとんど何にも見えてないのと同じです。なので、今は全部パワポにして、1ページですべての情報が一目で分かるようにしました。ちょっとした工夫で全然使い道が変わるんです。

話が戻りますが、プロジェクト的な業務というか、ルーティンじゃない部分というのは、自分で気づいてそれをやっていったのですか?

そうですね、基本的に上から何か言われてすることはほとんどないです。それが会社にとって必要なことだと思うので自分でやってきました。やることはいくらでもあります。

さっきフォーキャスティングの正確さってすごく重要だという話がありましたが、なぜそこまで毎月、フォーキャスティングの正確さにこだわる必要があるんだろうって思うのですが。

それは株価のことがあるからです。

結局、株主に対して数字で発表しないといけないので、これからどうなっていくかというのは一番重要なところなんです。だから、フォーキャスティングが外れるというのはやっぱり良くないんですよ。最後のギリギリまで行ける、行けるって言ってて、最終的にやっぱダメでした、となって、株価がすごい落ち方する…なんて最悪ですよね。なので、フォーキャスティングは今、会社としては本当に重要です。

先ほどの人件費のところで、数字の貰い方を変えたという話がありましたが、そう言う時って 、私のいる会社も割と事業部側も強くてバックオフィス側が数字を取りに来るのも「教えてやってもいいよ」くらいのスタンスで関係ができているんですね。

それってもともとそういう会社だったのか、それとも変えられて数字を取りやすい、コミュニケーションがより深くできるような体制に変えたのか、っていうのはどちらだったんですか。

だんだん変えていく方でしたね。数字をもらうのって、お願いしてもらうじゃないですか。それって、やりすぎるとやっぱり向こうも嫌だなって思いますし。ギブアンドテイクで、もっとお願いするときは逆にこっちも何かやってあげるとかね。そんな感じでやるようにしています。

そういった時にどういった事から入っていくんですか。こちらからあげるものとしては。

今まで彼らが作っていたものを代わりにうちでやってあげるとかですかね。向こうのワーク量とかも考えなからやっていく感じです。

CFOになるための資質って何かありますか。

さっきも言いましたが、やっぱりいろんな経験だと思います。

多分一番よくあるのは、最初、経理から始めて、それで経理の色々な経験をしてから、FP&Aとかプランニングをやって…っていうのが多いのかなと思います。僕も経理はほとんどやっていなくて、コントローラを一年ちょっとくらいやっていただけですが、でもやっぱりひとつの事だけをやっていたら多分なれないと思います。ファイナンスの中でもいろいろな事をしなくてはならないと思います。

資質ってよくわからないですね・・・。僕もいろいろなCFO見てきましたけど、みんな違うし。でもたぶんひとつ絶対に外せないのはコミュニケーション能力かもしれません。これはCEOとか、現場とのコミュニケーション、部下もそうですし、どんな仕事をやっていてもコミュニケーションは重要だと思うんですけど、CFOにとってはすごく重要で。

外資系のCFOだと無いのですが、日本のCFOだと投資家とお話ししなくてはいけないので、投資家に間違えた事を伝えたらいけませんし。

マインドセットというのも重要だと思います。CFOとしては何かを押し付けるのではなく、皆をサポートする、皆の為になりたいというマインドが重要だと思いますね。

転職で成功する人と失敗する人の違いは何だと思いますか。

面白い質問ですね。ちなみに、ここ4-5年の間、僕は一つの仕事が1‐2年しか続いていないので、見方によっては失敗したと思うのかもしれないのですが、失敗した転職は一個もないと思っています。

何故かというと、どの仕事も今の自分があるのに必要だったので、全く失敗とは思っていないです。会社によっては半年くらいで転職活動を始めた事もありましたが、その仕事も今の自分にとっては良い経験になったので、必要だったと思っています。嫌な経験、苦しい経験も後になって考えるとそのおかげで自分がいるのかなってなるかもしれないですし、そう考えるとたぶん失敗ではないですよね。なので、考え方次第だと思います。

失敗する転職って、なんなんでしょうね。そのものがちょっとわからないかもしれないです。転職してダメだと思ったら変えればいいんです。でもそれはそれで、そこで何かを学べると思います。なので、失敗し続けるということは絶対ないと思うんです。

でも転職をあまりしすぎるとまずいというのは聞きます。僕も結構聞かれるんですよ。「何で辞めたんですか?」って。僕は正直に答えるんですが、ネガティブなことを言うと「うちに来ても合わない」って思われる事もありますし、あと、ぼくは最初IBMに13年いたので良いのですが、最初の会社で2年、次の会社で3年、次も2年となると、ジョブホッパーって呼ばれて、転職で失敗する例だと思います。どんどん採用してくれるところもなくなると思いますね。

なので、一社くらいは5年以上いたほうがいいと思います。会社合うか合わないかは運もありますよね。だから、ダメと確信したらすぐに辞めればいいと思います。この会社にずっといても伸びないとか偉くなれないとか、楽しくないとか思っているのにずっといると時間は無駄になります。

それに、他の会社があるはずなので、私はダメと思ったらすぐに辞めてきました。それが短期間でCFOになれたことに繋がったかもしれないです。

お話を聞いていると、仕事が楽しいという事をすごく強調されていて、すごく伝わってきたのですが、その為のコツはありますか?

ひとつはポジティブ思考だと思います。僕はもともとすごく楽観主義なのでそれに繋がっていると思います。あとは楽しくないと思うことはやらないという性格なので、楽しくないと思ったらとにかくやめてます。

CFOの仕事の中で、今の会社の状況を「ここおかしいんじゃないの?」って気が付いて変えることが求められているとおっしゃっていましたが、見ていてこれがおかしいというのは、ご自身の過去の経験から培われるものなのですか?それとも外からインプットされるのですか?だとしたら、どういうところからそういう情報を得ていらっしゃるのですか?

過去の経験もあるし、一般常識的なものもあります。色々ですね。

最初のIBMと比べるとエクスぺリアンって会社の規模も違うでしょうし、スタッフの方も全然違うと思うのですが、会社の規模が違うことによって出来る事と出来ない事ってありますか?

それは当然違ってきますね。

そうなった時に、どっちの方が自分は動かしやすいとか、出来る事に影響しますか?

そうですよね。IBMのCFOなんて出来ないと思うし、やりたいとも思わないし、責任が大きすぎます。今はちょうどいい感じです。部下の数はそんなにいないですけど、それでちゃんと間に合うし、部下が100人も200人もいるとそれはそれで大変じゃないですか。今は4~5人なのでちょうどいいですね。

今、始めての転職活動をしていまして、さっきの成功と失敗の話ではないですけど、郡家さんの何回かの転職経験の中で、入ってみて、自分が思っていたのと違うギャップとか、逆にあまり気にならないところとか、そういった事を思われたことはありますか?

ギャップはそもそも絶対あります。

入ってみないとわからないところって必ずあると思うので。転職する前に「この会社どうなのかな」って一生懸命考えても絶対わからないですから。本当に海に飛込むみたいな感じですね。人間関係もどうなるかわからないですし、仕事の内容もそうですしね。とにかくやってみるしかないと思います。

その中で、これだけは譲れないといったものはありますか?

自分が成長できる環境か、あとは、楽しいか、ですね。それが僕にとっては一番ですね。

その時に、今度やりたいと思っている職務やポジションを見て決められているのですか?

アクセンチュアでつまらなかったのは、あまりにも前職と仕事がマッチしすぎていたんです。前にやっていた仕事と同じだったから。だからその次は、今度は違う仕事を、と思いました。

微妙ですよね、普通は今やっていることが次の探している仕事にマッチするから採用してもらえるんであって、全く違うものだったら普通はあまり採ってもらえないでしょうから。

キャリアを見ているとずっと外資に勤めていらっしゃいますが、何か外資にこだわりがあるのですか?

全くないです。それはたまたまですね。

外資から日系企業に行けない理由って二つあって、一つはそもそも日本の企業ってあまり外資出身の人を採ろうとしないんですよ。協調性がない、日本の企業文化になじまないって思われるみたいで。それは確かに本当で、仕事のやり方も人間関係も違うし、なかなか外資系出身の人は日系企業に少なくて。でも今はトップレベルだと違います。たとえばカルビーは元Johnson and Johnsonの松本さんが入って、それと同時に上場して、業績もよくなっています。他にも最近話題になっているLIXILはGEの藤森さんを社長として迎えて、どんどんマネージャーを育成して成功しています。

なので、私も本当は将来的には日本企業に行きたいと思っています。何故かというと、外資系で頑張って、その会社が儲かると最終的に誰が一番喜ぶかというと、外国の株主です。そう考えると、自分は日本のために役に立っているのかって考えるんです。なんだか外資系って国賊なのかって考えたりして(笑)。日本企業はいま、特にどんどんダメになっていますから。本当は日本企業に採って貰って、日本企業を良くしたいという思いは凄くあります。あるんですけど、採ってくれるところが少ないんです。なので、まずは自分をもっと磨いて、それから日本企業に行きたいとは思っています。

外資にいらっしゃる中で、上がコロコロ変わっていて、それがすごくストレスになると聞いたことがあるのですが、やっぱりそれは理不尽だと感じますか?

まあ理不尽ですね(笑)。ただうちの会社はそれが無くて、エクスぺリアンは上がすごくよく考えてくれていて、特別ですね。

では、ヘッドクオーターではない日本の人たちでも意見を言えば、動くこともあるんですね。そうなるとやはり会社次第ってことですね。

そうですね、会社によって違うとは思います。それが一番ひどかったのがモトローラですね。モトローラは下の言うことは何も聞かないで、上が全部決めていました。下の言うことの聞く耳は持ちませんでしたね。

次はご自身で何かやりたいことはあるのですか?

大学で教えることですね。僕はやっぱり人の役に立ちたいんです。日本人はグローバルスキルをつけなきゃいけないと思っていて、最近はいつもそういうことを考えています。先ほど話した外資系リーダーズというグループで実際に青学で寄附講座をする事になっています。

日本人ってすごく勤勉だし、教育レベルも高いし、おかしいと思うんです。こんなに日本がダメになっているのって。なので、英語だけでなくて、グローバルで戦える日本人をたくさん増やしたいです。そうすると、やはり大学で教えるのが一番かと思いますね。

高校からアメリカに行ったのはなぜですか?

完璧に憧れというか。かっこいいという、それだけです。全く先のことは考えていなかったです。

仕事で海外に行くとは思わなかったですか?

これからもあるかもしれないですね。Financeってビジネスの共通言語じゃないですか。USCPAもそうですけど、Financeと英語って、どちらもビジネスの共通言語だと思うんです。この二つがあれば、世界中どこでも仕事ができると思っています。

日系企業から外資系企業に入ってくる人っていうのは年齢やスキルというのはどういうところを見るのですか?

年齢は出来るだけ若いほうが適応能力があるので、良いと考えています。ただ30代後半でも全然フレキシブルな人もいますが。スキルはあまり見なくて、インタビューをするときはポテンシャルを見たいので、地頭がいいか、覚えが良いか、とかですが、正直、話しても良くわからないことも多いです(笑)。

スキルはいくらでも学べるけども、性格って変えられないですよね。なので、いろいろな質問をして、どんな性格なのかを把握するようにしています。

IBMの13年間は凄く楽しかったとおっしゃっていましたが、その13年間とこの7-8年の期間の体感時間というのはどう感じますか?

よく時間って早くなってくるっていうじゃないですか。僕は全然それが無いんですよ。たぶん、マンネリ化して、ルーチン的なことを10年繰り返していたら、そうなっちゃいますよね。

でも、そういう環境にいなくて、会社も仕事も変えているので、短くなっているって風には感じないですね。毎年、毎年ごとに充実している気がします。

今は本当に楽しいですし。

プライベートな時間というのは取れていますか?

そうですね。プライベートな時間は大事にしています。

誰かと会う予定があれば、18時に帰りますし。どうしてもその日に終わらせないといけない事があれば別ですが。週に2-3回は飲みに行って、誰かに会っていますね。

今は外資系リーダーズというのをやっていて、色々な業界の方がサポーターとして賛同してくれて、協力をしてくれています。「和魂洋才」をキーワードとして、日本人の良いところを活かしつつ、グローバルで戦って、日本をもっと良くしていこうという会です。もしよければ、HPも覗いてみてください。

外資系 リーダーズ: http://gaishikei-leaders.com/

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